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ユネスコと日本 品位ある関与が必要だ

 日本が、国連教育科学文化機関(ユネスコ)に対する今年の分担金約40億円の支払いを保留している。

     中国が申請した旧日本軍による「南京大虐殺」の文書が昨年10月、ユネスコの「世界の記憶」(世界記憶遺産)に登録されたのを受けて、日本が制度改革を求めていることが背景にある。記憶遺産の審査過程に見直すべき点はあるが、分担金をテコにするのは行き過ぎだ。

     記憶遺産は、歴史的な事実を認定するのが目的ではなく、あくまでも資料を保護するためにユネスコが独自に行っている事業だ。

     南京事件の登録資料は、写真、日記などのほか、犠牲者を「30万人以上」と推計した南京軍事法廷の判決書類も含むと言われている。

     南京事件については、犠牲者数などを巡り日中で見解の違いがある。

     日本外務省の見解は、非戦闘員の殺害や略奪行為があったことは否定できないが「被害者の具体的な人数については諸説あり、政府としてどれが正しい数かを認定することは困難」というものだ。

     南京事件の資料が登録された際、日本政府は「完全性や真正性に問題がある」「政治利用されることがないよう制度改革を求めていく」と中国やユネスコを批判する外務報道官談話を出した。

     「世界遺産」や「無形文化遺産」の制度は、国際条約に基づいており、申請や登録決定に関係国が関与し、透明性も高い。だが記憶遺産は、個人資格の専門家14人が決め、選考過程も非公開だ。透明性を高め、審査の基準やプロセスをより公正なものにすべきだ。

     日本政府が政治利用に懸念を持つのはわかる。だが、南京事件の登録に反発するようにして分担金の支払いを保留すれば、国際社会での振る舞いとして品位を欠く。そうなれば、日本の制度改革の主張も説得力を失うだろう。

     ユネスコ分担金は加盟国の義務だ。最大拠出国の米国がパレスチナ加盟に反発して支払いを凍結しているため、日本が最も多い。支払期限は12月末だが、例年は4〜5月ごろに支払っている。

     日本の保留は、ユネスコの活動に影響を及ぼしかねない。日本の発言力を弱め、日本に次いで多額の分担金を支払っている中国の発言力を強めることになる可能性もある。

     今年、日中韓など9カ国・地域の団体は、慰安婦の資料を記憶遺産に登録申請した。可否は来年10月までに決まる。審査は、制度改革を反映し、透明で公正に行ってほしい。

     日本政府は品位を持って分担金の負担義務を果たし、制度改革にも建設的に関与すべきだ。

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