青森県の「黒石よされ」写真コンテストの市長賞にいったん内定した写真の中で、踊りを披露する葛西りまさん=2016年8月15日、遺族提供
青森市立中2年の女子生徒(当時13歳)が8月、いじめ被害を訴える書き込みをスマートフォンのアプリに残して自殺した問題で、青森県黒石市の夏祭り「黒石よされ」の写真コンテストで最高賞に内定した写真にこの生徒が写っていたため、内定が取り消されていたことが分かった。生徒の父、葛西剛さん(38)は17日、氏名をりまさんと明らかにしたうえで、「いじめられている子の力になれば」と、受賞予定だった写真を公表した。
毎日新聞の取材に対し、葛西さんは公表に踏み切った理由について「写真には笑顔の娘が写っている。娘は私たち家族に『笑っていてほしい』と思って会いに来てくれたのではないか。写真を公表することで、いじめられている子に力を与えたり、勇気づけられたりできれば。こんな笑顔の子も、いじめで命を失うという残酷さも伝わってほしい」と話した。
コンテストは黒石市や黒石観光協会などで構成する実行委員会が主催。約150点の応募作品から今月11日の審査で、青森市のアマチュア写真家が撮影したカラー写真を最高賞の市長賞候補に選んだ。実行委担当者らによると、肖像権の確認のため踊りの団体に連絡したところ、りまさんが自殺する10日前の8月15日に撮影された写真と判明。葛西さんも撮影者も了承したため、この写真を市長賞に内定した。しかし、後になって審査会内部から異議が出たうえ、高樋憲市長も「そもそも亡くなった方がメインの写真を表彰、展示するのは、よされまつりを盛り上げるというコンテストの趣旨になじまない」と再考を促し、審査員が再協議したうえで13日に内定を取り消したという。
実行委担当者は「写真を市長賞として発表すれば、写真鑑賞とは違う目的で話題となり、他の出展者に迷惑がかかる。映像が複写され、ネットなどで拡散しかねない」と取り消し理由を説明。17日に今年の市長賞は「該当なし」と発表した。
実行委は、りまさんの四十九日である12日にいったん授賞の連絡をし、14日になって経緯の説明と合わせ取り消しを知らせたという。葛西さんは「賞をもらった娘を誇らしく思った。写真を見て家族で涙を流した」と話し、取り消しについては「面倒に巻き込まれたくないからとも感じたが、一度だけでも選んでもらえて感謝している」と述べた。【松山彦蔵、一宮俊介】