あの路地をうろついているときに夢見たことは、ほぼ叶えている [著]森永博志

[文]中森明夫  [掲載]2015年06月12日

表紙画像 著者:森永 博志  出版社:パルコ 価格:¥ 1,728

■70年代サブカルチャー青春記!

 『あの路地をうろついているときに夢見たことは、ほぼ叶えている』──なんとも長~いタイトルだ。1969年、19歳の森永博志青年はヒッチハイクで京都へ行く。途上、出逢った人々の啓示の如き言葉にめざめ、彼の1970年代は始まった。渋谷のアップルハウスに転がり込む。ビートルズ映画の上映会と過激派の集会が混在するコミューンだ。アートディレクター堀内誠一に喚ばれる。ロック新聞の取材で頭脳警察のパンタに遭う。車のCMに出る。いろんなことが次々と起こる。
 森永博志は出逢いの達人だ。新宿ゴールデン街のバーで遭ったホラ吹きおじさんと同居する。後に人気エッセイストとなる久保田二郎だ。原宿の路上をスケボーで走っている途中、出逢ったリーゼントの男と意気投合。50年代ファッションのカリスマ店長・山崎眞行だ。森永は山崎の伝記小説を書き、映画にもなった。「やるかい?」と持ちかけられたら「やります!」と即答、時代に対して体を開いている。その姿勢が、転がる石のような森永の人生を抜群に面白いものにしている。
 吉田拓郎や井上陽水らのレコード会社の雑誌『フォーライフ・マガジン』の編集長に就任。泉谷しげるとロスへ飛び、トム・ウェイツやスティービー・ワンダーと遭う。若きユーミンや矢沢永吉と語り、ラジオのDJもやる。最先端カルチャーの渦へとダイブしてゆく。これは胸躍るような70年代サブカルチャー青春記だ!
 10代の頃、私は森永博志の編集するサブカルチャー雑誌が大好きだった。本書を読んで、あの頃のワクワク感が甦ってきた。後にライターとなって、森永が編集する「月刊小説王」にコラムを寄稿。20余年後、西麻布のバーでばったり遭った森永さんにその文章の内容を指摘されて、感激した。近年では渋谷の映画館でも遭遇したなあ。また、森永さんと街でばったり遭いたい。
 街で書かれたこの本は現代の若者たちのバイブルになるだろう。「やるだけやっちまえ!」。70年代・森永青年の「あの路地」は、21世紀の若者たちのオン・ザ・ロードへと続いている!!

この記事に関する関連書籍



NHK ニッポン戦後サブカルチャー史

著者:宮沢 章夫、NHK「ニッポン戦後サブカルチャー史」制作班、宮沢 章夫、NHK「ニッポン戦後サブカルチャー史」制作班/ 出版社:NHK出版/ 価格:¥1,944/ 発売時期: 2014年10月


バンド・スコア 70年代洋楽ロック【ワイド版】

著者:岡田研二、萩野裕二/ 出版社:シンコーミュージック/ 価格:¥4,320/ 発売時期: 2014年03月


CROSS OVER(週刊朝日)バックナンバー

この記事に関する関連記事

ここに掲載されている記事や書評などの情報は、原則的に初出時のものです。

ページトップへ戻る

ブック・アサヒ・コム サイトマップ