米政府、フィリピン大統領の「決別」発言に説明要請へ
- 2016年10月21日
中国訪問中のドゥテルテ・フィリピン大統領が「米国と決別する」と発言したことについて、米国務省はフィリピン政府に説明を求める方針を示した。
大人数の経済使節団を連れて訪中しているドゥテルテ大統領は20日、北京で経済関係者の会合に出席し、「米国との決別を宣言する。軍事において。社会面では違うかもしれないが、経済においても。米国は敗北した」と述べた。
「皆さんの思想的な流れに自分を同調させた。ロシアも訪れプーチン(大統領)とも会談するかもしれない。そこで我々3カ国対世界、中国とフィリピンとロシア対世界なのだと告げるかもしれない。それしか方法はない」とドゥテルテ氏はフィリピンと中国の経済界関係者を前に表明した。
カービー米国務省報道官は、米政府は両国の「親密な関係」と矛盾する「この物言いに当惑」していると述べ、今週末にマニラ入りするラッセル国務次官補がフィリピン政府に対し説明を求める方針だと記者団に話した。
「米国からの決別と大統領が述べた時、何を意味していたのか正確な説明を求めていく」と報道官は述べた。
ドゥテルテ大統領はこれまでも、オバマ米大統領を罵倒したり、米比合同演習の中止を宣言したりしたほか、フィリピンに米軍を増派すると合意した2年前の防衛協力強化協定を見直すなどと発言している。
一方で、フィリピンのロペス貿易産業相は17日、BBCに対して、米国との貿易投資関係を終わらせるつもりはないと言明。大統領と共に北京を訪れているロペス氏は、「欧米との関係は維持するが、過剰な依存は減らすかなくしていくつもりだ」と述べていた。
南シナ海の領有権をめぐりハーグの常設仲裁裁判所が今年7月に中国の領有権の主張には法的根拠がないとの判断を示し、中国が判決受入れを拒否したことなどを機に、中国とフィリピンの関係は悪化し続けていたが、20日の中比首脳会談で両国は対話を通じ「摩擦を適切に処理する」と合意した。
ドゥテルテ氏は大統領選の間は中国政府を激しく罵倒していたが、6月に就任して以降は攻撃的な調子を弱め、むしろ米国への対決姿勢を強めてきた。
大統領率いる使節団は、フィリピンへの観光促進やフィリピン農産物の輸入拡大などを働きかけるために中国を訪れている。ロペス貿易産業相によると、135億ドル(約1兆4000億円)相当の通商協定に署名する予定。
ドゥテルテ大統領はほかに、フィリピン軍の装備刷新のため、武器や艦艇の購入を中国に持ちかけるつもりだと述べていた。