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第七話 漆黒の翼を持つ少女①
どうも、最近何故か悪夢しか見ないkaiです!
「…そんな明るくいうことなの?幽香よ」
今回は特別ゲストとして幽香さんに来ていただいております!幽香さん、本日はよろしくお願いします!
「ええ、よろしくね。…今回は、くらぴーことクラウンピースとやらとユウの戦闘、及び星熊を送って行く場面ね」
くらぴーとの戦闘も、割と長めですかね。大体2100文字を想定してはいますが。そして、結果は見え見えですが。
「哀れね、クラウンピース。…そういえば、クラウンピースって、どんな子なの?ユウは知ってるみたいだったけど」
…そういえば幽香さんは知りませんでしたね。まあ、彼女については紫さんも知らないので、無理はありませんが。えーとですね、彼女は『地獄の妖精』と呼ばれる、一応分類上は妖精ですね!
「…分類上は?どういうこと?」
強すぎるんです。妖精としてはあまりに規格外なほどに。
「…それって、あの⑨よりも?」
はい。はっきり言って比べものになりません。クラウンピースの本気は、一般的な鬼の本気だと思ってください。プラスアルファで色んなものを狂わせる松明持ってますので、実質鬼を超えてますね。ちょっと妖精の中で一番になったと思って粋がってた⑨ではお話になりませぬ。しかも一人称『あたい』。キャラ食われ待ったなしですね!
「…割と辛辣ね、貴方。それにしても、並の鬼以上、ねぇ。……興味湧いたわ」
やめてあげてくださいね?いくら並の鬼を超えていると言っても貴女よりは劣りますからね。
「はいはい。…それでは、皆様どうぞごゆっくり」
*筆者は別にチルノ嫌いではありません。話の種にしただけですので、悪しからず!
「うりゃりゃりゃりゃー!この緩急つけた全方位一斉掃射、避けれるものなら避けてみなさい!」
「…へぇ。やるね」
ユウが一言呟いた瞬間、大小形色様々の弾幕がユウに向けて殺到する。実際、ユウとしてもあれを完全に避け切るのは『今の状態』では面倒なのでやりたくないのだ。だからこそ、彼は『避け』ではなく『受け』の体制に入る。ーー こちらの方が負担が少ないと判断して。
そして、生半可な妖怪では死にかねないほどの威力を持って打ち出されたそれは。
「ふっふっふ、いくら貴方でもこれは流石に効いたでしょ……え?」
「…残念だったなくらぴー。緩急の付け方も、弾幕ばら撒く位置もかなり良かった。大妖怪クラスでも、これを避け切るのは難しいだろうな」
ーー しかし、ユウにほんの少しのダメージすら与えることは叶わなかった。
「…お前と戦ったことがないから大体の予想で行ってたんだが、正直予想外の強さだった。ここまで綺麗に絡め手を使えるとは、お見事だ、くらぴー。
ーー 惜しむらくは、火力だよ」
そう言って、ユウは攻撃に移る。今回は勇儀と違い、相手が遠距離戦を仕掛てくる。そう分かっていたからこそ、ユウは一度慎重に相手の出方を見ていた。
いつもなら、普通に攻撃を開始していただろう。そして、ものの数十秒でユウはクラウンピースに対して勝ちを収めていただろう。事実、それだけの戦力差が両者には存在していた。
だが、今回ばかりはいつもと勝手が違う。
ーー 彼の右手は、折れていた。それも、かなりの複雑骨折であった。一部筋肉の損傷もあり、最早戦闘どころか日常的な使用すら考えもつかないほどのダメージを彼の右手は負っていた。傷ついた神経は久しぶりに感じる鋭く強い痛みを脳に伝え、自然と額には脂汗が滲む。
原因は、最後の勇儀との全力の力比べ。あの時、彼は確かにあの星熊童子を下した。…だが、相手は怪力乱神を司る、古き大鬼。真っ当な力比べでは、如何に能力によるガードがあるとはいっても、ノーダメージで切り抜けることは出来なかった。ユウの一撃が勇儀を吹き飛ばすと同時に、彼の腕も勇儀の『三歩必殺』によって砕かれていたのだ。
…正直に言えば、本気でガードに回れば、あの一撃を無効化することも出来た。ユウの本気でのガードは、例え鬼子母神であろうとも決して破ることのできない絶対的な鉄壁性を持つ。それをもってすれば、『三歩必殺』を防ぎ切ることは容易い。だが、ユウはそれをしなかった。あくまでも、挑まれたのは力比べ。ならば、例え不利と分かっていても、それに相応しいやり方で臨む。その結果、腕が砕かれたとしても、だ。
…だが、それ『だけ』で引き下がるほどユウは肉体的にも精神的にも弱くはない。何か踊り狂っているのかというほどの激痛にも、常人なら泣き叫ぶほどの痛みにも顔色一つ変えることはない。いつも通りの感情の読めない表情を浮かべ、泰然としてクラウンピースを見据える。
「…さて、くらぴー。悪いが、この後星熊を送って行ってやらねばならなくてね。10分しか相手してやれなくて悪いが、今日はここで打ち止めだ。
…ただ終わるのも、あれだな。一方的に勝負を打ち切るわけだし」
「…随分余裕ですね。まるで、『今からお前を一撃で潰す』とでも言いたげじゃあないですか。…あたいがそこまで弱く見えますか?」
「いいや。さっき言ったろう、予想以上だ、と。…ところで、くらぴー。これは、どうでもいい話なんだが。
一点に集められた、半径50mの範囲内を破壊するエネルギーがあるとしよう。もし、そのエネルギーが何らかの力によって押さえつけられていたとしたら。
その束縛から解き放たれた時、そのエネルギーはどうなると思う?」
「…いきなり何を言い出すんで……まさか!?」
「…ああ、そのまさかだ。…気づいてたか?俺がずっと『頭上でエネルギー圧縮を行っていた』と。…俺だけに集中しすぎたな。脅威は自分の見えている場所にだけあるわけじゃないんだ、寧ろ見えない場所にこそ多く存在する。覚えときな、くらぴー」
あいつの視線が上に行かないように振る舞うのは、このコンディションもあって厳しいものがあった。ともすれば上に逃げてしまいそうな体を何とか制御して、バレないように相手より上に行かないことを意識しての立ち回りをしていた。苦労のかいもあってか、その成果は上々。
「…さてと。お喋りはここまでにしようか。
…ここでは技に名前をつけるんだっけな?なら、俺もそれに倣おうかな。
ーー 衝撃『クラッシュウェイブ』」
掛け声と共にその戒めを抜け出した膨大なエネルギーは、自由を得たことに狂喜乱舞するが如き圧倒的な勢いを持って全方位へと広がる。その様子は、あたかも突然檻より解き放たれた猛獣が、喰らう獲物を求めて走り行くかのよう。そのエネルギー量に目を剥いたクラウンピースは、一拍遅れて咄嗟に防御姿勢を取るが ーー 無意味。
ユウを中心として放たれた衝撃波は、紫が慌てて強化した結界を打ち据え ーー 破壊する。幸いにもその時点で殆どエネルギーを使い果たしていたらしい衝撃波は、近くにいたものたちの髪を揺らす程度に留まったが、逆に言えば、殆どのエネルギーが結界内で暴れまわったということ。勿論、結界内にいたクラウンピースが無傷である道理はない。
クラウンピースは、しかしながら、無事であった。衝撃で気絶して目を回してはいるものの、身体的な外傷は無いに等しかった。大してダメージも負っていないので、この分だと直に目を覚ますだろう。
ユウは、クラウンピースへ攻撃を行う直前、自身とクラウンピースとの間に見えないほどに薄い、だが密度は最大クラスの防壁を張った。これにより、衝撃波は緩和され、結果としてクラウンピースのダメージは実質ゼロとなったわけだ。
「…あー、疲れた」
「…とんでもない破壊力ね。私の全力の結界が保たないなんて…」
「…結構圧縮したからな。その辺の上級妖怪なら即死レベルだ。幽香の本気にも匹敵するあの一撃を、寧ろよくあそこまで持ったな」
「そんな簡単に破られちゃ面目丸潰れよ。…さて、ユウ。クラウンピースはこっちで見とくから、勇儀を家まで送ってあげて頂戴。…宴会も中途半端で途切れちゃったし、また今度やり直しましょ!その時はもっとメンバー集めとくわね!ユウの知り合いも、もしかしたらいっぱいいるかもしれないわね!」
「…そうだな。行ってくるよ。星熊の世話も必要だし、帰りは大分遅くなる」
取り敢えずハンバーグ作って傷の手当てして、あとは容体が落ち着くまで待機かな。お風呂は伊吹に任せるとして、あとは特にしなければいけないことはないだろう。
「………くっ。なんかこっちの方が夫婦らしいじゃない」
「まだ言うかお前」
変わらぬはよきなりかな。故人はこう言ったが、変わらなさすぎるのもどうかと思う、ある夏の夜であった。
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あの後、星熊と伊吹を連れて宴会場を出てきた。星熊は俺が背負っている。その際、紫がどうやら俺の怪我に気づいていたらしく、星熊のついでに藍と一緒に手当てしてくれた。おかげで既に殆ど治っている。あのレベルの怪我を短時間で治すとは、治癒系の術の才能もあるらしいな。また今度、いろいろ教えてみよう。タイプは違えど、あの二人は同じ天才と言われるレベルにいる。きっと、何かしらに役立ててくれるはずだ。
…あ、そういや、紫からなんかもらってたな。これを道中、軽くでいいから読んどいてーとか言ってた。
…なになに?『幻想郷の新しいルール、スペルカードルールについて』?
「…なんだ、あいつ新しいルール作ったのか」
「あ、それもしかして、スペルカードってやつかい?」
「お、伊吹。知ってんのか?」
「ああ。…なんでも、人間と妖怪が平等な土俵で戦うためのルールなんだとか。全員、10枚のスペルカードを用意して、決戦時には許容被弾数と使用可能スペルカード数を決めてから戦う。許容被弾数を超えるか、スペルカードを使い切ってまだなお相手が戦闘可能なら負け。
あと、これは多分一番デカイ変化かな。…致死量以上のダメージを受けた際、強制的に勝負が終了されるらしい。これが、死人が絶対出ない理由だよ」
…ほう。中々考えたじゃあないか、紫。これでまた、あいつの夢に一歩近づいた、というところか。案外、あいつの最終目標の『人と妖怪の完全な共存』が見られるのも、遠い日のことではないのかも知れないな。
あいつの幼い頃から一緒に居て、あいつの夢に対する情熱は嫌という程見せられてきた。人と仲良くしろと、当時まだまだ未熟な身で人狼族の長に直談判しに行って死にかけたような奴だ。あの時俺が間に合っていなかったら、果たしてどうなっていたことやら。
「…近々この事について幻想郷全土に呼びかけるらしい。博麗の巫女も一枚噛んでるって聞いた。…それより、ユウ。…もう歩けるから、さ。下ろしてくれないかい?」
「ふーん。まーたあいつは、何か変なこと考えてんのかね?ま、人様に迷惑かけないなら、好きなようにやればいいけど。…家に着くまでは背負ってるよ。いくら紫と藍の治療を受けたとはいえ、まだまだ立てる体じゃあないだろう。第一な、お前はもっと自分の体を大切にしろ。鬼とは言っても、お前は女だろうが。傷をつけるなとは言わんが、せめて少しくらい自分の体の状況と向き合ってみたらどうだ?…とにかく、だ。あまり心配をかけないでくれ。俺に心的ストレス与えてくんのは紫で充分だ」
「………」
「…おい、星熊?聞いてるのか?」
「ひゃいっ!?…あ、ああ。聞いてたよ!…分かった、暫く無茶は控えるよ…」
「(なんで顔真っ赤なんだこいつ?)」
「(罪作りだねぇ、本当に。あの勇儀が完全に堕ちてるじゃないか。永らく浮いた話なんて無かったやつなのに)」
…背中にしおらしくなった怪力乱神の鬼を、傍らに意地悪く笑う酔いどれ幼女を伴い、鬼2人に人1人という変則的パーティはゆるりと星熊の家を目指す。星熊の話で、家は地底とやらにあるとのこと。途中、ある場所を通る必要があり、通るには普通天狗の許可がいるらしいが、今は自分たち鬼がいるので大丈夫らしい。何が大丈夫なのかは分からないが、伊吹も頷いてたし、まあいけるだろう。
ーー それにしても、さっきから誰かにつけられてる?変な視線を感じる。確証はないが、もし本当につけられているなら、面倒だな。俺は星熊背負ってて下手に動けないので、最悪伊吹に何とかしてもらうか。こんな酔いどれでも鬼の四天王。戦力的には充分すぎるからな。
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ーー 高度2500m、と外の世界でいう高度。
本来、この高度にもなると、鳥も満足には飛ばない。酸素濃度が足りないのだ。
ここから見る星は、遮るものが少ないせいかよく見える。況や満月など、地上で見るものとは大違いだ。
太陽の光を受けて静やかに、しかし確かな存在感をもって輝く月は、本来ここにいるはずのない生物を。ーー ある少女を照らす。
短めの黒い髪。白き月明かりを背後に映えるのは、紅い瞳。中世の山伏が身につけていたような、奇っ怪な形の帽子を被り、外で言う黒いスカートを身につけ、背中より顔を覗かせるのは、一対の漆黒の翼。その姿は、まるで鴉を彷彿とさせるかのよう。
少女の紅き瞳が映すは、眼下を歩く、3人。1人は背負われているようだ。その隣を歩く人物を見て、背負われている人物を見て、最後に、それを背負っている人物を見て ーー。
口元にあるかなきかの微笑を浮かべ、少女は呟く。
「…あやややや。
こんなところで巡り会えるとは、『お師匠様』」
そう言って、少女は一つ、翼を打ち鳴らし ーー 。
ーー まるで最初からいなかったかのように、忽然と姿を消した。
「…いや、早すぎでしょ」
そうですか?私としては推しキャラの1人ですので、このくらいはしたいですかねー。あ、これを読んでくれてる方なら、最後に出てきた人が誰かは分かりますよね?そう、お馴染みのあの方です。
…さて、それでは、次回をお楽しみに!
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