暁星高の教室で3人がナイフ刺傷 男子生徒「からかわれた」
今年も15人の東大合格者を出すなど都内有数の男子進学校として知られる暁星高校(東京都千代田区)で17日、1年生の男子生徒2人と男性教諭の計3人がナイフで肩や胸などを切り付けられる事件があった。いずれも軽傷。警視庁麹町署は傷害容疑で同級生の男子生徒(16)を現行犯逮捕した。調べに対し「からかわれ、カッとなってやった」と供述している。加害生徒や両親は以前から学校に人間関係の悩みを相談しており、いじめが原因となった可能性がある。
都内屈指の私立名門校で、いじめが原因とみられる刺傷事件が起きた。
麹町署によると、17日午後0時5分頃、校舎3階の教室で自習中だった生徒同士がけんかになり、男子生徒が刃渡り約10センチの折り畳みナイフを出して同級生の生徒の左肩を刺し、止めに入った別の生徒(いずれも16歳)の右胸を刺したとみられる。男性教諭(49)は生徒たちがもみ合っているのを見つけて教室に入り、取り押さえる際に指を切られた。
現行犯逮捕された生徒は、ナイフについて「かばんに入れて家から持って来た」とし「同級生2人にからかわれ、カッとなってやった」と話している。
学校法人暁星学園によると、切られた3人は病院に搬送され、それぞれ4~5針を縫う軽傷。事件当時、教室内には30人ほどの生徒がおり、騒然となったという。事件について、ある生徒は「校内放送を聞いて驚きました。だいたいは普通の人なので、そういう人もいるのか、と」と話した。
一時的な感情によるものではなく、積み重なったものが事件を引き起こした可能性が高い。暁星は幼小中高一貫教育で、加害生徒の両親は中学3年時の後期から、クラスメートらとの人間関係などについて学校側に相談を持ち掛けていた。加害生徒本人が説明したケースもあった。生徒はもともと口数の少ないタイプで、学業や進路、足のけがで部活動をやめたことについても悩んでいたという。
相談を受けていた神田信之・中高副校長(51)は「学校としてできることはあった。このような事件を引き起こしたことを心苦しく思っている」と謝罪。「いじめはあったのか?」という質問に「線引きが難しいです。学校生活ではいろいろなことがあります」と言葉を濁したが、否定はしなかった。いじめを防止するための授業は以前から中高全校を対象に行ってきたという。
同校は、歴史ある名門男子校として、東大を含め、有名大学の医学部への進学率が高いことで有名。18日は予定していた中間テストを延期し、自宅学習にするとした。高1の保護者を対象にした緊急の説明会をこの日夜に開催し、18日以降も全校を対象に保護者説明会を開いていくという。
◆暁星高 学校法人暁星学園が運営する幼小中高一貫の私立男子校(幼稚園は共学)。原則として高校での募集はしない。1888年、フランスと米国から来日したカトリック・マリア会の5人の宣教師が中央区築地に設立。90年現在地へ。1951年から学校法人となり、69年に幼稚園設立。かるた部やサッカー部が盛ん。主な出身者は俳優の松本幸四郎、中村吉右衛門、香川照之、北大路欣也、デザイナーの山本耀司氏、サッカーのF東京・前田遼一ら。