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【社会】

長引く一時保護 1600人超 14年度7都県 本紙調査

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 緊急的に子どもを保護する児童相談所の付属機関「一時保護所」に、法定期間の2カ月を超えて入所していた子どもは2014年度、首都圏の1都6県で計1672人いたことが本紙の調査で分かった。1年半近くも入所していた子どももいた。虐待などで保護される子は増えているのに、養護施設などの受け皿整備が追いついていないことなどが背景にある。保護所にいる間、学校に通えないなどの制約もあり、抜本的な改善が求められる。(木原育子)

 児童相談所は都道府県と政令市、希望する中核市が設置することができる。本紙は九月、相談所がある首都圏の一都六県と六市にアンケートを実施した。

 東京、埼玉、千葉、栃木の一都三県と五市で、保護日数が二カ月を超えた子どもの割合が全体の二割を超えていた。相模原市が42・7%で最大で、38・6%の千葉県が続いた。

 一一〜一四年度の最大保護日数を尋ねたところ、一年以上入所していた子どもがいたのは八県市。埼玉県と横浜、相模原、横須賀の三市は、五百日超の子どもがいた。最長は横浜市の五百七十二日だった。

 入所が長期化する原因として、虐待があって保護したにもかかわらず、保護者が「手元に置きたい」と、児童養護施設への入所を拒むなどの複雑な事例が増えているほか、児童養護施設がいっぱいで、行き先が定まらないまま留め置かれる事例も多い。

 一時保護所は外出も制限され、長期化による入所者の精神的負担は大きい。これまで、国や自治体の統計では、平均入所日数は公開されてきたが、最大入所日数は非公開だった。一四年度、首都圏で平均日数が最長なのは横須賀市(五十九日)で、いずれの自治体も法定期間を超えていない。一時保護所には一日で退所する子どももいるため、平均日数からは浮かんでこない、最悪の事例が見過ごされてきた側面がある。

 東京都児童相談所の元職員で明星大福祉実践学科の藤井常文教授は「外部評価を取り入れるなど、一時保護所に『他者の目』を入れて、施設のあり方を抜本的に見直していくべきだ。現場の職員も疲弊しており、社会的養護の一翼を担う施設とは言い難い現状だ」と指摘している。

 

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