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マスター:STANZA
シナリオ形態:ショート
難易度:普通
参加人数:7人
サポート:0人
リプレイ完成日時:2016/10/17


みんなの思い出

1
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オープニング


 伝統野菜というものを知っているだろうか。
 全国どこの八百屋やスーパーでも売られている一般的な品種とは違い、特定の地域でしか栽培や流通が行われていない「ご当地ラベル」の野菜達のことだ。
 有名な例で言えば、聖護院大根や加茂茄子などの京野菜が挙げられるだろう。
 その多くは地元で古くから受け継がれてきたものであり、独特の美味さや味の濃さを誇っている。
 中には全国的な流通に乗るものもあるが、大抵は手間がかかるなどの理由で大規模な栽培は行われていない。
 栽培する農家が一軒だけという、その畑が潰れたら種を取ることも出来ず、絶滅待ったなし――という危機的な状況にある品種も少なくなかった。


 ここにも、そんな品種がひとつ。
 六右衛門南瓜(ろくえもんかぼちゃ)という、東北地方のとある農家のみに細々と伝えられて来た伝統の日本南瓜だ。
 一般的には甘みが少なく水っぽいと言われる日本南瓜だが、この六右衛門南瓜はまるで西洋南瓜のように甘くてホクホクした食感が特徴だった。
 しかし頑ななまでに他の土地での栽培を嫌うため、現在ではテニスコート一面程度の面積で細々と作られているのみ。
 この畑で収穫が出来なければ、その時点で六右衛門南瓜は幻の南瓜となってしまう。

 そして今、その危機が実際に訪れていた。

「うちの畑のすぐそばに悪魔だか何だかのゲートだか何だかが出来やがってよ!」
 六右衛門南瓜を守り続けて幾星霜、当代の主である七右衛門(ななえもん)は受話器に噛み付かんばかりの勢いでそう言った。
「六右衛門南瓜はな、うちのひぃひぃひぃひぃ……とにかくご先祖の六右衛門じいさまが作り上げて、以来ずーーーーっと大事に守り続けて来た南瓜なんだ」
 電話の相手は久遠ヶ原学園、斡旋所の職員である。
「危ねえから近寄っちゃなんねえってのはわかる。今年の収穫は諦めもしよう……だがな」
 そこで一息吐いて、七右衛門は再び噛み付くような勢いで話し始めた。
「タネくらい取らせてくれってんだよ、なあ! タネが取れなきゃもう六右衛門南瓜は根絶やしだ、俺の代で絶やしたとあっちゃご先祖様にも子孫にも顔向け出来ねえだろが!」
 南瓜はそのまま畑に放置しても、次の年には種から勝手に芽が出てくる。
 しかしこのまま管理が出来なければ、いつかは雑草などに浸食されてしまうだろう。

 そんなわけで。

 畑に行って南瓜の種を取ってきて欲しいというのが今回の依頼――
「ちょっと待ったぁ!」
 はい?
「お前ら戦いはプロかもしれねえが、南瓜に関しちゃシロートだろ? 良い種の取れる南瓜なんて見分けつかねーだろ?」
 まあ、言われてみればそうかもしれない、けれど。
「だから俺が一緒に行ってやるよ! どうだ! これで安心だろう!」
 いいえ、不安材料が増えました。

 依頼内容、アップデート。

 農家のおじさん、七右衛門さんと一緒に畑に行って、彼が無事に種を取り終えるまで危険から守ってください。
 上手くいけば収穫した南瓜で作った料理を振る舞ってもらえます。
 南瓜をまるごと、お土産にもらえるかもしれません。
 なお周辺にはイノシシ型のディアボロが多数出現する模様です。
 ディアボロが南瓜を食べることはありませんが、畑を踏み荒らされて南瓜を粉々に粉砕される危険があります。

 では、いってらっしゃい、気を付けて。



プレイング

凛刃の戦巫女・礼野 智美(ja3600)
高等部3年1組 女 
ご当地野菜?白オクラとかはなっこりーとかかきちしゃとか?
南瓜だからある程度は判る気もするんだが…見た事ない種類だし過信は禁物
「極端な例になるが、蒟蒻芋や干瓢の良し悪しわかるか? そんなもんだろ?

現場に着いたら阻霊符使用
地面に潜られて畑に出てこられたら…

配置は畑外縁部
ゲート方面の配置をやや多め(2〜3人)に
他方面から複数来た場合は互いに声掛け応援要請
【雷打蹴】で注目集め
範囲内に複数敵いれば【時雨】
応援要請時は【縮地】使用
避けたら畑に突撃される為防御は受け一辺倒で
使用回数尽きたスキルは【烈風突】>【薙ぎ払い】>【スタンエッジ】>【痛打】の順に切替スタン効果を狙う
種取とある程度の収穫が出来たら撤収

撤退後皆に余裕があればゲート攻略
スキルは攻撃力高くするものに切替
料理って話もあるけど、避難所暮らしの依頼人さんの所に押し掛けるのはご迷惑だろうし、ゲート攻略して避難してる人の不安取り除きたい

思い繋ぎし翠光の焔・星杜 焔(ja5378)
大学部2年1組 男 
アドリブ○

超レア南瓜の危機と聞いて
未来を守るために協力は惜しまないよ!

敵の気配を察知したら華宵さんにタウント付与
囮になり猪を畑と別方面に集めてもらう
華宵さんと猪の間に畑がある場合行わず

俺は護衛対象の方に光翼が届く範囲で行動盾になる
直接盾になれない状況の場合光翼使用
予め無事な南瓜の見分け方を習い
そういった南瓜の危機も光翼使用

やむを得ず畑内で猪と対峙する際は小天使の翼使い畑を自分の足で荒らさないよう心がける

怪我は可能な限り無駄の出ないように炎の蝶で回復
敵から受けるダメージ量と
次ターン己を射程範囲に収めている可能性のある敵の数で判断

猪が警戒組だけで戦力足りてる場合
護衛対象の作業手伝い早期撤収目指す
熟しすぎのやつは天然酵母にしてみるのはどうだろう〜
貴重なおいしい南瓜味わえるの楽しみ…
調理もお手伝いしたいです

警戒組に加勢必要な場合
光翼射程内に護衛対象おさめた上で猪と自分の間に畑を置かずに狙撃
必要射程に応じて武器選択
ホモォ?知らない子ですね幻じゃないですかね
畑に猪侵入時虹色魔弾で新たに荒れる場所発生しない方面へ押し出す
又は畑に突進してくる猪に対して畑破壊未然に防ぐ為使用
敵のヘイト稼いだ場合前述の位置取りで戦う
突進してくる敵には散弾銃で移動妨害

己の攻撃が畑に当たらぬよう注意

任務完了後余裕あればゲート攻略
炎蝶使いきりでライトヒール
消耗した技から高位対抗技攻撃技にコスト内入替
前衛で皆の盾となり戦う


鉄壁の守護者達・黒井 明斗(jb0525)
高等部1年4組 男 
目的:畑に寸土も触れさせずに殲滅(ついでにゲートも破壊)

配置:周囲を警戒する仲間と畑の中間、第一陣を抜けた敵に対処する遊撃

行動:警戒として畑の周囲を巡回しながら[生命探知]を使用
 ディアボロが向かってくれば、他の虫等と移動速度が違うため、速度差で見分けられる可能性が高い
 移動速度の高い個体を探知したら、警戒担当の仲間に声を掛け不意打ちを避ける

 警戒第一陣仲間が戦闘を開始したら、これを援護しながら、他方向からの襲撃にも備える
 
 他方向から、もしくは防衛線を抜けた相手には正面から立ち向かい押し止める
 この時の攻撃方法は、[審判の鎖]で動きを止め、一気に仕留める
 [審判の鎖]を使いきった場合は、[アウルの鎧]で自身を防壁としてディアボロの侵攻を食い止める

 仲間への援護は、回復支援がメイン
 3割以上のダメージを負った仲間に回復スキルを使用
 攻撃支援は春雷のルーンで対応

 行動優先順:侵攻阻止>支援回復>支援攻撃>その他

 ディアボロの殲滅が終了しても、種の回収が終わっていなかったら、これを手伝う

 ディアボロ退治と種の回収が完了したら、一旦、仲間の傷を治療
 その後、ゲート破壊に向かう

 ゲートの破壊まで完了した時点で任務完了と考える

 アドリブOK
 

月に群雲、花に風、されど・ファーフナー(jb7826)
大学部3年7組 男 
伝統野菜か……
そのようなものがあるのだな
先祖代々受け継いできた、手塩にかけて育てた子のようなものなのだろうか?


俺は畑の外で、ディアボロが侵入しないよう警戒を行う
ゲート側から現れるのだろうか?
足音がするだろうから、それで来襲に備えることにしよう
畑の危機をすく察することができるよう畑が見える位置で
かつ、戦闘による被害が及ばないように、適度に距離を取る

ディアボロが1体の時はスキルは用いず
進行を阻むよう位置取り
機動力を削ぐよう足元を槍で払う
敵意を引き付け、そのまま戦闘に持ち込む

ディアボロが複数体で現れた時は、範囲攻撃スキルを用いる
周囲に味方がいる場合は識別可能な氷の夜想曲を
味方を巻き込まない場合はオンスロートを用いる
まずは攻撃を仕掛けて注意を引き付け、畑に向かうのを阻止する

範囲スキルが切れたら、ディアボロ来襲の切れ間に他の範囲攻撃スキルと適宜換装する

種の収穫が終わるまでは畑の近くでディアボロ退治を行う
収穫後は依頼人を安全な場所まで送り届け
その後、ゲートを偵察
可能ならゲート破壊を試みる
司命の光は低命中だが火力のあるスキルなのでゲートコア破壊に向いている
範囲攻撃スキルでコア周囲のディアボロを排除した後、コアを破壊する

守護なる藤の火影・不知火藤忠(jc2194)
大学部1年252組 男 
六右衛門南瓜か。初めて聞いたな
南瓜好きとしてはぜひ食べてみたいものだ
そして南瓜畑を荒らすディアボロは許さない
絶対根絶やしにしてやる

目的
七右衛門と畑の死守
ディアボロの殲滅
可能ならゲート破壊

行動
見事な南瓜に感嘆
食べたらどんなに美味いだろうかと敵に更に怒りを燃やす
畑周辺の警護役
ゲート方面の守りを厚くする作戦だが、俺は周辺の野良警戒で別の方角を守ろう

・自分のいる方向に敵
抜刀や霊符で威嚇、敵を引き寄せ複数集まった所に呪縛陣
自分は回避を試みる。万が一当たっても南瓜の為ならこれ位気にならない
まだ動く奴がいるなら石縛風で石化
闘刃武舞で斬り刻む
「南瓜を潰す奴に慈悲は無い

自分の方向に敵の心配がないなら味方の援護も
なるべく元位置から動かず射程ギリギリから攻撃
数が多い場合石縛風で動ける奴を減らす
遠いなら霊符で蟲毒
その後は抜刀・霊符使用
「牡丹鍋も良いな
ディアボロはお断りだがな

※石縛風と蟲毒の回数は1ずつ残しておく

七右衛門の種取りが終わったら呪縛陣→治癒膏にして負傷者回復
闘刃武舞→四神結界に
「根本的な解決が必要だ。ゲートを破壊したい
仲間とゲート破壊に向かう
「この戦いが終わったら一番美味い南瓜料理を頼む
酒も欲しい所だな

ゲート
南瓜の恨みだと猛攻
基本薙刀・抜刀攻撃
コアを守る敵と遭遇したらすぐ四神結界
石縛風→蟲毒でBS狙い
コア破壊を仲間に頼み無言の怒りを敵にぶつける

終了後
土産の南瓜に顔を綻ばせる
料理に舌鼓、酒が進む!

末期高齢者・華宵(jc2265)
大学部1年252組 男 
動物も植物も命を繋げていく事は大切よね
その命の連なりから外れたディアボロは可哀想だけれど、ここで消えてもらうわ
次に生まれて来る時は、未来ある命となりますように…


最初は周辺警戒を担当
皆が畑とゲート間の布陣を厚めにしているようだから、私は他方面からの不意打ちを警戒
勿論ゲート方向にも注意はしつつ

「いい畑ねぇ、七右衛門君。ディアボロは私達に任せて頂戴ね(微笑」
中年のおじさんに君はおかしい?
私鎌倉時代生まれだもの、ずっとおじいちゃんよ(ふふ


猪の姿が見えたら、急いで焔君にタウントを付与して貰い、飛んで猪の前へ
「畑も良いけど、私とも遊んでくれないかしら?(にっこり」
注目を引きながら畑とは別方向へ誘導
リングや辻風で攻撃を

敵攻撃は基本的には回避だけど、畑が危険そうな時は薙刀に換装し力技で受止め阻むわ
「…流石に重い突進ね。でも通すわけにはいかないのよ」
薙刀を振り抜き弾き飛ばし、くるり回して上段に構え
「…おいで」
猪の突進は薙刀の打突と相性良いかもね

皆と協力しながら任務遂行を


七右衛門君が種取終了したら、ゲートも潰しに行きましょうか
元を絶たなければ根本的な解決にならないし、住民も戻れないものね
持てる力を尽くして頑張るわ


南瓜はシンプルに煮物が好きよ
あと豚汁というか、そういう具沢山のお汁の実にも美味しいわよね
お料理は得意ではないので任せて、善そう手伝いでも
「ふふ、甘くて美味しい」
愛情たっぷりの味ね


絡み/アドリブ歓迎

V兵器探究者・天城 絵梨(jc2448)
高等部3年91組 女 

【心情】
  南瓜に強い愛情を持つ七右衛門を尊敬しつつも場所に拘り種族を保存する努力を
  怠っている事に憤りも感じている。
 「作る場所にこだわるより、その種を残す事にこだわるべきだと思うけど……」

【目的】
 依頼を解決する為、依頼人の護衛と種の収穫を目的として参加する。
 PC自身はそのカボチャの種を譲って貰う為に参加している。

【準備】
 敵の接近に備えて可能であれば収穫を手伝う。収穫用にリュックサック等を準備しておく
 作戦があれば事前に打ち合わせ、それに協力・単独行動などで応える。

【行動】
 戦闘では依頼人を畑の近くで護衛する。
 装備・スキルなどを駆使し、敵の接近に注意して依頼人を守る。
  接近された場合、攻撃よりも回避を優先して行う
 「七右衛門さん、こっち!」
 戦闘終了後にはゲートの破壊を試み、畑を出来る範囲で手入れする





リプレイ本文

「六右衛門南瓜か。初めて聞くが、南瓜好きとしてはぜひ食べてみたいものだ」
 不知火藤忠(jc2194)は畑に転がる小さな南瓜を見て、早くもじわりと湧き出して来た唾を飲み込む。
 こんなに美味そうな南瓜を絶滅の危機に追い込もうとしているディアボロ、許すまじ。

「白オクラ、はなっこりー、かきちしゃ…」
 ご当地野菜は色々あれど、そんな品種は聞いた事がないと、礼野 智美(ja3600)は足下の南瓜をしげしげと眺めてみる。
「南瓜だからある程度は判る気もするんだが…極端な例になるが、蒟蒻芋や干瓢の良し悪しわかるか? そんなもんだろ?」
 とは言え過信は禁物、それに依頼人の希望を出来る限り叶える事も撃退士の仕事だ。

「伝統野菜か…」
 ファーフナー(jb7826)にとってはその名称さえ初耳だった。
「先祖代々受け継いできた、手塩にかけて育てた子のようなものなのだろうか?」
「おう、わかってんじゃねぇか」
 それを聞いて、七右衛門が親しげに肩を叩いた。
「あんた顔は怖いが良い奴だな!」
「…うむ」
 顔の事は余計だが。

「いい畑ねぇ、七右衛門君」
「おっ、あんたも畑の善し悪しがわかr…って、おい!」
「あら、中年のおじさんに君はおかしい? 私鎌倉時代生まれだもの、ずっとおじいちゃんよ」
 ふふっと笑った華宵(jc2265)は、見た目と言動のギャップにおののく七右衛門の背を押した。
「さあ、早いとこ収穫を終わらせてしまいましょ? ディアボロは私達に任せて頂戴ね」
「だったら私も手伝っていいかな?」
 天城 絵梨(jc2448)が玄人好みであるらしい七右衛門に好印象を持って貰えるように、アウルの力で暗示をかけてみた。
「収穫用の背負い籠も用意して来たし!」
 その効果か、それとも付け加えた「万が一、猪が畑に入って来たら一人じゃ危ないでしょ?」という台詞が効いたのか。
 絵梨は無事、畑に入る事を許された。
 それにもう一人。
「超レア南瓜の危機と聞いては黙っていられないよね〜」
 未来を守るために協力は惜しまないと、星杜 焔(ja5378)は七右衛門に問いかけてみる。
「良い南瓜の見分け方を教えて貰えれば、それを重点的に守るのですが〜」
 素人には無理だと言うが焔は料理人、食材に関してはプロと言っても良いだろう。
 だが、残念ながらそんな時間は残されていない様だ。

「近付いて来ます、臨戦態勢に入って下さい」
 時間差で生命探知を使った黒井 明斗(jb0525)が注意を促す。
 周囲の藪などに遮られて目視は出来ないが、範囲内には明らかに目的をもって近付いて来る反応がいくつか捉えられていた。
「どっちの方角が多い?」
「向こうです」
 智美の問いに、明斗がゲート側を指さす。
 智美はファーフナーと共にそちらへ向かい、明斗と藤忠は側面へ。
 反対側を見張っていた華宵は焔にタウントをかけて貰い、囮となって敵の頭上を飛び越える。
「動物も植物も命を繋げていく事は大切よね」
 しかしディアボロはその命の連なりから外れた存在、可哀想だがここで消えて貰おう。
「畑も良いけど、私とも遊んでくれないかしら?」
 一頭の尻に向けて太刀状のオーラを放ち、自分に顔を向けさせる。
「ほら、こっちよ?」
 釣られて周囲の猪達もくるりと後ろを向いた。
「…おいで」
 薙刀を手に煽ると、猪の集団は赤い布きれを見せられた闘牛の様に向かって来る。
「あらあら、まさに猪突猛進ね」
 一頭をいなし、次の一頭は薙刀を振り抜いて弾き飛ばし、くるりと回して上段の構えから次の一頭に面を打つ。
 相手の勢いを利用する事で、余り力を入れなくても大きなダメージを与える事が出来た。
「薙刀の打突とは相性が良いみたいよ?」
「なるほど、参考にさせて貰おう」
 同じ薙刀使いである藤忠は別方面からの攻撃を警戒しつつ、その加勢に入る。
 華宵が弾き飛ばした猪を待ち構え、ぎりぎりまで引き寄せて正面から突くと、刃はまるで豆腐でも切る様にその頭を切り裂いた。
 確かにこれは楽だ、相手が一頭ずつ向かって来るならば。
 しかしタウントの効果で引き寄せられた猪は、群れと言っても良い数だった。
「人気者は辛いわね、でも今なら一網打尽よ?」
「ああ、一気に片付けるとしよう」
 合図で華宵と体を入れ替え、藤忠は呪縛陣を発動、猪達の足を止める。
 範囲外に逃れたものは八卦石縛風で石化させ、それを纏めて闘刃武舞で切り刻んだ。
「南瓜を潰す奴に慈悲は無い」
 食べ物の恨みは怖ろしいのだ。
 特に南瓜の恨みは。

 智美は畑の中に怪しい生命反応がない事を確認して、阻霊符を使った。
「地面に潜られて畑に出てこられたら厄介だからな」
 不意打ちを防いだ後は華宵ひとりでは捌ききれない分を自分に引き寄せようと、一頭の猪に華麗なキックを決める。
 それに惹かれて集まって来た所を軍刀で二体同時に斬り付け、逃れたものの突進を身体で受け止めた。
「避けたら畑に被害出るからな」
 単純な突進くらい盾がなくても弾き返してみせる。
 その合間に切れたスキルを次々に入れ替えて、智美は湧いて来る猪を次々に屠っていった。

「数が多いとは聞いていたが、これほどとはな」
 残る猪を一手に引き受けたファーフナーは、周囲の空気を凍てつかせて猪達を眠りに誘う。
 眠らせたものは放置して次の標的へ。
 味方が範囲を出たところを見計らって、縦横無尽に飛び交う無数の影の刃で切り刻む。
 取りこぼしは突進を正面で待ち構え、魔槍の切っ先でその足下を薙ぎ払った。
 上手くすれば前足切断、外れても転がす事は出来る。
 起き上がって来るならトドメを刺し、そうでなければ後回しにして、とにかく動けるものの数を減らしていった。

「畑には寸土たりとも触れさせません」
 明斗は仲間の隙を突いて抜けようとするものを潰していった。
 正面に回り込んで聖なる鎖で縛り付け、足を封じたところで白銀の槍を突き刺す。
 それが切れればアウルの鎧で自らを強化し、自身を防壁として突進を受け止め、弾き返したところで槍を一閃。
 その間にも仲間の様子に気を配っていたが、どうやらすぐにも治療が必要な傷を負った者はいない様だ。

 焔はいつでも七右衛門をガード出来る距離を保ちつつ、畑の外で警戒に当たる。
 仲間の壁を抜けて来る根性のある猪はいなかったが、たまに流れ者がふらりと現れる事もあるから油断は禁物。
「でも今の所は大丈夫そうだね〜、今のうちに収穫を急ごうか〜」
 自分が見張っているからと、七右衛門と絵梨の二人に作業を促す。
「わかった、敵が来たら教えてね、私も護衛に回るから!」
 そう答えた絵梨は、七右衛門の動きを暫し観察して判断の基準を学び…学ぼうと、思ったのだけれど。
「七右衛門さん、もしかして腐ってるの以外は全部収穫してるんじゃ…?」
 本人が収穫に出向く意味はあったのだろうか。
 いや、南瓜に強い愛情を持つ彼にとって、収穫とはきっと子供の独り立ちを祝う様なものなのだろう。
 だとすれば他人任せに出来ない気持ちもわかる気がした。
 でもそれなら尚更、場所に拘って種族を保存する努力を怠っている事に憤りを感じる。
「作る場所にこだわるより、その種を残す事にこだわるべきだと思うけど…」
 土を選ぶとは聞いたけれど、この土地の成分を分析するとか、肥料や水を変えてみるとか、そういった研究はしていないのだろうか。
「タネを譲って貰えたら、久遠ヶ原で栽培してみようかな」
 そんな事を考えながら、せっせと収穫すること暫し。
「来たよ!」
 先程までとは打って変わった焔の厳しい声に、絵梨は手を止めた。
 周囲に散っていた野良ディアボロが騒ぎを感じて集まって来たのだろう。
 別々の方角から五頭ほどが近付いて来る。
 焔は位置取りに注意しながら猪の前に回り込み、突進を始めた一頭の足下に散弾銃をバラ撒く。
 それで一旦は怯んだが、邪魔をされた猪の怒りが彼に向けられるのは当然の流れ。
 前にも増して猛スピードで突っ込んで来る猪に向けて、焔は虹色に輝く光の砲弾を撃ち放った。
「何度向かって来ても、ここから先は通さないよ」
 押し返されて転がる猪、だがひとりで対処出来る数には限界がある。
「そんな時の為のチームプレイです」
「そういう事だな」
 駆け込んできた明斗が宝石の欠片を投げ付け、藤忠が遠い間合いから蛇を絡み付かせた。
 宝石から飛び出した雷の槍が一頭を貫き、もう一頭は曲刀の露と消える。
「ふっ、牡丹鍋も良いな」
 ディアボロは食えないし、食えたとしてもお断りだが。
 もう一頭は縮地で飛び込んだ智美が弾き飛ばし、最後の一頭は華宵が気合いで受け止める。
「…流石に重い突進ね。でも通すわけにはいかないのよ」
 押し戻し、転がして薙刀の刃先を腹に沈めた。
 これで全部か――いや、まだ一頭。
「新手のやつか来たよ、七右衛門さん、こっち!」
 絵梨は一心不乱に作業を進める七右衛門の手を取って、既に収穫が終わった区画へ走る。
 ここなら多少は踏み荒らされても大丈夫と、熱いビートに乗ってShall we dance?
「お…おぉっ!?」
 社交ダンスの要領で華麗に回避、するつもりだったが…おじさんにはちょっと激しすぎただろうか。
 避けきれない。走った為に焔の庇護からも外れてしまった。
 しかし、直後に焔のアハト・アハトが叫ぶ。

 ホモクレェ!

 白い何かに弾き飛ばされる猪。
「…いえ、知らない子ですね幻じゃないですかね」
 さようならシリアス、こんにちはコメディ。
 だって仕方ないじゃない、友に貰った大切な銃だけど、そういう仕様になってるんだから。


 猪はまだ散発的に現れていたが、収穫を終えれば畑に留まる必要はない。
 後は依頼人を安全な場所に送り届ければ任務完了――の、筈なのだが。
「乗りかかった船ですから」
 仲間の怪我を治療しながら、明斗が言った。
 いずれも打ち身や掠り傷程度だが、これから敵の本拠地に乗り込むならば万全の備えが必要だろう。
 そう、彼等はゲートを潰しに行くつもりなのだ。
「俺はそこまで頼んじゃいねえぞ、そんな金もねえし…」
「安心しろ、破壊料は請求しない」
 困り顔になった七右衛門にファーフナーが答える。
「元を絶たなければ根本的な解決にならないし、皆も戻れないものね」
 そう言ったのは華宵だ。
「この南瓜が頑ななまでに他の土地での栽培を嫌うなら、少しでも早く栽培再開出来るようにしたいし」
 智美は故郷の農地を思い浮かべる。
 そこでも被害額は相当なものだと聞くし、ディアボロであろうとなかろうと猪は農家の敵だ。
「これは俺達が勝手にやる事だ、あんたは気にしなくていい」
 南瓜の恨み晴らさでおくべきかと、藤忠が頷く。
 加えて、ファーフナーが言えずに呑み込んだ事をさらっと言ってのけた。
「この戦いが終わったら一番美味い南瓜料理を頼む」
 ついでに酒も欲しい所だ。
「よしわかった!」
 七右衛門がパンと手を叩く。
「その心意気は嫌いじゃねえ、とびっきりの南瓜料理を用意しといてやるぜ!」
「いや、それは…」
 避難所暮らしの所に押しかけるのは迷惑だろうと智美が難色を示すが、そんな暮らしだからこそ、だ。
「他の連中も皆呼べば良いだろ、なあ?」
「それは大がかりなイベントになりそうですね〜」
 ゲート攻略が終わったら調理を手伝おうと焔が申し出る。
 それからと、畑から持って来た熟れすぎた南瓜を差し出した。
「こういうやつは天然酵母にしてみるのはどうだろう〜」
 そんな使い方は知らなかった?
 じゃあ試してみると良いよ!
「私はお料理は出来ないけど、南瓜はシンプルに煮物が好きよ」
 華宵はメニュー考案の手伝いと称して、さりげなくリクエスト。
「あと豚汁というか、そういう具沢山のお汁の実にも美味しいわよね」
「それこそ牡丹鍋か」
 藤忠が笑うが、怪我の功名と言うべきか、本物の猪はディアボロのせいで(お陰で?)めっきり数を減らしている様だ。
「それなら当分は安心して畑仕事が出来そうだね」
 絵梨が言う様に、後はゲートさえ潰してしまえば、周辺農地の未来は明るいだろう。


 まずはファーフナーが軽く偵察し、現状の勢力で不安がない事を改めて確認する。
 ゲートはかなり小さく、何か目的があって作られたものではなさそうだ。
 練習用か、それとも遊び半分の気紛れか。
「迷惑な話だ」
 藤忠は拳をぐっと握り締める。
「絶対根絶やしにしてやる」
 南瓜の恨み、思い知るがいい。

 トーチを掲げてシールドを構えた焔を先頭に奥へと進む。
「ディアボロは残ってないみたいだね〜」
「ええ、コアを守る事は全く考慮されていない様です」
 周囲の様子を探りながら明斗が頷いた。
 ここのディアボロは多くが外に出て周囲を荒らし回り、残りも先程の一件で全て外に出てしまったのだろう。
「放っておいたらディアボロが生まれ続けて、また被害が出るところだったわね」
 華宵が呟く。
 本来なら生まれる命は歓迎されて然るべきなのだけれど。
「次に生まれて来る時は、未来ある命となりますように…」
 あっという間に辿り着いたコアに向き直り、そっと手を合わせる――ここで誕生を待っているであろう命と、既に終わってしまった命に向かって。
「そう考えると、あいつらも被害者…か」
 藤忠の中で燃えさかっていた怒りの炎が揺らいだ。
 それは彼等を生み出した顔も知らない相手への怒りとなって更に激しく燃え上がる。
「いつか必ず作り主を探し出して、南瓜の恨みは晴らす」
 今はここを壊すだけで良しとしよう。
 ファーフナーがコアに向かって立ち、光の魔法陣を描く。
 その中心に魔槍を差し入れると眩い光が一直線に迸り、コアをガラスの様に打ち砕いた。
「これでもう安心だね」
「ああ、暫くはディアボロが湧くだろうが、この規模ならすぐに収まるだろう」
 にっこりと笑う絵梨に、智美が返す。
 これで任務は完了、後は――


 避難所は南瓜の甘い匂いと、人々の楽しそうな笑い声に溢れていた。
「ふふ、甘くて美味しい…愛情たっぷりの味ね」
 華宵はシンプルな煮付けにほっこりと顔を綻ばせる。
「そうだな、作物への愛情と料理への愛情と…美味い、とにかく美味い」
 藤忠は天麩羅に素焼き、サラダに汁物など次々に手を出しながら「美味い」しか言えないマンになっていた。
「ああ、酒が進む!」
 ファーフナーは無表情に見えるが、料理には興味津々。
 南瓜料理は欧米にもあるが、和の文化に触れるとこうなるのかと、出されたもの全てをしみじみと味わう。
 土産も貰ったし、味を覚えて再現してみようか…出来るかどうかは別にして。
 智美はそれを今度の野菜パーティに持って行くつもりらしい。
「形が特徴的だからスライスしてグリルで焼くだけでもお菓子代わりになりそうだし」
「私は料理より栽培かな」
 タネの取り方と保存法を教わった絵梨は、帰ったらすぐに挑戦してみるつもりだった。

 料理を充分に堪能したら、帰る前に少し畑を片付けて行こうか。
 来年の為、その先にある未来の為に。


依頼結果/参加キャラクター

依頼成功度:大成功面白かった!:5人
MVP一覧
 −
重体一覧
 −

凛刃の戦巫女・
礼野 智美(ja3600)

高等部3年1組 女 阿修羅
思い繋ぎし翠光の焔・
星杜 焔(ja5378)

大学部2年1組 男 ディバインナイト
鉄壁の守護者達・
黒井 明斗(jb0525)

高等部1年4組 男 アストラルヴァンガード
月に群雲、花に風、されど・
ファーフナー(jb7826)

大学部3年7組 男 アカシックレコーダー:タイプA
守護なる藤の火影・
不知火藤忠(jc2194)

大学部1年252組 男 陰陽師
末期高齢者・
華宵(jc2265)

大学部1年252組 男 鬼道忍軍
V兵器探究者・
天城 絵梨(jc2448)

高等部3年91組 女 アーティスト


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相談卓
星杜 焔(ja5378)|大学部2年1組|男|ディ
最終発言日時:2016年10月08日 06:57
挨拶表明テーブル
宝井正博(jz0036)|教師0組|男|一般
最終発言日時:2016年10月03日 23:04


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