日本の職場の雰囲気を測ろうとする人は、卓上ランプの需要に目を向けるべきだ。アングルポイズ(英国のスプリング式卓上ランプ)の売り上げは恐らく、「カロウシ(過労死)」現象に日本人が感じているつらさの度合いを明らかにするだろう。就業時間が終了した後、従業員が、消灯したオフィスの主要照明の代わりに個人用のランプを使うからだ。消灯で帰宅を促すわけだ。
ここ数週間、従業員の健康への懸念が再燃している。契機になったのは、長年の懸案だった過労死問題に関する政府の白書と、日本最大の広告代理店である電通の事務所に対する一連の立ち入り調査だ。
10月13日、東京労働局は、過酷なほど長い残業時間と過労死の問題がどれほど深く根を張っているか調べるために電通本社などに立ち入り調査した。18日には、当局が日本各地の電通子会社3社に調査の対象を広げた。調査の背景にあるのは、昨年12月、高橋まつりさん(当時24)が亡くなったことだ。新卒で電通に入社した高橋さんは、1年足らずあくせく働き、最後のころは月105時間を超える残業をして自殺した。
政府の調査では、日本企業の2割が、社員が危険なほどの長時間労働をしていると認めていることが分かっており、この悲劇は珍しく激しい反響を呼んだ。また日本のメディアは、1951年に当時の電通社長が書いた、社員の責務に関するメモを再掲した。「取り組んだら放すな、殺されても放すな」という内容だ。これを受け、評論家らは一連の指示が一度でも撤回されたのかどうか疑問視するようになった。
電通はここへ来て、毎日午後10時に従業員が帰宅するよう、職場の自動消灯を開始した。10時というのは、多くの従業員には何時間もの仕事が残っており、まだ残業の圧力を感じる時間だ。消灯のトリックはほかの日本企業や政府省庁で試されており、職場に残る人に罰則が科されない限り、この策略はうまくいかない。
■電通だけではない労働慣行
こうした労働慣行はいずれも、電通独特のものではない。実際、多くの一流日本企業が今、次に厳しい目を向けられるのは自分たちだと心配しているだろう。だが、たとえ企業が消灯ルールを実行したとしても、根深い問題への表面的な是正策にしかならない。企業はこれを理解しており、多くの企業は――過去と同じように――文化的な説明で問題がうやむやになり、立ち消えになることを望んでいるかもしれない。