電通東大卒女性社員自殺 一般家庭出身社員へのしわ寄せ
《男性上司から女子力がないだのなんだの言われるの、笑いを取るためのいじりだとしても我慢の限界である》──。そうツイートした5日後、彼女は社員寮4階から身を投げた。
大手広告代理店「電通」社員の高橋まつりさん(当時24才)が昨年12月25日に自殺。9か月後の9月30日、労災が認定された。
以下《》内は、彼女が残したLINEやツイッターの一部だ。
《神様、会社行きたくないです》(10月4日)
《土日も出勤しなければならないことがまた決定し、本気で死んでしまいたい》(11月5日)
《今から帰宅だが、どう見積もっても時間が足りないぞ?》(12月9日午前4時)
過重労働が極限状態に達していたことがうかがえる。
「遺族の弁護士の集計によれば、残業時間は昨年10月が130時間、11月が99時間。ただし、“70時間を超えてはいけない”という上司の指導で、会社へは10月は69.9時間、11月は69.5時間と過少に申告させられていた」(大手紙社会部記者)
高橋さんを追い込んだのは残業だけではなかった。
《部長(中略)「髪ボサボサ、目が充血したまま出勤するな」「今の残業量で辛いのはキャパがなさすぎる」わたし「充血もダメなの?」》(10月31日)
前出の《女子力がない》もそうだが、疲れ切った体に追い打ちをかけるパワハラに、高橋さんの心も悲鳴を上げていた。
《死にたいと思いながらこんなストレスフルな毎日を乗り越えた先に何が残るんだろうか》(12月16日)
高橋さんが所属していたのはインターネット関連の広告を扱う部署で、人手不足のうえに厳しいノルマが課されていた。加えて、電通では社員同士の酒宴の準備も新入社員が担当し、司会や余興に先輩社員がダメ出しをしていたという。
「それらは高橋さんにとってとても“嫌な仕事”だった」(代理人弁護士)
実際、自殺した12月25日には年納めの飲み会が予定されていた。この問題に詳しいノンフィクションライターの窪田順生氏は、電通の“体育会系ノリ”の企業風土が高橋さんを追い込んだ可能性が高いと話す。
「先輩社員たちには“オレができたことをお前ら若い連中はなぜできないんだ”という思想が蔓延している。電通マンにとって“朝まで接待で飲んで吐いて、そのまま会社でプレゼン”が日常風景で、そんな地獄の日々を生き残った一部の社員が上司になり、下にもそれを強要する。“オレが新入社員の頃はもっと酷かった”と言って、さらに追い込むのです」
しかも高橋さんは、こうした過重労働やパワハラの“被害”を受けやすい立場にあったという。
「電通には大手企業幹部の子息や中堅オーナー企業の跡継ぎが多い。それはその企業から広告を取りやすくするためで、有力者の子供を入社させること自体が“営業活動の一環”といえる。親の七光りで入ったボンボンたちは仕事ができないことが多い」(社員)
上司たちが彼らに過酷な残業をさせたり、パワハラで追いこんだりすることはほとんどないという。
「親に告げ口されると大変なことになるので、働かせすぎないし、厳しく指導もしない。でも、誰かが仕事をしなければいけないから、そのしわ寄せは“有力者の家柄”ではなく、実力で厳しい採用試験を通ってきた一般家庭出身の社員にいく。結局、一部の人が何倍も働くことになるんです」(別の社員)
高橋さんは彼女が中学の時に両親が離婚し、母親に女手ひとつで育てられた。
「彼女は“お母さんを楽にしてあげたい”という一心で勉強に励み、東大に進学しました。東大でも成績は優秀で、すごくできる人だった」(知人)
※女性セブン2016年11月3日号