「敵だ!敵が来た!!」
「なにっ、我らの上官ヴァレンティヌス様が反乱を起こして攻めてきただと!」
<登場人物>
コエル:ブリタニア北部の首長
シンロウプ:ブリタニア北部の戦士、ローマ反乱に加わる
マグヌス:ローマ軍の指揮官
※この物語は歴史上の人物が登場していますがフィクションです。
ローマ軍看守の反乱
4世紀の終わり頃、ブリタニア北部にコエル・ヘンと呼ばれる戦士がいた。当時のブリタニアは長い間ローマ帝国に占領されており、ローマ軍指示のもと外敵のピクト族やスコット族の侵入を防ぐ任務に明け暮れていた。しかし・・・
ローマ砦の看守であるヴァレンティヌス様はピクト族やスコット族と同盟を結んで、ローマ軍をつぶしにかかっています。
ううむ。
ヴァレンティヌス様から使者が来ました!
<ブリタニアの同志よ、ここは手を組みローマ軍を倒してブリタニアを安泰にしないか?ヴァレンティヌス様とピクト族、スコット族からの伝言でございます。>
我らもヴァレンティヌス様に従ってローマ軍を追い払ってブリタニアを我らの手に戻すというのも手かも知れません。しかし大きな危険もありますし、ローマにこれまで従ってきた手前・・・・コエル殿、いかがしましょうか?
ううむ・・・パダン殿・・・とても悩むことろだ。ここでローマ軍を敵に回しブリタニアを取り戻すために戦うべきか?ローマ軍と共にヴァレンティヌス様の反乱を抑え、再びローマ軍の支配下に甘んずるか・・・
ローマ軍に対抗するのは得策でない気がする。とはいうものの、ローマ軍に加わるのも・・・
ヴァレンティヌス様の使者の方、もう少し考えさせてはくれぬか・・・
広がる反乱軍の勢い(大反逆)
またローマ軍がやられた!やられたぞ!
反乱軍を鎮めようとローマから新たな司令官が派遣されたけれど、反乱軍にローマ軍や敗れた様だ。何と、我らが同志のシンロウプ殿も反乱軍に加わったとか・・・
うぬぬ、パダン殿・・・
シンロウプ殿がやってこられた!
なに、シンロウプ殿が・・・
これはコエル殿もパダン殿もおそろいで。話は早い、単刀直入に申しましょう。ローマから派遣された新たな司令官が派遣さたけれど、ヴァレンティヌス様を大将とする連合軍はあっさりと退却させたぞ!
コエル殿達も連合軍に加わって頂ければ戦力増大、もやはローマ軍は敵ではないわ!我々ブリトン人の夢、ブリタニアの奪回ももう夢ではないぞ!
シンロウプ殿・・・気持ちは分かるが、君は本当のローマ軍の実力を知らないんだ。今はたまたま勝っているだけで、我々ブリタニアには実力がなさすぎる、弱すぎるんだ。
長い間のローマ軍支配に甘えてしまい自ら鍛えることを怠ってしまった・・・自分の足で立てるように強くならねば・・・今はダメだ
・・・・・
済まぬシンロウプ殿、私はローマ軍に加担するぞ!
私もだ!
何だって!コエル殿、パダン殿、君らは何を言ってるのかわかるのか?
ローマ軍は面目を潰されたので本気になるはず。今度は必ず大軍を送って反乱軍を潰しにくるぞ!
たとえローマ軍を追い払えたところで、ヴァレンティヌス様やピクト族とスコット族に乗っ取られてしまう可能性もある。
いやそれ以前に、ローマ帝国の支配下とは言え先祖代々、ローマ軍に大いに助けられブリタニアの辺境を共に戦ってきた大きな恩義がある。ローマを裏切るわけにはいかない!
君らは骨なしか!お前たちこそ裏切り者だ!ローマに魂を売ったんだぞ!そんな奴らの助けはもう借りる必要なない!今に見てろ、後で必ず後悔するぞ・・・
ローマ軍の反撃
ローマ帝国は今度はテオドシウス・エルダーとマグヌス・マキシムスというローマ軍No.1、2の軍事指揮官を送りこんできた。ローマ軍の最前線で鍛え上げられ連戦連勝で名を轟かせたこの二人に掛かっては、反乱軍は手も足も出ず鎮圧されてしまった。首謀のヴァレンティヌスは処刑され、シンロウプも捕らえられその後消息を絶ってしまったのである。
シンロウプ殿、あの時もっと説得できればよかったのだが、、無念だ。そなたがブリタニアを想う熱い気持ち、ずっと大切にしていくぞ・・・
シンロウプ殿の思いを必ずや我々が!
マグヌス閣下が来られた!!
コエル殿、ご苦労であった。
はっ、マグヌス閣下。
これからブリタニアは私が司令官だ。君の功績を称えて辺境警備のリーダーとする。これまで以上に私に仕えてくれ。
有難きお言葉。心して辺境警備に励み、ローマ帝国とマグヌス閣下の威厳を守ります。
任せたぞ!
はっ
やはり同志の為にも、ローマ帝国から独立して自分達の国は自分達で治める夢は叶えたい。しかし、急いで夢をかなえようとしても失敗する。焦らず今はローマ帝国に従い任務をしっかり遂行してじっくりと実力を蓄え、来るべきチャンスを待つようにしよう。
コエル殿、私も協力する!一緒にブリタニアを盛り立てていこう!
ノーザンブリテンのコエルの他に周囲にはやマナウ・ゴドッディンにはパダン、ストラスクライドにはケレティックという戦士がいました。彼らも辺境警備の任務にもくもくと従事しながら着実に実力を伸ばしていった。
衰えていくローマ帝国
時は経て4世紀の終わり頃、ローマからの使者がコエルのもとに訪れた。
ローマ帝国は内乱により東と西に分裂し危機に瀕している。多くの兵力が本土の戦いのために必要となり駐在しているローマ軍を大幅に減らすことになり、またブリタニア全土を直接治めることが出来なくなった。
引き続き司令官はローマから送るが、残ったローマ兵を纏めお前たち自身で辺境警備に励んでくれ。その代わり、ローマ帝国の支配下でお前たちにブリタニアの自治権を与えよう。
ははっ。
よし、夢にだんだん近づいてきたぞ。しかし、ローマ帝国に反抗することだけはやめておこう。そうすれば必ず時期が来る。
コエルはノーザンブリテン国を治め、同じくパダンやケレティックも自国を治めるようになった。彼らは自国を持つようになってもお互いは争うことはせず協力して引き続きローマに従い、ピクト族やスコット族の侵略に対する辺境警備に従事しながら着実に自国を強くしてことに力を注ぎました。
努力と時世がチャンスをもたらす
コエル殿、ローマ帝国ホノリウス皇帝の令をお伝えする
はっ
ローマ軍はブリタニアから撤退することに決まった。司令官を含めブリタニアに駐在しているローマ軍は全軍帰還する。そしてパダン殿、貴殿をブリタニア司令官に任命する。
この私がですか?有難うございます。
引き続き、ホノリウス皇帝とローマ帝国に忠誠を誓うように!
はっ、有難き幸せ!
その後ブリタニア戦士たち
ローマ帝国の影響は残るものの、コエルは実績、信用、実力が認められ念願のブリタニア司令官に任命された。戦いで奪い返すのではなく、ついにブリタニアを自分たちの手で治めるという長年の夢を叶えることが出来た。
ローマという強大な力に逆らわず与えられた任務に励み、慌てずあせらず実力を蓄えたことが長い目で見ると成功につながった。
その後も、コエルのノーザンブリテン、パダンのマナウゴドッディン、ケレティックのストラスクライドは目立った領土拡大はせず、お互い侵略戦争でつぶし合うことは避け、自国を長期にわたり繁栄させる策を取った様だ。
特にストラスクライドは、ピクト族やスコット族の侵略だけでなく、その後アングロサクソン族やバイキングの侵略があったにもかかわらず、スコットランドが建国されるまで400年以上も国の形を大きく変える事もなく存続し続けたことには目を見張るものがある。
※戦うブリタニア戦士シリーズ
前回記事:http://www.rekishiwales.com/entry/britannia4
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