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第四話 宴会は唐突に①
注意!
フランについて、独自設定あり!
あと、私事で申し訳ありませんが、東方表裏録についてはもう少しお待ちを。
「…どうしてこうなった」
「おいおい、辛気臭いねぇ!折角のあんたの歓迎会なんだ、あんたが飲まなくてどうするってんだ!さ、注いでやるから飲みな飲みな!」
「やめろ星熊コラ。初っ端からこんな度数高い酒飲んでたら早々に潰れるわ」
「…ふっふっふ、ユウは私達よりケンカは強くても、こっち方面ではやっぱり私達の勝ちだね!さあ、今日は酔い潰れるまで飲ませるよ!…いや、酔い潰れても飲ませる!」
「笑顔で怖いことを言うな、伊吹。お前ら鬼が言うと冗談じゃないから困る。…あと、伊吹よ。飲みづらい、くっつくな。星熊、お前もだ。しなだれかかって来るな」
「久しぶりに会ったんだ、これくらいいいじゃないか。ちょっとした触れ合い、というやつさ。…それに、それを言うならまずはその頭の上のお子様吸血鬼を下ろしたらどうだい?」
「むっ!誰がお子様よ!兄様の頭の上は私のものよ!貴女達なんかに譲りはしないわ」
「いやまず俺の頭は俺のものだろう、レミィ。お前も下りなさい、頭が重い。…あとついでに。酒取りたいからどいてくれないかい、フラン?」
「……zzz……」
「…寝てるなぁ。これはどうしたものか…」
…周りには運の悪いことに、知り合いはいない。酒を持ってきてくれと頼めそうなやつもいない。参ったなぁ。もう空になるんだけど、この酒。
「それなら、この酒を飲めばいいさ。ホラ、グイッといっちゃいなよ!」
「だから、酔い潰れるまで飲む気は無いと言っているだろう。第一、そこまでキツイ酒は余り好みじゃない」
「あら、ならワインでもいかが?紅魔館が誇る最高クラスのやつ、持ってきたわよ!飲んだ後に軽い甘みが残る、私オススメの逸品ね」
「…ふむ。それを貰おうかな」
レミィオススメのワインともなれば、恐らく本当に美味しい。こいつの味を見極めるスキルが大変高いことは、過去の付き合いから知っている。これは、期待できるな。
「了解したわ。……咲夜ーー!あのワインを2本持ってきてちょうだーい!」
「あ、お子様吸血鬼ー、私達も飲みたいから2本追加で」
「だから、誰がお子様よ!5年もすればあんたなんか抜かすわよ?バインバインなんだから!と、とにかくあんた達なんかにあげないわよ!もったいないんだから!」
「「よっ!カリスマ吸血鬼!!」」
「咲夜ーー!2本追加で持ってきてー!」
「「え」」
ここであえて言わせて貰おう。それでいいのかお前。おだててた鬼二人もあまりのチョロさに呆れてるぞ。
「…お待たせいたしました。ご所望のワイン、お持ちいたしましたわ」
「ありがとう、咲夜。…もう下がって結構よ」
「かしこまりました」
「…さて、飲みましょうか。あ、くれぐれもそこの鬼二人は騒いで寝てるフランを起こさないでよ?この子、寝起きすっごく悪いから下手したら殺されるわよ」
「…そんなに悪いのかい?今、可愛い顔して寝てるけど」
「この顔がだんだん無表情に近づいて行って、一旦無表情をキープするの。そして、唐突に瞳に殺意の色が浮かんで、そこからはジェノサイドよ。一回私も間違えて起こしちゃって、グチャグチャになった体の再生にほぼ丸一日使ったことあるわよ」
「「…ジェノサイドは分からないけど、とりあえず怖い」」
これについては俺も同意だ。500年弱ほど前だっただろうか、俺がまだ外にいた頃、ヨーロッパ旅行に出かけた時に偶然ロベルト ーー レミィ達の父親 ーー に会って、意気投合。酒の勢いもあってか敢行された『実は私、吸血鬼なんだ』というカミングアウトを俺が『ふーん』の一言で受け流したことであいつが感激(未だにどこに感動したのかは不明)。是非ともウチに来てくれというので行ってみた時のこと。
やたら紅い屋敷の門を開け、中に入った時にまず聞こえてきたのが「なんで起こしたのよお姉様のバカーーッ!!」という鈴を転がしたかのように可愛らしいのにセリフのせいで台無しな声と、「ごめんなさいいいぃーっ!」という半泣きの声。あと破壊音。ロベルトに大丈夫か聞いたところ、冷や汗をかきつつ目を逸らし、震え声で大丈夫というので、仕方なく仲裁を手伝った。ちなみに、これがレミィとフランとのファーストコンタクトだった。どんな出会い方だコレは。
……この後、色々あってフランが精神を支配され、その元凶潰し及びフランを元に戻すためにロベルトと共闘し、終結後しばらくここで住むといいとか言われて、まあいいかと思いつつ厄介になること200年。思えば、これが始めてのヨーロッパでの宿泊となり、かつヨーロッパ最長滞在記録を今でも保っている。
「…レミィ」
「あら?どうしたの?」
「ロベルトにフィアーナは元気か?」
「お父様は元気よ。今も紅魔館の当主をしているわ。お母様は今病気で寝込んじゃってるのよねぇ…。まあ、すぐに良くなるだろうけど。2人ともまだまだ若いから、あと最低でも500年は元気じゃないかしら?」
「…そうか。それを聞いて安心したよ。今度、フィアーナの見舞いにでも行こうかな」
「ほんと?歓迎するわよ、兄様なら!」
あいつの好きな料理、確か辛口パスタだったよな?材料、近々買っとかないとな。
…ところで。至極当然な疑問が浮かんできたのだが。
何故、俺は神社で鬼や吸血鬼、八雲家に幽香に謎の巫女少女と一緒に宴会しているんだろう。
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話は、およそ1時間前に遡る。
上白沢との対話を終えて、取り敢えず紫のところに戻ろうとした俺だったが、藍が紫を引っ掴んで逃げてしまったせいで、紫の居場所が分からない。どうしたものかと悩んでたら紫の方から来てくれた。…何故か、幽香を連れて。
これには俺もビックリした。あいつが幻想郷に行っていることは知っていたが、まさかこのタイミングで紫が連れてくるとは思っていなかった。それは幽香も同じだったようで、スキマをくぐって俺を見るなり驚愕の表情を浮かべ、次いで発されたセリフが「…本、物…?」。いや、見たらわかるだろ…。
えらく幽香らしくないセリフに意外だと思いつつ本物だよバカ、と返してみたら若干目に涙を浮かべながら抱きついてきた。…お前、こんなキャラだったっけ?もっとこう、紫と文の暴走を俺と一緒に止める冷静なストッパー系のキャラだったよな?まあ、確かに1000年近く会っていないし懐かしむ気持ちは分かるけど。あと、抱きかかえるな。お前と俺との身長差考えたらもうコレ年の離れた長身の姉とチビ弟にしか思えねーんですが?
…取り敢えず幽香には離してもらった。そうでないとこの構図が続くからな。それはちょっと思うところありなので、パスで。
幽香が俺に密着してきてご満悦な様子になってたり、それを見てやたらニヤニヤしている紫が我に帰って顔真っ赤にした幽香と取っ組み合いのキャットファィトしたりと、色々あった後に連れて行きたい場所があるという紫に連れられるままにスキマをくぐり抜けてみれば、寂れてはいるもののかなり荘厳な雰囲気を感じさせる神社へ。
これは結構格の高い神だなぁ、でも俺こんな神知らないぞ?このレベルなら知っててもおかしくないのになと内心疑問に思っていると、建物の奥の方から脇の部分が完全に空いた、赤と白の組み合わせの巫女服着た巫女が登場。そして、俺を見るなり、一言。
『…ああ。あんたが紫の旦那ね。…とんだ好き者もいたもんだわ』
当然の如く紫をシバき倒してから巫女に事情説明。幸いにも分かってくれたようで、『…あ、そ』と言って、次いで紫を睨む。何かあったのかと不安になる俺を尻目に、巫女がまた一言。
『どうすんのよ、紫。結婚披露宴の準備、しちゃったじゃないの…』
唖然とする幽香を横目で見つつ、勿論その場で紫を打ち上げ花火にして、巫女に謝罪。巫女によると、既に何人か呼んでしまっていて、今更どうともできないとのこと。落ちてきた紫を幽香が掴んでフルスイング・トゥ・ザ・ムーンで空にリリースしてから巫女と幽香と、3人して嘆息。…巫女よ、お前も紫の被害者か。仲良く酒が飲めそうだよ…。
…んで、三人寄れば文殊の知恵だと、結局解決策を考えるも、何も思い浮かばず。やはり神と妖怪と人間では3『人』にはカウントされないのか?
取り敢えず『結婚披露宴云々は紫の冗談』と正直に説明して、あとは宴会に持ち込めばなんとかなるだろうという極めてアバウトかつレイジーな作戦を結構する他に道はなかった。
それでもって、今に至る。
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正直に言おう。紫、この流れ予想してただろ?結婚披露宴に出てくるとは思えない、とんでもない量の酒が出回ってるんだけど。あいつ、初めから宴会する予定だったんじゃねーか?…なんか、あいつの手のひらで踊らされると、無性に腹立つのは俺だけかな?
「お!お前が紫の婚約者か?」
「ち、ちょっと魔理沙。…ごめんなさい、この子に悪気は無いの。だから、許してあげて頂戴」
…ん?なんか如何にも私魔女ですよー的格好の女の子と金髪碧眼の大人しそうな女の子が話しかけてきた。…別に、招待された時にそう聞いてたんだろうし、何も言う気はないけど。
「いいよ。別に気にしないからね。…というより、紫のワガママに付き合わせてしまって、こちらこそ申し訳ない。あいつに代わって謝らせてもらおう」
「貴方が謝ることじゃないでしょう。…それで、差し支えなければ貴方の名前、聞いてもいいかしら?招待状見たし、知ってはいるんだけど、一応ね。あ、私はアリス=マーガトロイド。人形遣いよ。アリスと呼んでくれると嬉しいわ」
「ユウ。ちょっとした神様やってるものだ。宜しく頼む」
「霧雨魔理沙!普通の魔法使いだぜ!つーか、神様なのかあんた?とてもそうは見えないけどなぁ」
「ちょっと!?魔理沙、貴女なに言ってるのよ!?妖怪の賢者がこんなことで嘘つくわけないじゃないの!招待状にも書いてたでしょ?『ユウはとても偉ーい神様です。強いです。私五人分くらい』って!貴女分かってるの?賢者五人分よ、五人分!なんで貴女は、そう、勝てない相手にケンカ売るのよ…」
紫、お前。仮にも招待状ならもっとちゃんとした言葉で書けよ。なんだよ偉ーい神様って。強いですって。五人分くらいって。しかも俺そこまで強くないだろ。精々三人分くらいじゃないか?
…しかし、それより気になるのはこの金髪碧眼の女の子 ーー アリス・マーガトロイド ーー だ。さっきから妙に俺のことを警戒している。まあ確かに普通に生きてて神に会う機会なんて滅多に無いだろうし、そういう意味では分からなくもないけど。なんか、この子はそういう感じの『畏れてる』ではないように思う。どちらかというと、『怖がってる』。もしくは『怒らせないように振舞おうとしてる』。
…まあ、それはおいおい付き合って行けば何とかなるだろう。俺はそんなに恐れられるほど怖いつもりもないしな。
「…まあ確かに神様みたいな威厳は出てないなぁ。というより、出したくてもそんなもの出せないよ。…あと、アリス。紫の言ってることは、確かにどれも正しいが、だからと言って別に俺を怖がる必要は全くない。月並みな言葉で悪いが、お前たちにも、幻想郷のものたちにも、危害を加える気は毛頭ないから、安心して欲しい。…まあ、だからと言って、な」
「そうなのよ!私は嘘を言っていないわ!ユウは私の夫なのよふぎゃあああぁぁぁぁ…」
「お前の夫というところだけは、絶対に認めん」
そこを認めてしまうと本気で場がカオスになるからな。悪い……とは微塵も思わないが、これだけは譲れない。
「…すげえな。紫をぶっ飛ばしたぜ、こいつ。神様ってのも案外本当なのかもな」
「まだ言ってるの、魔理沙?今の神気、見えなかったわけじゃないでしょ?もう、どう見てもユウさん神様じゃないの、しかも相当なレベルの」
…ふむ。神様には会ったことがあるのか。しかし、ならば何故この子は俺にビビってるんだ?2回目なら、逆に慣れてるはずだろうに。まあ、今はこの事は置いておくとしよう。折角の出会いだ、意義あるものにしようではないか。
「へぇ。今のでそこまで推測できるとは。若いのにやるじゃないか、アリス。見聞の才能、あるぞ」
「あら、ありがとう。…神様に褒められるなんて久し振りだわ」
「…あ、そうか。お前の母さん、神様だったな」
…なに?
「…アリス、お前も神なのか?」
「違うわよ。確かに母親は神 ーー 神綺っていうお方なんだけどね。私はその方に拾われて、育てられたの。それで、少し前に幻想郷へ来たってわけ」
…神綺に育てられた?つまり、この子は魔界出身か?…そう言われてみると、確かにこの子の人形に使われてる魔術理論は神綺が使ってたのと酷似している。それに、アリスの服にも何か細工がしてあるようだ。…これは、ダメージ軽減、か?なるほど、一人暮らしする娘への餞別というわけか。神綺、中々な計らいをするじゃあないか。…それに、そう言えば前に会いに行った時、神綺のやつが言ってたな。
「…『自慢の一人娘』、か。言い得て妙だな」
「どうしたの?」
「あー、いや何でも。ちょっと考え事してただけだ。…アリス」
「何?」
「…たまには帰ってあげろよ。きっとその神様、首を長くしてお前を待ってるぜ?」
あいつはこうも言っていた。独り立ちしたきり会いに来てくれなくて寂しい、と。その日は珍しく酒なんか持ち出してきて、俺が知る中では始めて酔い潰れるほどに飲んでたからな。本当に寂しかったのだろう。
「?…分かったわ。神様のお告げなら、聞いてみてもいいかもね」
「ぜひそうしてみろ。…ああ、あともうひとつ神託してやろう」
いつもあいつが好んで食べてたもの。これは美味しいとか言って、俺に作るようせがんでくるくらい好きだったもの。その癖、甘口しか食べられず、辛口を食べた日には泣いて魔界を飛び回ったせいで、捕まえるのが大変だったほどのもの。
「ーー カレーを作ってあげると吉、だ」
ありがとうございました!
「えらく独自設定だな。神綺がカレー好きって、始めて見たわ」
なんか良くないですか?カレー好きな保護者キャラって。
「…よく分からん。まあいい。それでは、次回をお楽しみに」
次回、鬼との出会いについて少しだけ触れます!
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