とあるヒーローの話
「め、めんみみ…」
しくった!そう思った。
タコのインクに足を取られつまずいた上にインク切れ。潜れないしクイボも打てない所か辺りは敵のインクで散らばり、逃げ場なんてなかった。
「漸く捕まえた♡」
にたり、笑いながらタコが近付く。きっとそのマスクの下はさぞかし素敵な笑顔なのであろう。
「いやー苦労したさね。アンタが一人になったとこを狙ってここまで誘き寄せるまでね。イカは単純馬鹿だから本当に挑発には持ってこいさ」
ぺらぺらと饒舌に目の前のタコは語る。どんどん体にピンクのインクが侵食してくる、このままじゃ非常にまずい。
あたりを見回すとほんの少し、ほんの少しだが自分の黄色いインクを見つける。
しめた、相手の気を少し引けば自分の素早さで彼処まで行ける。
インク全回復したらこんなタコなんて一捻りだ。
気をそらす…というよりは見苦しい抵抗のように相手に話し掛ける。
「あ、あんた何者なの!?!私を殺すの!?」
必死に出た疑問はあまりにも見ていて同情するようなものだろう。少なくとも、世界を救ったことあるものが言う言葉には見えない。
「あー自己紹介が遅れたね、アタシはアンタら…対イカ用戦闘兵器のタコゾネスさ。
アンタらイカみたいにタコにも人型にもなれるんだ。どうだ、面白いだろう?」
どこが、と言いたいとこだが下手に煽って自分の命を亡くす訳にはいかない。せめて、と思いギリ、とタコゾネスを睨む。
「おー怖い怖い。ちなみにイカ達と違って私はどんな言葉もしゃべれるのさ。だからアンタも私の言葉がわかるだろう、これで知能の差は歴然。戦闘力もこの程度にはアンタより上ってコト」
けらけらと嘲笑混じりに聞くそれはこちら側としてはかなりのストレスを与えられる。もう少しでクイックボムが使える、それまで我慢だ。
何かをいいかけようとしたが、相手のシューターからインクが飛んでダメージを受ける。
「ちょ、、!?何すんのよ!!」
焦りのあまり裏返る声。なんとも情けない。
しかし本当に危ない所だったのだ、あともう一発くらえば確実に……
そう思ってごくり、とインクを飲み込む。
「舐めてもらっちゃ困るね。何かしようってモンなら今すぐにでも殺すよ。」
つまりはお見通し、そういうことか。
悔しくて歯を食い縛る。本当に何も出来ない。こんなタコ一人に手も足も出ない。
「お願い…許して………私が何をしたの…」
とうとう目頭が熱くなり、ほろりと大粒の涙が流れる。
この、タコがイカに敗北する瞬間。
初めての私の敗北。その相手があのタコ。
確かにあんた達の仲間は殺したけどそれはあんたらが悪いんでしょ。なんで被害が私に飛ぶの。
様々な思いが飛び交うが、ひとつ動じないのは「死にたくない」という事だけ。やっぱり私も世界の平和より自分の命だ。
「あーらら、泣いてるの?フフ、可愛いとこもあんの、あの英雄様がねぇ」
私の無様な姿を喜ぶように、また言葉を並べる。インクが回復していることなんて忘れるくらい、もう心身はボロボロで。
「そうだ、それから」
タコがしっかり、1音1音くっきりと、ゆっくりと言う。
もしかしたら。
そう思いぐちゃぐちゃの顔を気にせず、満面の笑みでタコゾネスの方を
向い
て
「アンタさっきから何言ってるんだい?アタシは言葉は話せるけど理解は出来ないよ。」
冷たいその言葉が心に刺さった瞬間、額に静かに当てられたシューターの引き金がひかれた。
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