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誰でもいいからなんとかしてくれ、パリ人の本音

Wedge 9月5日(月)12時30分配信

 オリンピックも終わり、今パリの話題は新学期。新学期というより新学年だ。学校に掲示が張られた学用品を買うことになる。カルターブルというカバンは40ユーロくらいなので、日本のランドセルと比較すれば安いものだ。費用は全部で200ユーロ前後だろう。つつましい。10万円のランドセルを用意する日本のジジババの話はそのうちフィガロあたりが書いて笑いものにするだろう。フランスのテレビ・新聞は新学期ネタで持ち切りだが、毎年繰り返す暇ネタでもある。

観光産業の苦難と大統領選

 本当のネタは、観光産業の苦難と来年の大統領選のことだろう。この二つは関係ないように見える。しかし。パリの多発テロとニースの暴走トラックで世界中に赤信号を送ってしまった。パリの日本人ガイドも困り切っていると聞いた。夏は日本人観光客相手のビジネスは書き入れ時だ。例年8月末は、遅出の観光客とバカンスから戻ったパリジャンが口直しに美味しいものをもとめて街に繰り出すシーズンだ。ホテルもカフェもレストランも満員になる。

 今年はといえば、有名カフェのテラス席は閑古鳥だ。デゥマゴーのテラスに座ってみたが、やはり怖い気がした。バンが止まると機関銃をもった男が飛びだすのではないかと緊張が走る。普段付き合いもあまりない友人も自慢げにパリにいるとFBで知らせると、“酔狂なことだね、テロに気を付けて。”という返答が来る。

 確率的に考えれば、パリで事件に巻き込まれることはゼロに等しいと確信し気持ちのいいテラス席に陣取る。とはいえ、動きのおかしいトラックを凝視するが、散水車だったりする。

 天気はよく、日も長い。9時でも日はある。観光客は少ないというより消えていない。そもそも、テロの前は不要不急の旅でパリに来るひとが多かったのだ。加えて、ビジネスに託つけてフランスにやってきて、おいしいワインの一つでも飲もうという魂胆のビジネスマンもいた。日本人だけではない、中国人、韓国人にもその手の輩がたくさんいた。英米人にもいた。われらも大阪出張と言われれば、京都が絡むように算段するのと同じだ。

 観光客が消えた途端、パリの人がとっても親切になった気がする。ホテル、お店、タクシー、お客のありがたさを身に染みているのだろう。もちろんテロが原因だが、いかにしてこんなことになったのだろうと自問しているように見える。

 英国も、離脱を支持した人は、ポンドの下落でこの夏ポルトガルやスペインで後悔しているに違いない。昨年より二割、ものが上がっている感覚だろう。ロンドンでは不動産屋の前で、自分のアパートの値下がりで愕然としたことであろう。投資の心得がある人も英国不動産リート投資で後悔している。それぞれがBREXITについて反芻している。一日何百億円もEUに支払っていると聞き、それをみんなに回せば幸せになると思ったのだろう。しかし、数字が違っていたと投票後に言われても困る。国民投票を悔やんでいるのだ。

 保守党のスター政治家として登場、映画にもなるノティングヒルの自宅でセレブ生活を楽しんでいた前首相に対する恨みも骨髄だ。一方、新首相は、EU離脱は表層的な事態で、深刻な問題はむしろ格差だと明言している。格差問題を生涯の課題とするようだ。

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最終更新:9月6日(火)12時43分

Wedge

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