時代の正体〈393〉消せない加害の歴史 慰安婦像制作
韓国人彫刻家の思い 歴史と向き合う
- 特報|神奈川新聞|
- 公開:2016/09/21 15:17 更新:2016/09/21 15:27
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毅然(きぜん)とした表情でいすに腰掛け、こぶしは両膝の上で固く握られている。慰安婦の少女をかたどった日本大使館前のブロンズ像。その周囲にはいま多くの大学生が座り込んでいる。昨年12月、日韓政府は慰安婦問題が「最終的かつ不可逆的に解決されることになった」と発表。合意のなかで少女像について「日本政府の懸念を認識し、適切な解決に努力する」とうたわれたことから、野宿を続けて撤去されないよう見張っているのだという。
2011年、元慰安婦の女性による週1度の抗議活動が千回に達したことを記念して建てられた。日本政府は「在外公館の安寧と威厳を傷つける」という理由で移設を求めているが、ソギョンさんは首を振る。日本では「反日の象徴」と見なして反発する人たちがいるが、像の正式名称は「平和の碑」だ。
「安倍政権は像に対して日本を害するもの、日本を攻撃するものだと考えていますが、そうではありません。歴史を記憶し、私たちの痛みを表現しているものなのです」
像の隣にはいすが置かれ、寄り添うように座ることで被害女性がどのような思いをしたのかを考えてもらう狙いがある。「悲しい歴史を記録し、おばあさんたちを癒やし、平和を願うための像なのです。それのどこが日本の威信をおとしめるというのでしょう。過去について心から謝罪し反省することが、どうして日本の威信を下げることになるのでしょうか」
夫妻は日本政府を批判する言葉を口にすることはない。「移設するべきだという考えがどこからくるのか、日本の皆さんに考えてほしい」と穏やかな口調で訴えるだけだ。
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