──
将棋連盟は今まで根拠を示さなかった。そこで、私が限られた情報から、あれやこれやと推理した。そこから「少なくともソフト使用についてはシロらしい」という結論を下した。
→ 三浦九段の逆襲!(将棋紛争)
→ 将棋連盟の逆襲!(将棋紛争)
→ 将棋ソフトよりも人間が上
これを見たせいかもしれないが、将棋連盟の側の代表者たる渡辺竜王が、「不正はあった」ということの根拠を示した。朝日の記事だ。
→ 三浦九段の不正疑惑 渡辺竜王が将棋連盟に対応要請:朝日新聞 2016-10-21
一部抜粋しよう。
指し手とソフトが選ぶ手とが一致するのかを調べたところ、三浦九段が勝った20局のうち、4局では、定跡手順を外れて以降の「一致率」が90%を超えたという。
渡辺竜王は「トップ棋士でも、ソフトとの一致率は高い人で平均約70%。三浦九段は離席が多く、感想戦で示す手もソフトと一致していた。不正の疑いが強い以上、理事会に対応してもらう必要があると判断した」と話す。
これを受け、谷川浩司会長(54)を始めとする連盟幹部、佐藤天彦名人(28)、羽生善治三冠(46)らによる会合が10日に開かれた。渡辺竜王によると、説明に対し不正を否定する声は上がらなかったという。
「一致率」が90%を超えたなんて、そんなデータがあったのなら、さっさと示せよ、と思う。そんなデータがあれば、限られたデータから、私がいちいち推理する必要もなかったのだ。
さて。これをどう評価するか? 私としては、素直に頷けなかった。
「上記のデータは、渡辺竜王個人の示したデータだから、もしかしたら計算や判断が間違っているかもしれない。渡辺竜王はコンピュータに強いとは思えないし」
そう思っていたのだが、意外にも、強力な援軍が出た。渡辺竜王では客観性が保てないので、
「誰か、第三者が調べればいい」
と思っていたら、実際に、第三者が調べていた。
誰か? それは、将棋界のなかでもコンピュータ将棋に強いと定評のある千田翔太・五段だ。(22歳)
例の7人のうちの一人である。「専門家枠」で出たというが、何のことかと思ったら、コンピュータ・ソフトによる分析を担当したそうだ。
で、その結果は、これだ。
出典:千田五段による三浦九段の棋譜解析 技巧との一致率85%以上
このうち、重要なのは、最下部だ。そこだけ取り出してみる。
この図の見方は、こうだ。
使用ソフトは「技巧」(3600)、および、三つのソフトだ。 ( 3600 は棋力のレート。スマホ版ではなく、パソコン版。)
対局は、
三浦・渡辺戦(A級順位戦)
三浦・丸山戦 第3局
三浦・丸山戦 第2局
三浦・久保戦
(三浦・丸山戦の第1局は、三浦敗北なので、調べない。三浦・丸山戦は、竜王戦の挑戦者決定・3連戦)
調査対象は、序盤を除く。三浦渡辺戦は、「25〜91手」と「有休後59手」 (有休は、夕休の誤字。夕休は、夕食休憩のこと。) 具体的な手は、別記。
→ 三浦・渡辺戦の棋譜
27手 4五桂
32手 4四歩
39手 4四角成
59手 8五桂
91手 3二飛成 (終了)
- ここで、「夕休後59手」というのは、意味がわからない。91手のうち「最後の 59手」という意味なのだろうか? そうなら、「32手 4四歩」からとなるが、ここはまだ序盤だ。こんな序盤で夕食になったのだろうか? 展開が遅すぎる気もするが。(よくわからない。)
ひょっとして、「夕休後59手」というのは、「夕休後に59手目の 8五桂が指された」という意味なのかもしれないが、そうだとすると、次の数字の意味がわからない。
ここで、一致率の数字を見ると、技巧の数値が最も高い。したがって、ここで使われたソフトは「技巧」であると見なしていいだろう。ただし、他のソフトを使った可能性も排除できない。
いずれにせよ、「88.23%」という一致率は、90%に近く、「ソフトを盗み見た」という疑いが非常に強い。(普通は 70%ぐらいで、高くても 80% だ。88.23% という数値は、あまりにも高くて、容疑は「真っ黒」に近いグレーだ。)
三浦・丸山戦3 は、序盤は一致しないが、36手目以降の一致率が 85%と、極めて高い。この点は、三浦・渡辺戦と同様だ。
注目するべきは、Apery との一致率がきわめて低いことだ。このことから、Apery は使用可能性が排除される。
三浦・丸山戦2 は、序盤はやはり一致しないが、31手目以降の一致率が 86.95%と、極めて高い。ここでもやはり、「技巧」との一致率が高い。「使ったソフトは技巧だ」と、ほぼ断定できるだろう。(他のソフトは、可能性が低くなった。)
久保・三浦戦は、夕休のあとだけを調べたらしい。その一致率は、驚くべきことに、95%である。ただし、他のソフトでも 95%や 90% という数値が出ているから、ここはどうやら、もともと一本道であるらしい。
棋譜を調べてみよう。
→ 久保・三浦戦の棋譜
57手 5一飛成 (夕食休憩後・再開)
62手 6七歩成
92手 1七歩 (終了)
調べてみたら、やはり、「ほぼ一本道」のコースだ。ここでは、一致率は非常に高いが、これをもって「クロ」と断定することはできない。
以上をまとめて評価しよう。
最後の「95%」という数値を見るだけでは、「真っ黒」と見える。しかしここは、他のソフトでも同じような数値を示すのであって、「ほぼ一本道」のコースなのだ。したがって、一致度が高いのは当然だ。(詰め将棋のコースが一本道なのと同様だ。)
誰か(千田五段だと疑われたが本人は否定したので別人)が、「99.9パーセントクロです」と発言したそうだが、それは、上記の数値を誤認したせいだろう。久保・三浦戦を見る限りは、何とも言えない。(調べる対象が間違っている。)
一方で、他の対局では、86〜90%という非常に高い一致率が出ている。ただし、100%ではない。
以上から結論できるのは、こうだ。
「三浦九段は、ソフトの技巧を使っている。ただし、全面的に依拠しているのではない。短時間にざっと見て、棋譜をうろ覚えの状況であって、完全に覚えているのではない。また、1手ごとにすべての手で離席しているのでもない。したがって、一致率は 100%にならない」
「うろ覚えのあとで、離席しないでいるときには、自分で考えながら指している。その意味で、自分の頭で考えている部分も、かなりある。そして、考えているうちに、間違った手を指すことがある。つまり、次善手や悪手を指すこともある。たいていは、大きな悪影響を及ぼさないが、稀には大悪手を指して敗北することもある」
判定はこうだ。
「ソフトを使ったか否かといえば、使ったことは間違いない。ただし、すべての手をソフトに依拠しているのではなく、自分の頭で考えている部分も非常に大きい。本人としては、『ちょっとソフトを参考にしただけで、大部分は自分の頭で考えた』と勝手に思い込んでいるのかもしれない。とはいえ、結果的には、ソフトに相当大きな部分を負っているので、明らかにクロである。」
「ここで言うクロとは、ソフトを使ったか否か、という点においてのクロである。あらゆる場面でソフトの手を真似した、という意味ではない」
「もし、あらゆる場面でソフトの手を真似した、という意味で数字を決めるのなら、クロの率は非常に下がる。なぜなら、たとえソフトを見なくても、もともと一致率は 70%ぐらいはあるからだ。その 70% が、90%に上がったとしても、不一致率は 3分の1に減るだけだ。( 30% から 10% へ。)……だから、あらゆる場面でソフトの手を真似した、という意味で言うのなら、そんなことはない、と言える」
「三浦九段の言い分でなら、9割ぐらいは自分の頭で考えて、残りの1割ぐらいはヒントに従っただけさ、というつもりになるのかもしれない。もちろん、そんな言い分は成立しないのだが。それでも、本人は自己弁護して、自分はたいしてクロではない、と思い込んでいるのかもしれない」
( ※ また、半分ぐらいの対局では「継ぎ盤」を使っただけなのかもしれない。負けた対局もいっぱいあるからだ。)
[ 付記 ]
三浦九段が「ソフトの手との一致率を調べてくれ」と言ったのは、完全なヤブヘビだった。これによって、一致率が判定され、技巧を使ったことが証明されてしまった。
黙っていれば、こんなこともなかっただろうに、あえて「無実だ」と声明を出したせいで、とんだヤブヘビとなった。
これは、まったく不思議なことである。このような調査があることは、聴取の場で知らされていたはずなのだ。なのに、「クロの証拠がある」と示されたあとも、「クロの証拠はない」と思い込んで、「証拠があるなら証拠を出して見ろ」と言い張った。
ほとんど倒錯的な狂気と言える。まともな正常な判断力がなくなっている。ほとんど狂人レベル。
まったく理解できないことだが、ここまで来ると、連盟としては、三浦九段を除名するしかあるまい。永久に資格を剥奪することになる。「年内の対局停止」と比べて、圧倒的に重い処分となる。
[ 余談 ]
三浦九段がどうしてこういう狂気的な方針(自殺も同然)を取ったのかは、まったく不思議である。
ただし、見当が付くことが、一つだけある。こうだ。
「不名誉は妻に顔向けができない。不名誉をかけられたままでは生きるに値しない」
こう思い込んでいた可能性がある。それならば、「棋士としての自殺」という方針をあえて選んだとしても、仕方あるまい。なぜなら、わずかな可能性であっても、その可能性に賭けるしか、他には道はなかったからだ。
そして、予想通り、賭けに負けた。となると、彼に残された道は、たぶん悲惨な結末しかない。つまり、**(伏せ字)だ。
関係者としては、**を予防する処置を取ることが大切かもしれない。
[ 提案 ]
そこで、私としては、提案を示しておこう。
将棋連盟としては、三浦九段を「クロ」認定するのが妥当である。もはや「真っ黒」に近い状態であるから、将棋界では彼をまともに扱う人はいないだろう。
とはいえ、「クロ」認定しても、特に処分を追加しなくてもいいかもしれない。「クロ」を明白に認定するだけで、あとは対局停止の期間を少し長くするだけでいい。
そのあとは、対局に復帰しても、ソフトなしでは大幅に勝率が下がるだろう。B級に落ちるのは確実で、3年ぐらいすると、C急に落ちる可能性もある。
そこで、適当な時期に、連盟としては引退勧告を突きつけるといい。どうせ除名しなくても、成績は急低下する。成績が急低下したあとで、引退勧告すればいいのだ。
そして、仮に成績が急低下しなかったなら、ソフトを使っていたという疑いも晴れる。その場合には、引退勧告をしなければいい。
とはいえ、成績が急低下しない、ということは、まずありえそうにない。もともと好成績が得られるのであれば、ソフトなんか使わなかったはずだからだ。
実際には、いくつかの対局でソフトにしたがっただけで、たいていの対局では「継ぎ盤」を使っただけなのかもしれない。そうだとしても、「継ぎ盤」を使えない状態では、能力がかなり下がるはずだ。
「成績の大幅な低下」を見越した上で、当面は、「除名」という処分を避けて、
「疑いは非常に濃厚だが、断定はできないので、除名はしない」
という形にするのがベターだろう。(これはまた羽生三冠の方針にも合致する。)
三浦九段に与えるのに、最もふさわしい処分は、「社会的な死」だろう。本項で述べたような分析を公開するだけで、その結果はもたらされるので、それで十分だ。「除名」までは必要ないだろう。
なぜか? 彼の悪事は、確かにひどい悪事ではあるが、いかに狡猾で計算高いとしても、そこにはひどい小物感があるからだ。それは「妻の尻に敷かれた小物」という感じである。
素晴らしい妻に恵まれた羽生三冠のような幸福な人ならば、悪人を傷つけるよりは、悪人をかばってあげたいと思っても不思議ではない。それが人間の優しさというものだ。
雑誌では、渡辺竜王は「一致率が90%を超えていても必ずしもソフトカンニングしているわけではなく、逆に一致率が40%でも肝心な場面でソフトカンニングするケースもある」と言っていますよ。
渡辺竜王が三浦九段を黒と断定づけたのは、「感想戦の三浦九段の読みがソフトと一致していたから」。
しかし、そうなると本日の叡王戦の羽生三冠も感想戦の読みがソフトと一致していたから、羽生三冠も疑われないといけないですね!
読みの件は、次項で説明済みです。本項ではなく、次項で書いた。
> 羽生三冠も感想戦の読みがソフトと一致していたから
渡辺竜王のことなんだら、三浦戦では、ちょっと一致したことがある、というレベルじゃないんでしょう。あっちもこっちもみんな一致していた、ということなんでしょう。
ななめで千田が出てたので千田コメ
>今回の記事で私の名前と発言内容の説明が載っていましたが、少し違うような受け取り方をされそうです。困ります。 https://mobile.twitter.com/mizumon_/status/789336019334074368
>・私の発言が、オフィシャルな立場の人間として求められたものではないこと ・私の発言の本題がその箇所ではないこと この2点を追記します。 https://mobile.twitter.com/mizumon_/status/789337800738902016