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テストステロンがほとばしる!──甘くて酸っぱい青春応援歌

『6才のボクが、大人になるまで。』のリチャード・リンクレイター監督によるリアルな若者たちの青春群像劇を描いた『エブリバディ・ウォンツ・サム!!』が、11月5日に公開される。

Words: Mirai Konishi

野球推薦で大学に入学することになった主人公ジェイクは、個性豊かで騒がしいチームメイトと、たくさんの出会いと恋を経験し、少しずつ大人になっていく。ロック、パンク、ディスコ、ヒップホップなど、時代を代表する名曲にも注目したい。

舞台は1980年のテキサス州立大学。野球推薦の新入生ジェイクは入寮すると、個性的な先輩たちからさまざまな洗礼を受けることになる。やがて先輩たちと一緒に女子寮でナンパに挑戦したり、ディスコに繰り出したりするのだが、上映開始から20分ほど経過しても、事件らしい事件が発生するわけではない。いわゆる青春映画なら、そのへんまでには主人公が先生や先輩の目の敵にされたり、年増の女性から誘惑されたり、あるいは同級生が酒や薬物の過剰摂取で倒れたり、というようなことが起きているはずなのに。

ところが、この『エブリバディ……』では大きなイベントが発生しないまま、主人公の前に立ちはだかる悪者の登場すらないまま、ランダムな感じでリアルな物語が展開していく。ただ、愛すべきキャラクターたちが馬鹿騒ぎして、ごきげんな音楽が流れるだけだ。しかし、これがとびきり心地良い。

プロットらしいプロットを作らずに映画を成立させてしまうのは、リチャード・リンクレイター監督の得意技である。アカデミー賞6部門にノミネートされた前作『6才のボクが、大人になるまで。』でもそうだったように、凝りに凝った作り話を開陳するのではなく、等身大の「リアルな体験」を積み重ねていくのが彼のスタイルなのだ。

この作品がいいのは、新入生ジェイクを通じて、青春のひとときを追体験できるところにある。ボロ車で実家をあとにした彼は、キャンパスでじっくり友情と愛情を育み、自由を謳歌する。舞台は日本ではないけれど、若者が抱く漠然とした不安や期待、恋の予感は世界共通だ。こんな日々が永遠に続くわけがないと分かっているからこそ、観客の目にはそんな日々のありのままが眩しく映るのだ。

ジェイク役のブレイク・ジェンナー(『glee』)をはじめ、ゾーイ・ドゥイッチ(『ヴァンパイア・アカデミー』)、タイラー・ホークリン(『ティーン・ウルフ』)と実力派の新鋭たちが揃って個性的なキャラクターを演じている。かつてリンクレイター監督の出世作であり、今でもカルト的な人気を誇る『バッド・チューニング』からマシュー・マコノヒーやベン・アフレック、ミラ・ジョヴォビッチが巣立ったように、今後のハリウッドを『エブリバディ・ウォンツ・サム!!』組が背負っていくことを期待したい。

『エブリバディ・ウォンツ・サム!!世界はボクらの手の中に』
ひとりの少年が成長する姿を12年間かけて撮影した『6才のボクが、大人になるまで。』のリチャード・リンクレイター監督が、大学入学を目前にした主人公の3日間にスポットを当てて綴る青春ドラマ。11月5日より、新宿武蔵野館ほか、全国公開。

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