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くらし☆解説

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悪質商法の被害や、法外な解約金をとられた、といった被害について、消費者に代わって、消費者団体が事業者を訴える。それによって、被害のおカネを取り戻しやすくしよう、という画期的な制度が、関連する法律が施行されたことで、今月からスタートしました。今井純子解説委員。

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【なぜ、こうした制度ができたのですか?】
これまで、被害を受けて、消費生活センターなどに相談してもおカネが戻ってこない場合、消費者が自分で、訴訟を起こす方法はありました。ただ、数十万円程度の被害だと、弁護士を探す手間や裁判の費用がかかる。さらに、勝てるかどうかもわからない。という高いハードルがあって、実際には、泣き寝入りをしている方が、圧倒的に多いのが現状でした。それでは、事業者からみると、やり得ということになってしまいます。
そこで、多くの被害者に代わって、消費者団体が、訴えを起こす制度をつくろうということになったのです。

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【どのような被害が対象になるのですか?】
例えば、
▼架空の投資話で、出資金をだまし取られた。
▼簡単に予約がとれると言われ、1年分のエステの代金を前払いで払ったのに、ぜんぜん予約がとれない。解約したいが、おカネは返せないと言われた。
▼結婚式場を解約したいと言ったら、まだ、一年先の予定なのに、高い解約料を請求された。
▼あるいは、新築マンションを買ったら、欠陥マンションだった。
というように、
「同じ事業者によって、少なくとも数十人にのぼる被害者がでているケース」が対象になります。
いわゆる悪質な事業者による被害だけではなく、幅広い契約関係が対象になります。
ただ、いくつか、注意が必要で、
▼まず、この制度の対象になるのは、法律が施行された後、つまり、今月1日より後に受けた被害だという点。
▼そして、戻ってくるおカネは、事業者側に払った代金が上限だという点です。つまり、精神的な苦痛への慰謝料や、食中毒などによる健康被害、マンションを修理する間の引っ越し費用。こうした被害は、対象外となっています。

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【裁判は、どのような仕組みですか?】
この制度は、2つの段階に分かれているのですが、
まず、一つ目の段階。ここで争うのは、国から「特定適格消費者団体」という、特別な認定を受けた消費者団体と事業者です。具体的には、消費者団体側が、消費者からの相談や、それ以外の様々な被害情報をもとに、事業者を訴えます。ここで、争われるのは、「事業者に責任があるかどうか。つまり、被害者におカネを返す義務があるかどうか」という点です。おカネを返す義務があると認められたら、次の2つ目の段階に進むことになります。そして、ここから、被害者が、裁判に参加することになります。

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【被害者は、どうやって、裁判に参加することになるのですか?】
一つ目の段階で勝つと、消費者団体は、事業者から顧客リストをもらうことができます。それをもとに、1人1人の被害者に、手紙やメールを送って、裁判に参加するよう呼び掛けることになります。ですから、消費者団体に直接相談をした人だけでなく、あきらめて泣き寝入りしていた人にも連絡がくる可能性がある。これが、この制度の大きな特徴です。

【ただ、顧客リストがない場合も考えられますよね?】
はい。その場合は、消費者団体がホームページなどを通じて、この事業者の被害を受けた人は、裁判に参加してくださいと、広く呼び掛けることにしています。

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その上で、名乗り出た被害者が申し出た「被害の額」を消費者団体がまとめて裁判所に提出し、裁判所が、誰にいくらを返すかを決め、それに応じて被害のおカネが1人1人に戻ってくる仕組みです。

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【でも、事業者が「返すおカネはない」と言ってくる心配もありますよね】
そのような場合に備えて、消費者団体は、裁判を起こす前にでも、事業者の資産を「仮差し押さえ」するよう裁判所に申し立てることができます。認められますと、事業者は、土地を売ったり、口座からおカネを引き出したりすることができなくなる。つまり、おカネをこっそり隠すことができなくなる仕組みです。

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【裁判をするのに、費用はかからないのですか?】
一定の裁判の費用、それに、おカネが戻ってきた場合には消費者団体への報酬といったコストはかかります。ただ、自ら裁判を起こすより安いですし、企業に責任があることが認定された後で、裁判に参加するわけですから、勝つ可能性=おカネが戻ってくる可能性も高い。弁護士を探す必要もない。ハードルはかなり低くなると言っていいと思います。

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【制度を利用したいと言う人は、国の認定を受けた消費者団体に相談をすればいいのですか?】
そうです。ただ、認定はこれからなのです。今月3日、消費者機構日本という団体が、認定を受けるために国に申請をしました。早ければ、年内にも認定される方向です。
先ほども触れましたが、10月以降に受けた被害が対象になりますし、相談したから、すぐに裁判というわけではありません。ですが、同じ事業者の被害が数十件にのぼると、消費者団体が裁判を起こす可能性がでてきます。ですから、10月以降に受けた被害で、消費生活センターに相談しても、解決しないという場合、認定を受けるのを待って、相談をすると、被害の回復につながる可能性がでてきます。

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【こうした消費者団体になりすまして、被害を取り戻すための費用として、お金をだまし取る2次的な被害がでないかという点が心配です。どう見極めたらいいのでしょうか?】
消費者団体が、一つ目の段階で勝った場合、被害者に対しては、原則、郵送やメールで、裁判への参加を呼び掛けることになります。その場合、消費者団体や、消費者庁のホームページにその情報が載りますので、それを確認すること。そして、その際、手紙やメールに書かれている電話番号やアドレスは、偽モノの可能性がありますので、そこに連絡するのでなく、自分で、消費者団体や消費者庁の電話番号やホームページを調べて、確認することが大事です。

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【この裁判の制度、うまくいくといいですね】
ぜひ、うまくいってほしいと思います。ただ、課題も残ります。2つ。
▼ひとつは、一つ目の段階で勝ったあと、裁判に参加してくださいという情報を、どう被害者の手元に届けるかという点です。特に、顧客のリストがない場合、消費者団体がホームページで呼び掛けても、多くの被害者が気付かつかない可能性もあります。それだと、取り戻せたはずのおカネを取り戻せないことになってしまいます。市町村などとの連携を強化して、情報が1人でも多くの被害者に伝わる仕組みを考えていくことが大事です。
▼もうひとつは、国の認定を受けて、裁判を起こせる消費者団体をどう増やすかという点です。財政基盤がしっかりしていることなど、厳しい条件が求められるので、今、クリアできる団体はそう多くないと見られています。でも、それだと、多くの裁判を起こすことができません。国が財政的にもっと支援する仕組みも考えてほしいと思います。

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