2014年11月、平昌五輪組織委員会は大騒ぎになった。国際オリンピック委員会(IOC)がボブスレー・リュージュ・スケルトンを行う競技場を海外の既存の競技場で分散開催する案を打診したというニュースが伝えられたためだ。具体的に候補に挙がったのは1998年に冬季五輪が開催された長野だった。そり競技場は建設費だけで1200億ウォン(約110億6000万円)を上回り、五輪後の活用法もこれといってなく、無用の長物になる可能性が高い状況だった。市民団体・環境団体だけでなく、江原道内でも一部、共感する雰囲気はあった。しかし、朴槿恵(パク・クネ)大統領までもが「すでに工事が行われているのだから分散開催は意味がない」と述べ、この問題は引っ込んだ。IOCも韓国の反対意見を受けて引き下がった。
これより前、平昌は韓国国内の都市で分散開催をする案でも一騒動あった。政府(文化体育観光部=省に相当)や韓国体育関係者の間ではアイスホッケー競技場2カ所のうち1カ所をソウル市や江原道原州市に割り振り、厳しい寒さが予想される江原道平昌郡の横渓でなく、江原道江陵市で開会式と閉会式を行う案などが話し合われた。だが、これも地域の強い反発に遭い、なかったことになった。
政府はその後、江陵市と平昌郡を「冬季スポーツのメッカ」にするという原則を作った。しかし、五輪後の活用案についてはまだ答えを見つけられずにいる。「分散開催不可」を主張していた江原道内の地方自治体の間では、一部競技場の運営費負担をめぐり互いに管理責任を押し付け合っている姿も見受けられる。今後は中央政府が管理すべきだという主張もある。これについて、「分散開催はダメだと言っていた自治体は、五輪後の『金食い虫』だけを政府に任せようとしているのか」という批判の声もある。
IOC調整委員会はこのほど、「五輪後の活用案が見つからなければ、五輪のイメージを大きく損なう恐れがある」と異例の警告メッセージを発した。スポーツ界の一部では、「分散開催の幅を広げたIOCの『アジェンダ2020』はコスト削減だけでなく五輪後の活用にも良いことだ」と残念がる声もある。「江原道民の民心」など政治的理由のために分散開催という効率性を捨てたのは間違っていたということだ。一部には「後遺症をできるだけ減らすには、今からでも代案を立てる作業に入らなければならない」との指摘もある。