「1票の格差」が最大3.08倍だった7月の参院選は違憲として、弁護士グループが選挙無効を求めた訴訟の判決で、東京、高松の両高裁が18日、「合憲」と判断した。訴訟では、隣り合った県を統合する「合区」を含む10増10減への評価が主な争点。両高裁とも定数配分見直しに向けた国会の取り組みを認めた。
2つの弁護士グループは全国で16件の訴訟を起こした。17日までに言い渡された2高裁の判決は、格差が著しく不平等な「違憲状態」と判断。司法判断は分かれている。
東京高裁の小林昭彦裁判長は18日の判決理由で、昨年の制度改正で最大格差が縮まった点を「数十年間維持された5倍前後の最大格差が改善された」と判示。10増10減を決めた改正公職選挙法の付則に「2019年の参院選に向けた選挙制度の抜本的な見直し」が明記されたことも評価した。
高松高裁の吉田肇裁判長は国会の取り組みが不十分としながらも都道府県単位を基本とする選挙区割りの合理性を認め、「投票価値の不均衡が見過ごせない程度に達しているとまではいえない」とした。
東京高裁の判決後に記者会見した原告側弁護士からは裁判所への厳しい言葉が相次いだ。伊藤真弁護士は「判決は是正の余地や方向性を何も示していない」と批判した。
政府や与党は今のところ様子見の構えだ。菅義偉官房長官は記者会見で「各高裁の判決を注視したい」と話した。自民党の竹下亘国会対策委員長は「最終的には最高裁の判断を尊重しないといけない」、公明党の大口善徳国対委員長は「最高裁で統一した判断が出るだろう」と話した。
これまで2件の高裁判決はいずれも「違憲状態」だった。14日の広島高裁岡山支部は「最小限度の是正であり、著しい不平等状態を解消するには足りない」と指摘した。
名古屋高裁金沢支部(17日)を含め、4件の判決はいずれも国会の取り組みを一定程度評価している。結論が割れたのは、それでもなお最大格差が3倍を超える現状をどうみるかが裁判官によって異なるためだ。
1票の格差をめぐる司法判断は、格差が著しい不平等なら「違憲状態」、違憲状態のまま合理的な是正期間を過ぎれば「違憲」とされる。
3年ごとに半数が改選される参院は選挙区の定数が偶数となる制約があり、選挙区ごとの格差解消が難しい。過去には衆院に比べ寛容な司法判断が続き、最大格差が5倍前後でも合憲とされてきた。ただ最近は平等さを重視する姿勢が強まっている。最大格差が4.77倍だった13年参院選の訴訟では「違憲状態」13件、「違憲」3件(うち選挙無効1件)で、最終的に最高裁が「違憲状態」と結論づけた。
今回の訴訟で残る12件は、11月8日までに判決が言い渡される。司法関係者の間では「『違憲状態』と『合憲』の間で割れる」との見方が強い。最高裁は裁判官15人による大法廷で審理し、17年中に結論が出る見通し。どこまで踏み込んで定数配分見直しを求めるかが注目される。