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北極圏LNG開発に600億円 対ロシア経済協力 国際協力銀調印へ

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北極圏LNG開発に600億円 対ロシア経済協力 国際協力銀調印へ

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 日本政府が検討する対露経済協力の一環で、国際協力銀行(JBIC)がロシア資源大手ノバテクの主導する北極圏ヤマル半島での液化天然ガス(LNG)基地開発に対し、欧州の金融機関と約6億ドル(約600億円)の協調融資を実施する方針を固めたことが19日、分かった。近く調印する。北極海航路を通じてLNGを極東ウラジオストクに運び、一大輸出拠点を築く計画もあり、経済協力の目玉となる可能性がある。

 日本は世界最大のLNG輸入国で、地理的に近い極東から転売自由で安いLNGを輸入できれば日本企業の競争力を強化できる。また、北極圏のLNG基地開発への協力はロシア側が日本に強く求めており、政府には今回の協調融資を通じて開発を後押しすることでプーチン露大統領の12月の来日時に北方領土問題を含む平和条約締結交渉の進展につなげる狙いがある。

 協調融資はイタリア外国貿易保険(SACE)と仏コファス(COFACE)の計3行で実施し、JBICの分担は2億ドル程度とみられる。基地開発には中国の金融機関やロシアのファンドなどが既に融資しており、総事業費は300億ドル強に上る。

 日欧が占める割合は小さいものの、交渉筋によると「中国側に全面的に頼るのを避けるため、ノバテクが日本などの参加を強く希望している」という。

 ヤマル基地は2017年の生産開始を予定し、年間生産量は約1650万トンと日本が手掛けたLNG事業「サハリン2」の1・5倍の規模を見込む。プラント建設大手の日揮と千代田化工建設が液化設備を受注しており、JBICの協調融資には日本企業の事業を支援する意味合いもある。

 ロシア側は、ヤマル半島に隣接したギダン半島のガス田やLNG基地の開発にも参加を求めており、政府が対応を検討している。

 一方、経済協力では併せてウラジオストクにLNGの受け入れ基地や再ガス化施設などを備えたターミナルを整備する方向だ。ロシア側は北極海航路を通じてヤマル半島から極東にLNGを運び、ウラジオストクを太平洋に向けた“玄関口”に育てたい思惑がある。

 安倍晋三首相は9月の東方経済フォーラムで、「ウラジオストクに往年の国際都市の面目を取り戻させたいプーチン大統領の夢は私の夢でもある」と講演し、協力姿勢を示している。

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