中国は宇宙開発で何をめざしているのか。軍の主導で進めている以上、国際社会の疑問に正面から答える責務がある。

 中国の技術開発の進展ぶりはめざましい。おととい打ち上げた宇宙船には2人の飛行士が乗っており、長期滞在を試みる。

 いまや独自の宇宙ステーション計画が現実味を帯びてきた。米国やロシアと同様に、中国が軍事的な「宇宙強国」をめざしているなら、国際社会にとって懸念が増えることになる。

 中国が初めて有人飛行をしたのは03年。そして11年には無人で宇宙船と宇宙実験室とのドッキングを成功させた。

 今回は新たな実験室を使い、2人が30日間滞在し、実験やメンテナンス活動をする。ステーション建設は18年ごろに始め、22年には本格運用する計画だ。

 宇宙と軍事が関連するのは、中国に限ったことではない。だが中国は近年、公然と軍事利用の試みを続けてきたことで、各国の疑念を招いてきた。

 07年に地上からのミサイルで衛星を破壊する実験をし、「宇宙軍拡につながる」と批判を浴びた。14年にも対衛星ミサイル実験をしたと伝えられる。

 昨年の国防白書にも「宇宙は国際戦略競争の要害」と明記されている。この8月は盗聴解読不能とされる「量子暗号通信」の実験衛星を打ち上げた。

 これまで宇宙の分野では米国が圧倒的な優位を保ってきた。半面、米軍の運用は衛星通信網に大きく依存している。だから、それを脅かしかねない中国に強い危機感を持っている。

 逆に言えば、中国にとって宇宙関連の技術水準を上げることが軍事目的に沿うだけでなく、対米外交上のカードになる。

 米中間では宇宙をめぐる協議も開かれているが、紛争回避のメカニズムはない。衝突の事態はぜひとも避けるべきだ。

 現在の国際宇宙ステーションは、冷戦終結によって米ロ協力の形が実現した。両国関係が悪化しても協力は続いている。しかし、中国だけは自前で開発を進めている。単独だからこそ不信感が増す面もあろう。

 中国は宇宙ステーション計画への途上国の参加を呼びかけ、欧州も関心を寄せているという。だが、ここは一国の主導ではなく、米欧日ロ中を包含した宇宙分野での幅広い国際協力体制を築くことが必要な時期に来ているのではないか。

 たとえば年々増える宇宙ゴミの対策など、やりやすいところから協力を具体化していき、理念の共有を目指すべきだ。宇宙を対立の場にしてはならない。