オムニチャネル戦略による金融ビジネスモデルの変革

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デジタル技術を用いた新しい金融サービスの実現

Service Overview

長引く低金利、人口の減少、高齢化の進展、新興IT企業による金融サービスの提供など、金融機関は現在さまざまな困難に直面しており、現在のビジネスモデルをどのように変革するかは大きな経営課題となっています。特に伝統的な金融機関にとって、従来の支店、営業店を中心として顧客に利便性を提供するビジネスモデルは経営上の重荷になる危険性をはらんでおり、早急に検討を開始すべき課題の一つです。その解決策として、近年、顧客向けビジネスにおけるオムニチャネルサービスの議論が活発になってきています。オムニチャネルサービスとは、通常「いつでも、どこでも、顧客が希望する場所、手段で、かつ、それらの手段がシームレスに活用可能な形で提供されるサービス」と定義されます。つまり、サービス提供者にとっては、顧客の行動を一元的に管理し、顧客がどのような場合にどのようなサービスを欲しているかを把握し、適切なチャネルのサービスをシームレスに提供できる能力が重要となってきます。
これらを実現するためには、モバイル、ビッグデータ技術、最新金融サービス(FinTech)など最新のデジタル技術を踏まえた将来戦略の構築に加え、これらを強力に推進する、全ビジネスラインをまたがる全社的な推進体制の構築、企業文化の変革が金融機関にとっての大きなチャレンジであると考えます。本課題への取り組みは、大手金融機関、デジタルとの親和性の高いインターネットをベースとした金融機関、支店網が限られている中小金融機関、新興IT企業を含めた将来の業界地図の変動に影響する可能性が高いといえます。

オムニチャネル戦略の概要
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Client Issues

成功するオムニチャネル戦略の実現には、顧客がいつ、どのようなサービスを要望しているかを把握し、それらを通じて提供する一貫した顧客体験が、顧客を惹き付けるものであることが重要となります。特にデジタルチャネルに関しては、サービスとデザインの洗練性や先進性が要求されるでしょう。そして、それらサービスが十分に連携し、ストレスなく機能を移動できることが重要になります。このようなサービスを実現するためには、従来のようなビジネス形態、チャネルごとの縦割りの組織形態ではなく、業務目的(マーケティング、データ活用、顧客サポートなど)ごとの推進組織が一貫した先進的なブランドイメージを構築することが重要です。また、その推進には既存の金融機関にとって従来の文化を超えたチャレンジが必要となってくるでしょう。加えて、これらを支える顧客接点を実現するIT基盤や顧客動向をモニタリングできるデータ分析基盤が必要となってきます。このようにオムニチャネル戦略の実現には幅広い視点の課題を総合的に体系立てて解決していくことが必要です。おのおの視点での代表的な解くべき課題を示します。

検討の観点 課題
テクノロジー
  • サイロ化されたデータの統合方法は?
  • ビッグデータ処理を実現するデータ基盤はどうすべきか?
  • チャネル間のシームレスな連携を実現するテクノロジーは?
  • 顧客満足度を高めるチャネルを実現する技術は?
提供サービス
  • 共通して提供すべきカスタマーエクスペリエンスは?
  • 積極的に支持をしてもらえる顧客を作るために提供すべきサービスは?
  • デジタル技術はどのように活用すべきか?
  • 営業店の役割は?どこに配置すべきか?
  • FinTechの活用戦略は?
データ活用
  • 顧客はいつ、どのようなサービス形態を望んでいるか?
  • 顧客満足度を計測するにはどのようなデータが有効か?
  • 顧客はどのようなセグメンテーションに分類すべきか?
  • セグメンテーションに使用するデータ、アルゴリズムは?
  • 営業店配置の決定はどのようなデータを活用できるか?
推進体制
  • チャネル、ビジネスライン横断の施策を推進するにはどのような組織体制が有効か?
  • 効果的なデータ活用を実現するデータガバナンス態勢は?
組織・文化
  • 顧客目線での業務遂行文化の醸成
  • 独創的なイノベーションを尊重する行動原則とは?
  • 業績評価はどのような形態で行うべきか?

Our Approach

上記の通り、オムニチャネル戦略は企業全体のビジネスモデルに影響を及ぼす課題であり、組織横断的で長期的な取り組みが必要となります。従って、短期の投資対効果実現、ブランドイメージの維持、向上を図りつつ、ビジネスモデルを変革していく取り組みが必要となります。PwCコンサルティング合同会社(PwC)では、各金融機関の現状や、ビジネス戦略を踏まえたToBeモデル(オムニチャネル戦略)の策定、現状とのギャップ分析を踏まえた課題解決のロードマップの策定を総合的に支援することが可能です。世界157カ国に広がるグローバルネットワークを活用し、各種先進事例、ベストプラクティスの提供、競合調査の支援や、各種分析ツール、検討のフレームワーク、関連技術情報の提供を通じ、クライアントのビジネスモデルの変革を支援します。

プロジェクトアプローチ例

プロジェクトアプローチ例
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Impacts

事例1: 欧州銀行のデジタル化支援

ある欧州の銀行では、リテール業務に関する顧客との接点を、デジタルチャネルを中心に再構築。PCチャネルの操作性を刷新、モバイルチャネルは専用の機能を構築、詳細な相談業務はリモート会議システムに誘導し、ライト型の店舗のショッピングモールへの配置で顧客コンタクトを増やすという総合的なオムニチャネルを構築。統一された顧客体験を実現しています。プロジェクト実行では従来の縦割りのプロジェクトチームを廃止し、スモールワーキンググループにより顧客体験の実現にフォーカスできる態勢を構築しました。PwCは本プロジェクト実行におけるプロセス構築などを支援しました。

事例2: カスタマーのデジタル移行

ある銀行では、従来ほとんどの顧客が実店舗を経由した取引であった状況から、インターネット、モバイルを用いたデジタルチャネルに顧客を誘導することを計画。顧客の取引行動、デモグラフィック情報を分析することにより、デジタルチャネルへ移行しやすい顧客セグメント、デジタルへの移行の要因となり得る顧客行動を特定。これらの情報を基に、デジタルチャネルへの移行させるためのビジネスプランを構築しサービスチャネルの変革を支援するとともに、アナリティクス手法の提供、ビジネスプランの策定を支援しました。