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旧作ギャラリー 「ワイヤレスマイク」 |
このコーナーでは、管理人の電子工作の軌跡を展示しています。
あくまで軌跡なわけで、技術的価値はありません。
今考えるとオワッテルものが多いですが、そんなのをすべて曝け出すので、
変化(進化とは言えない)を見てもらおうと思います。
ワイヤレスマイクは電子工作の基本
私が電子工作を始めるキッカケとなったのが、ワイヤレスマイクです。離れたところに電波で音声を飛ばすことができます。
76〜90MHzというFM放送帯の周波数を使うのでFMラジオで受信することができ、部品の特性や実装のバラツキが小さく再現性が高いので失敗も少ないです。また、「ワイドFM」モードで受信するため実用的な周波数安定度が得られます。
ワイヤレスマイクは電波を使った手軽な実験に向いています。
ワイヤレスマイクのキット
私が最初に作ったのは、電子キットメーカー「エレキット」のワイヤレスマイク(¥800)でした。
勝手に回路図を載せるわけにはいきませんので、簡単に回路を紹介します。
回路は乾電池1本で動作します。
発振部はベース共通発振回路で、変調はトランジスタのベース端子に注入して電極間容量の変化でFM変調をかけるというものです。
キットでは発振コイルにコア入りの高周波ボビン(FCZコイルのようなもの)が使われており、巻き線の途中でタップ(出力取出し口)から取り出しています。
抵抗器(180Ω)を負荷にしたバッファアンプが付いていて、周波数の安定化に一役買っています。加えて、バッファ入力のカップリングコンデンサを47P(80MHzにおける容量性リアクタンスは約42Ω)にすることで、アンテナに触れるなどしても周波数がふらつかないようになっています。
このキットの残念なところは、小さい部品を使っていないところです。抵抗器は1/6Wタイプを、電解コンデンサには6Vなどの低電圧の小型タイプかタンタルを、コンデンサマイクも小型のものを使い、高周波ボビンではなくトリマーコンデンサを使っていれば、さらにコンパクトになったはずです。部材コストもそんなに変わらないでしょう。
あと、マイク感度(マイク出力)が高くないこともあります。マイク系統の10uFの後に10KΩが入っているのですが、もっと小さくするとマイク感度があがるかも知れません。
最終的に私は3つ買い、改造を加えては実験を繰り返しました。
左の基板はマイクが剥ぎ取られていますが、これは音声ライン入力で変調をかける実験を行ったためです。
もっと遠くまで飛ばしたい
電波を飛ばして遊んでいると、そのうちもっと遠くまで飛ばしたくなります。電波の飛距離を伸ばすには送信出力を上げる必要がありますが、当時はその方法を知りませんでした。
簡単に送信出力を上げる方法は実際にいくつかあります。
・電源電圧を上げるか、発振トランジスタのバイアス抵抗(33KΩ)を小さく(10KΩくらいに)する
・バッファの180ΩをRFCに変える
・バッファ入力の47Pを大きく(100Pくらいに)する(ただし、アンテナ状態の変化によって周波数がふらつく)
本体サイズが小さいので、「パイプマッチ」の箱に単5電池と一緒に入れてスパイマイク的に仕上げていましたが、FM帯はアンテナが長すぎるため、小さな本体サイズに対してアンバランスな長さのアンテナが必要です。どうしても長いアンテナのコードだけが飛び抜けて目立ってしまいます。
マッチ箱の中に収めるため、アンテナをコイル状にしたり、鉄心に巻いてみたりと、いろいろな実験をしたものでした。
結局、「アンテナは波長に合った長さをまっすぐに伸ばさないと最大効率が得られない」ということを知ります。
ワイヤレスマイクの自作
ワイヤレスマイクキットにはちゃんと回路図が付いていて、ごく簡単ではありますが回路説明もありました。
それを参考に部品を集めて作ってみたのがこれです。
キットで使われている高周波ボビンは入手はできなかったので、手巻きコイルの途中からタップ(出力取出し口)を取っています。
発振周波数は、コイルを微妙に伸び縮みさせて設定します。
(あとでバッファと送信アンプを追加しようとしていたため、基板の後部が空いています)
こちらはバッファとマイクアンプを追加したものです。
高密度実装への工夫
小さく回路を組むために、蛇の目基板のホールをドリルで広げ、1つのホールに複数本の部品のリードをまとめて差し込む実装方法を考えました。回路を小さく組むことは、良好な高周波特性にも繋がります。
マイクアンプの部分は極限まで小さくなっています。
空芯コイルで作っていたバッファアンプの負荷コイルをリードインダクタのRFCに換装してさらに小型化。
バッファアンプの負荷コイルを空芯コイルのRFCにしたもの。
バッファアンプの負荷コイルを、空芯コイルを使った同調式にして送信出力をアップさせたもの。
極限コンパクト型
バッファを省略して極限まで小さく組んだタイプです。
アンテナも省略しているので、電波は発振コイルから直接輻射されます。
ただし、周波数はFMラジオ帯ではなくアマチュア無線の144MHz帯なので、受信には広帯域受信機が必要です。
すっきりと収まってはいますが、飛距離が出ない事と周波数が(FM帯よりも)高いことによる周波数安定度の低さにより、実用性はありませんでした。
電池ホルダー実装型
基板上にLR43型コイン電池ホルダーを実装させたタイプ。
2段送信アンプ型
バッファの後にさらに送信アンプを追加して出力を上げています。
バッファと送信アンプの間にあるトリマコンデンサは、一番電波が強くなるように調節します。
高周波増幅回路を多段接続しているにもかかわらず、また、貧弱なGND配線にもかかわらず異常発振はしませんでした。
送信周波数はエレキットのようにコイルのコアを回して設定するのではなく、トリマーコンデンサ(黒色の四角)を回して行います。
周波数はFMラジオ帯ではなくアマチュア無線の144MHz帯なので、受信には広帯域受信機が必要です。
144MHz帯の波長はFM放送帯の半分ほどなので、アンテナも半分の長さで済みます。
(C)北摂電子 Hokusetsu Electric