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【政治】

「原発争点なら自民敗北」 新潟、鹿児島知事選で「うねり」

インタビューに答える小泉純一郎元首相

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◆次期衆院選で小泉元首相にインタビュー

 小泉純一郎元首相は共同通信社の単独インタビューに退任後初めて応じた。次期衆院選で野党が統一候補を擁立して「原発ゼロ」を争点化すれば、自民党が敗北するとの見通しを表明。原発再稼働に慎重な候補が当選した新潟、鹿児島の県知事選に触れ「目に見えない、うねりが出てきた。衆院選に影響がある」と述べた。安倍晋三首相が目指す九条改憲は民意不在を理由に「できない」と指摘した。インタビューは十九日、東京都内で行った。

 小泉氏は二〇〇九年の政界引退後、約三年前から原発ゼロの即時実施を講演などで訴えている。一四年の東京都知事選で、立候補した細川護熙元首相と組んで原発政策転換を掲げたが、敗北した。

 インタビューでは、安倍政権が脱原発に転ずることはないとした上で「民意を無視する政党が、政権を持続できるわけがない」と非難した。民進党にも「最大の争点が原発だと分かっていない。野党がだらしないから与党は楽だ」と苦言を呈した。

 野党が原発政策でまとまった場合「自民党から『実は反対』という議員が出て、ごたごたする」と予測。「ポスト安倍」とされる岸田文雄外相や石破茂前地方創生担当相も影響され得るとした。

 福島第一原発事故を受けた廃炉や賠償で東電への国費投入が膨らむ懸念を説明し「原発推進論者の『安全、コストが安い、クリーン』とのスローガンは全部うそだ」とした。高速増殖炉もんじゅを含め、核燃料サイクル政策全体を取りやめるべきだとした。使用済み核燃料の再処理を日本に認める日米原子力協定を一八年に更新する必要はないと主張。「米国は日本が方針を決めたら、いやと言えない」と語った。

 改憲問題では「基本は九条改正だが、国民に変える雰囲気がまだない」と分析。九条以外の改憲は意味がないとした。

 ロシアとの北方領土交渉は、北方四島の日本への帰属をロシアが認めないため、打開は難しいとの考えを示した。

◆「原発ゼロ」首相に迫る 先月の接触時

 小泉元首相はインタビューで、九月に安倍首相に対し「何で原発ゼロにしないのか。原発ゼロの方が安上がりだ。こんな簡単なのに、なぜ分からないのか」と詰め寄ったと明らかにした。首相の反応については「苦笑して頭を下げて何も言わなかった」と説明した。

 両者の接触は九月十五日に開かれた故加藤紘一元官房長官の葬儀終了後、迎えの車を待っていた際。小泉氏は黙ったままの安倍首相に「経済産業省や原発推進論者が言っているのは、全てうそだ。だまされるなよ」とも伝えた。安倍首相は返答せずに公用車に乗り込み、その場を後にした。

 安倍首相は小泉政権時代に自民党幹事長や官房長官に抜てきされ、二〇〇六年に後継首相として第一次安倍政権を発足させた経緯がある。

◆小泉元首相インタビュー詳報 原発は金食い虫だ 推進論者の「安全」うそ  

 小泉純一郎元首相のインタビューの詳報は次の通り。

 【原発と政治】

 −新潟、鹿児島両県知事選で、原発再稼働に慎重な候補が勝利した。

 「目に見えない、うねりが出てきた。原発に対する不安、懸念がいかに強いかを表している。衆院選に影響がある。野党が候補を一本化し、原発ゼロを争点にしたら、自民党が勝つか分からない。野党が勝つのではないか。小選挙区で候補者調整をすれば、自民党にとって脅威だ。今までは争点隠しされた。これからは影響がある」

 「(民進党は)最大の争点が原発だと分かっていない。野党がだらしないから与党は楽だ。野党が原発ゼロを言い出したら、原発再稼働について、自民党から『実は反対』という議員が出て、ごたごたする」

 −衆院選にどう関わるのか。

 「引退してから衆院選応援には行っていない。息子(小泉進次郎衆院議員)の応援にも一度も行っていないが、原発ゼロは言い続ける」

 −今、現職首相なら原発ゼロで信を問うか。

 「当たり前だ。野党は真っ青になる。首相が言えば、反対できない」

 −郵政民営化と比べるとどうか。

 「簡単だ。郵政はもっと厳しかった。自民党も反対、全政党が反対だった。非常識と言われながら本当によく勝った。野党は原発ゼロに反対していない。自民党は民意を無視している。民意を無視する政党が、政権を持続できるわけがない」

 −九月の故加藤紘一元官房長官の葬儀時、安倍晋三首相と会話した。

 「車を待っている時、『何で原発ゼロにしないのか』と言った。首相は苦笑して頭を下げながら、何にも言わなかった。聞いているだけだった」

 「昨年、首相には『原発ゼロにすれば、他の政策はもっとやりやすくなるよ』と伝えたが、分かってもらえていない」

 −首相は、原発ゼロに踏み切れないか。

 「ここまで(再稼働に)踏み込み、輸出までしている。変えたら逆に『ぶれた』と批判される」

 −「ポスト安倍」はどうすべきか。

 「野党が原発ゼロを争点にしたら、自民党は有権者の動向に敏感な政党だから、候補者の岸田文雄外相や石破茂前地方創生担当相は(どう対応するか)分からない。自民党総裁選にも大きく影響してくる」

 −原発ゼロの国民運動に手応えがあるのか。

 「感じている。国民はいずれ分かってくれると思い、講演を続けてきた。判断に間違いはない」

 【原発政策】

 −即、原発ゼロか。

 「もちろん。(東京電力福島第一原発事故から)五年。稼働中の原発はほとんどゼロだ。自然エネルギーで賄える。核燃料廃棄物は有害性が消えないのに、処分場がない。新規制基準は米国より甘い。避難計画もテロ対策も弱い。原発を攻められたら日本はおしまい。日本に向けた核爆弾を持っているようなものだ」

 「東京電力が支払えず、政府が(いったん肩代わりする形で)支援する賠償額は五兆円で足りず、九兆円に引き上げられた。最近また追加支援を求めている。原発は金食い虫だ。原発推進論者の『安全、コストが安い、クリーン』とのスローガンは全部うそだ」

 −首相在任中の原発政策を反省しているか。

 「専門家や電力会社の言うことを信じていた。引退し勉強して、うそと分かった。当時、分かっていれば、とっくにゼロにしていた。論語の『過ちては改むるにはばかることなかれ』だ」

 −高速増殖炉もんじゅの評価は。

 「三十年間で税金一兆円も費やした。夢の原子炉が、幻の原子炉だ。(核燃料サイクル政策)全てが駄目だ。必要ない」

 −使用済み燃料の再処理を認めた日米原子力協定のため原発政策をやめられないとの声もある。

 「うそだ。米国は日本が方針を決めたら、いやと言えない。(二〇一八年が期限の協定を)更新する必要はない」

 【改憲】

 −首相は改憲を実現できると思うか。

 「できない。基本は九条改正だが、国民に変える雰囲気がまだない。日本はとっくに解釈改憲をしている。九条以外を変えるのは意味がない」

 【北方領土】

 −北方領土問題は解決できると考えるか。

 「難しい。ロシアが北方四島の日本帰属を認め、二島を返還するならいいが、しないだろう」

 【生前退位】

 −天皇陛下の生前退位を巡る見解は。

 「天皇陛下は忙しすぎる。首相在任時も、公務を減らすよう宮内庁長官に何度か言った」

 【元米兵支援】

 −東日本大震災で救援活動をした元米兵の支援に取り組む理由は。

 「『トモダチ作戦』に参加した元兵士が病気だと聞き、今年五月に十人と米カリフォルニア州サンディエゴで会った。元兵士は原子力空母を東北沖に停泊させて活動していた。一、二年たち鼻血が止まらず内臓に腫瘍ができた。空母は海水を真水に変えてシャワーや料理に使う。外部と内部の両方の被ばくだ。妊娠していた女性は障害児を産み、(その子は)しばらくして亡くなった。みんな日常生活が送れずに除隊せざるを得なくなり(医療保険がないため)高額の医療費を取られている」

 「国防総省は米議会に『被ばくによる結果と断定できない』と述べ、日本外務省も『訴訟中のため日本政府としては何もできない』と言った。口だけの感謝では済まない。治療に役立つ額を渡す必要があると思い、基金を設立した」

 −いくら集まったか。

 「七千万円を超えた。来年三月までに一億円を集め、見舞金として渡したい。今年十一月十六日に会費一万円で全額を寄付する講演会を東京で開く」

 

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