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【悪用厳禁】:「カリスマ性」を演出してブログビジネスを成功させる方法

メンタル ブログ

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人が何らかの情報を受け取り、説得されるに至るルートは2つある。「中心ルート」「周辺ルート」*1。中心ルートとは、思慮深く論理的に考え、その情報の正否を慎重に吟味する思考の道筋である。周辺ルートは、その情報についてあまり注目せず、ほとんど無批判に受け取る思考の道筋である。

この二つのどちらをどれほどの割合で使うかは個人差があり、また場合によっても異なる。しかし、あなたが誰かを説得し、商品を買わせたいと思うのならば、「周辺ルート」で考える人に的を絞るほうが効率が良い。言ってしまえば、無思慮で、人に動かされやすい人である。そうした人々は「カリスマ」すなわち権威ある人に従順な傾向がある。

少なからぬ人が、自分のカリスマ性を利用して、あるいはカリスマ性を演出してビジネスを行っている。彼らはいかにして人にモノを売るのだろうか。今回はカリスマ性を使ったビジネスの手法について書いていく。

人がどれほどカリスマに弱いか

人間は、例え同じ内容の情報でも、専門性が高い(と判断できる)送り手からの情報を信用することが、米国のミズーリ大学で行われた実験によって明らかになっている*2

実験では学生を対象に「合格しなければ卒業できなくなる重要な試験を、大学は導入するべきである」という主張を見せた。この情報の発信者は2者用意され、半分の学生には専門性の低い発信者・地方の高校を、もう半分の学生には専門性の高い発信者・高等教育に関する専門委員会であると伝えた。そして、この意見に賛同するか否かを学生に問うた。

結果として、専門性の高い発信者からの情報に賛同する学生が多くなった。同じ内容であるにもかかわらず、誰が主張するかによって、説得される可能性が左右されるのである。これは、「周辺ルート」を使って判断する人間が少なからず存在することを表している。この特性があるがゆえに、人間は権威ある人の言葉を信じがちなのである。

カリスマになる方法

高い専門性によって発生する権威・カリスマ性を利用したビジネスモデルの代表例が「自己啓発書」である。経営コンサルタントや心理学者、脳科学者などは、メンタル分野を扱う専門家である。そうした権威に対して我々は、「この人は自分が知らない何かを知っているはずだ」と期待する。そして権威者がその期待に応えて自らの知識を披露すると、人間はその情報について吟味するより前に受け入れてしまう。

メンタリスト・Daigo氏は、脳科学者・茂木健一郎氏との対談(メンタリズムを脳科学で解剖したら カリスマリーダーの作り方がわかった!)の中で、茂木氏に「宗教的カリスマを作るにはどうすればよいと思うか?」と質問されて、こう答えている。

「まず奇跡を見せる。そうして感情が出やすくなった所に、自分の望む教義を教え込んでいく」

自分ができる「奇跡」を見せよう

Daigo氏にとっての「奇跡」とは、スプーン曲げや表情分析などのパフォーマンスであろう。実際、Daigo氏がメンタリズムで稼いでいこうと思ったときに、まず利用したのが、スプーン曲げで人の注意を惹き付けることであった。最初から自分の持っている心理学の小難しい知識を披露しても、あまり注目されなかったであろう。その点をDaigo氏はよく理解していたのである。

もし自分が何かの商品を売ったり、誰かを説得したいと思ったら、まず自分なりの「奇跡」を見せなければならない。それは例えば専門的な知識を披露することでもいいし、特技を見せることでもいい。ブログの高収入を報告してもいいし、高層マンションからの夜景を見せてもいい。「他の人にはできないことが自分にはできる」と主張すれば、注目を集めることができるのだ。

カリスマを維持する方法

奇跡を見せて注目を集めたら、自分のカリスマ性を維持しなければならない。その為には、特殊な教義を作らなければならない。では、どうすればその教義を作ることができるのか。具体的に述べていく。

独自の社会的真実を作れ

カルト教団の教祖は、独自の世界観を持っていることが多い。例えば、人民寺院の教祖・ジム・ジョーンズは、核戦争の脅威が常に存在し、世界は人種差別主義者で溢れているという教義を展開し、世界は邪悪な場所であると信者たちに刷りこんだのである。そして、救われるには自分の教義を信じなければならないと繰り返した。

ジム・ジョーンズ - Wikipedia

この方法は宗教だけでなくビジネスにも応用できる。例えば、「企業で働く労働者は資本家に搾取される存在だ」「金のために働かされ続けるラットレースを続けて惨めじゃないのか」などと言えば、稼ぐ方法を謳った情報商材を売りこめるかもしれない。説得術を有効に使えば、商品の購入率を上げることが可能なのである。

信じることそれ自体に幸福を感じさせろ

カルトの教祖は信者にこう言う。「もし選ばれたければ、選ばれた人のように行動しなければならない。あなたが選ばれないのは、あなたが罪深く、未熟だからだ。教義をよく理解しなさい」と。

「選ばれた人のように行動する」。この教義の自己啓発版がロンダ・バーンによるザ・シークレットだ。この自己啓発書の主張は、手に入らないものに対して「欲しい」と思うのではなく、「既に手に入っていると考え、喜びを感じ、そのように行動せよ」というものだ。実際にこの考え方は幸福感を増大させる。それは、あたかも自分が成功者(選ばれた者)であるかのような感覚を獲得できるからである。この感覚を与えることができれば、信者からの支持は約束されるだろう。

自分を支持することによって得られる恩恵だけではなく、支持していることそれ自体からも幸福感を獲得させることが、カリスマの条件だ。

 

「われわれ」が何者なのか教えろ

キリスト教では「洗礼」を受けることによって、キリスト教の世界の人間であるというアイデンティティを獲得させる。カリスマ指導者は、信者にアイデンティティを与えなければならない。

再びカルト教団の例を挙げるが、ハルマゲドン教会の信者は全員ラストネームを「イスラエル」にする。統一教会の信者は自分の衣服を持たず、信者たちで衣服を交換し合う。名前や衣服は、人のアイデンティティを強力に規定する。自分たちがどこに属するのか、それによって判断するのである。

ほとんどの社会人が着ているスーツも同じ効果がある。職種によっては専用のスーツがあるかもしれない。それらも、統一教会などと同様に、個人のアイデンティティを定める働きをする。

少しずつ要求を大きくしろ

ジム・ジョーンズによる人民寺院の信者たちは、最終的には集団自殺という悲劇的な結果になったが、これはジョーンズの巧みな「交渉術」の賜物であった。その交渉術とは、最初はわずかな要求をし、次第に大きな要求をし、時には罪悪感を利用しながら、後戻りさせにくくするという手法だった。心理学で「フット・イン・ザ・ドア・テクニック」と呼ばれる。

ジョーンズは話術の巧みな説教師だった。それに感動してわずかな額を寄付すると、ジョーンズは次の機会には、それよりも大きな額を要求したのだった。それを繰り返し、エスカレートした結果、信者に常軌を逸した性行動をさせたり、家を売却させて収益を献上させるようになり、最終的に集団自殺という結果になったのだ。

まとめ

  • 無思慮な人をターゲットにする
  • 奇跡を見せる
  • 独自の世界観を語る
  • 信じることそれ自体に幸福を感じさせる
  • アイデンティティを与える
  • 少しずつ要求を大きくする

 これらが、カリスマ性を使ったビジネスの手法である。カルト教団の方法を主に例にして説明したが、ビジネスの世界でも少なからず導入されている手法である。この視点から世の中を眺めてみると、意外と多くの人がこうした方法に則ったビジネスをしていることがわかるだろう。ブログの世界も例外ではない。いわゆるカリスマと呼ばれる人たちの中にも、実はこのことを理解して戦略を展開している人物がいないとも限らないのである。

※参考文献

*1:Packerd,V.(1957).The hidden persuaders. New York: MacKey

*2:E・アロンソン『プロパガンダ』。