大谷翔平の「二刀流」を支える脳のカラクリ

分業が当たり前の投打を両立できるすごみ

パ・リーグ・クライマックスシリーズ(CS)ファイナルステージ第1戦に先発登板した大谷翔平選手=2016年10月12日、札幌ドーム(写真:日刊スポーツ新聞社)

10月22日から、プロ野球・日本シリーズが開幕します。25年ぶりのリーグ優勝を果たした、セントラル・リーグ王者、広島カープか、最大で11.5あったゲーム差をひっくり返してパシフィック・リーグを制した北海道日本ハムファイターズか。今季限りの現役引退を発表した、カープ・黒田博樹投手のピッチングや、ファイターズ・栗山英樹監督の采配など、さまざまな見どころがありますが、何と言っても注目は、投打の「二刀流」が代名詞である大谷翔平選手がどのような活躍を見せるかでしょう。

プロ野球は専門・分業に特化する業界

広島出身の私は、カープの優勝を心から願う立場ですが、脳の専門家としては、やはり大谷選手の「二刀流」に注目せざるを得ません。なぜなら「二刀流」を可能にしている大きな理由の1つに、大谷選手の脳の使い方があると考えるからです。拙著『聞くだけで脳が目覚めるCDブック』で紹介しているように、脳には「同時並行脳」と呼ばれる、複数のことを同時に高いレベルで処理する力があります。この能力がどう「二刀流」と関係しているのか、分析してみましょう。

あらためて説明するまでもなく、野球では、投手と野手(打者)に求められるものは大きく異なります。投手には、打者をおさえ、得点を与えないという役割があり、一方で打者には、打撃や走塁などによって、相手投手から、1点でも多く得点を奪う役割が課せられています。すなわち、両者に必要とされているのは正反対です。その結果、高いレベルのパフォーマンスが求められるプロ野球の世界では長らく、投手はピッチング、野手はバッティング・守備・走塁といった専門性に特化する形で分業が行われてきました。

次ページ脳科学で分析する「リアル二刀流」
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