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テテュス達の日常 作者:来世の郷音
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第二話

 森林奥部に進んでいると機械の少女はふと立ち止まり聴覚素子に意識を向けた。どこからか声が聞こえた気がしたのだ。
「おっかしいなぁ…近くに誰かいるのかな。オペレーターさん」
「はい、こちらブリギッタです。どうかされましたか」
「私の近くに誰かアークスっている?」
「分かりました。少し調べますね」
 アークスは任務に就く際あらかじめどのエリアに行くのかを報告する義務がある。ほかのアークスのパーティとのトラブル等を避けたり、もしもの緊急事態に他のアークスに救助を要請する時に円滑に業務を進めるためだ。
「確認できました。任務ではなく自由探索で新人のアークスが一名付近に居るようですが…」
「手間取ってるのかな。ブリギッタさん、座標送って。様子みて必要なら手助けするね」
「分かりました。座標をそちらに送信しましたので確認お願いします」
 このエリアのマップを開いて送られてきた座標を確認する。ちょうどロックベアのいる所に向かう途中にいるらしい。同時に送られてきたエネミーの数情報と重ねてみてみると囲まれているようだ。
 何やってるんだか、エネミーに囲まれないようにするとか教習時に習うことではないか。そう心の中で愚痴りながら座標地点に向かって走る。途中に出会う原生生物やダーカー等エネミーは辻斬りのごとくさっさと切り捨てて置き去る。

 座標地点に着くと確かに情報どうり一人のアークスがエネミー達に囲まれて戦っていた。若いというより幼い見た目のデューマンだ。華奢な身体に似合わぬ大ぶりの量産品鋼拳を振り回すように戦っている。しかし相手となっている原生生物の一種、『ウーダン』の軽いフットワークに翻弄されてまともに当たっていない。避けられた拳が宙を切り、釣られてデューマンの子の身体が泳ぐ。
  危ないな
 そう思ったときには体が動いていた。脚部ジェネレーターの出力を最大にしてデューマンの子の周りにいるエネミーのうち背面と側面にいるものを一掃する為に加速する。ラジエーターから警告フレームが出るが無視。両手の双小剣のうち右手の方をサイドスローで投擲。手首のスナップを入れることで回転に力が加わり軌道上をまっすぐ小剣がエネミーめがけて飛ぶ。同時に投擲した際に生じた体軸の回転を生かし右脚を素早く大股で前に出し走る。速度が予め乗った踏み込みに警告無視のジェネレーターによる加速が常人を凌ぐ速さを生み出しエネミーの輪のなかに突入。先ほど飛ばした小剣がエネミーの一体の身体を刺突する。突然の攻撃に未防備なエネミーは小剣の慣性力で宙に投げ出されるのを少女は空中で小剣を掴み力任せに引き切る。引き裂かれたエネミーは絶命しフォトンの光を纏うがそれに構わず引き切った際の力を生かし両手を投げ出し大ぶりの回転でエネミー達を首元を狙って薙ぐ。数体は頚椎にまで刃が達し速度を落とすがデューマンの子の獲物の一体以外は喉を裂かれ絶命する。

「ふう、これでいいかな」
 目の前、過剰使用したジェネレーターからの警告フレームとジェネレーターを覚ますためにラジエーターからも警告フレームが大量に発生し、ラジエーターからの熱で体の周りに陽炎が立つ。関節にも負荷が大きかったようで潰れはしなくても警告フレームが発生していた。
 こりゃ検査また引っかかるなぁ、そう思っていると
「…だ、誰です、か!?」
 ビブラートが掛かったような声が付近で生まれた。声の生まれた方を見るとデューマンの子が腰を抜かしてはいないが硬直していた。
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