2016-10-18
■Kindle版「よくわかる人工知能」 科学・テクノロジー分野で一位に 
お陰様で昨日発売になったKindle版「よくわかる人工知能」が「科学・テクノロジー」分野で1位になりました。お買い上げいただいた方、ありがとうございます。Kindle本全体では21位でした。
また、人工知能ジャンルだと紙の本とKindle本で1位と3位になりました。わりと珍しいことなのでこちらもありがとうございます。
この本は本当にちょっと奇妙な本です。
知に足がついた話と、数千年単位の話が両方でてきます。
いろいろな人に話を伺う中で、「ホントかよ」という内容も敢えてそのまま書いています。
しかも一番奇妙なのは、「深層学習によって進化した人工知能の与える影響は農耕革命に匹敵する」という予言が、読めば読むほど「もしかして本当にそうなっちゃうかも」と感じられてくることです。
僕にしたって最初は「そんな大げさな」と思ったものですが、本書を書くためにいろいろな人に取材を進めるうちに「これはひょっとすると本当にそういう大きな流れの中でのターニングポイントに我々はたまたま生まれてしまったのかもしれない」と感じられてきました。そういう、僕が感じた置いてけぼり感を埋めていった過程がこの本に収められていることの全てです。
人工知能の業界に飛び込んでみて感じたことは、「とにかくこの領域は面白い人が多い」ということです。そして面白いニュースがどんどん入ってくる。だからいつ人に会っても「あの論文見ました?」という会話から始まります。情報量が多すぎて最先端にいる人たちも追いかけるのがやっとというのが今の人工知能をめぐる世界です。
僕自身も長年、テクノロジー業界に居ましたが、これほどのスピードで進化する世界を経験するのは初めてです。
これほどの激しい進化を体験したことがないので、この業界の人は常にどこか興奮しています。
本書では人工知能に否定的な事を言う人はほぼ出てきません。みんながこの古くて新しいおもちゃに興奮している様子が伝わってきます。
とある場所でお会いした、品川女子学院の漆校長先生をお招きしたトークショーも大盛況のうちに終わることが出来ました。ご来場いただいた方、どうもありがとうございます。
イベントのタイムシフト試聴(無料) → http://live.nicovideo.jp/watch/lv278898731?ref=sharetw
会場では、「AI教育論」と称して僕が普段感じていること、AIを育てることの面白さ、楽しさ、ということを軸に、実際に教育者としての漆先生と議論を交わすことが出来て本当に良かったと思います。
会場では「これから子どもたちになにを勉強させるべきか」という質問を受けたのですが、結局のところ、子供が好きなことを見つけたら思い切り打ち込ませるしかない、という答えしか出てきませんでした。
これは、結局僕自身が思っていることで、やっぱり親の目線から考えて、子供によかれとおもってやったあれやこれやが本当にその人のためになっているのかというと、ありがた迷惑なことが大半です。
子供は親よりも遺伝的に優位である可能性が高い(そのために交配が行われているわけですから)ですし、適応能力が高いので、新しい道具を与えたとき、それがどんな欠陥を持つ道具であろうとたちどころに使いこなしてしまいます。
そうして我々よりも一段進んだ目線でものごとをかんがえる子どもたちに、我々のような遅れた世代がよかれと思ったことが、万が一彼ら彼女らの人生をより良い方向に導くとしても、ほとんどそれは偶然の結果に近いものになってしまうでしょう。
この傾向はAIが一般化する、あと5〜6年後にはさらに顕著になります。
最先端でAIを生業にしている我々すらキャッチアップが困難なほどの進化スピードのものが、小学校低学年でも扱うことができるようになったとき、もはやAIに関して我々親世代が子供に対して持てるアドバンテージというのは殆どありません。
その意味では、今の中高生は最も困難な時代を生きることになるかもしれません。
彼らが大学を卒業する頃にはAIが一般化し、徐々にですが世界に浸透し始めているはずです。
その頃には自動運転によるタクシーが全体の半分程度になってるかもしれませんし、半自動運転のバス(保守要員として運転手はいるが基本的には自動運転)が主流になっているかもしれません。コンビニは無人化し、ロボット化されたファーストフード店が急成長して、高校生や大学生のアルバイト先としてのコンビニやファーストフードは激減しているでしょう。
実際、冷蔵庫に入って写真を撮られて風評被害を受けるくらいならいっそ無人化したいと考えるファーストフードチェーンが出てきてもおかしくありません。そして無人のファーストフードは、有人のファーストフードよりも衛生的で、しかも美味い上に安価であることは想像に難くありません。
そもそもフランチャイズという仕組みそのものが人間のロボット化を実現するための方法論(いわば対人プログラミング手法)だったわけですから、本物のロボットが登場すればそれに取って代わられるのはある意味で必然的です。
こうした急激な生活スタイルの変化が、5〜6年後から10年ほどかけて起きていくでしょう。
そうすると、そうした激しい進化の時代に向けて今から何をしておくべきか、その答えは誰にもわからないというのが正直なところです。
対談の中でも、「向こう数十年の間、AIに絶対できないことはなんですか?」という質問をされましたが、ひとつ確実に言えるのは、とりあえず現行の延長上にあるAIが唯一確実に出来ないことは、「人生を謳歌する」ということです。
人間のように子供から大人へと成長していくプロセス、学校で友達ができたり、恋をしたり、失恋したり、喧嘩したりというプロセスを経た人格的な成長は、当分の間、AIが決して手に入れることができない主観的体験になるはずです。
そしてこうした主観的体験を通して獲得された感性そのものをAIは学ぶことができるはずですが、それは我々がフィクションの世界の映画を見て学ぶのと同じかそれ以下の認識でしかなく、主観的な体験としてAIが失恋したり憧れを抱いたりするわけではないのです。
ですからテクニックでどうにかなる話はAIの独擅場になる可能性が高く、感性で勝負する世界は人間の持つ主観的な人生経験が必要になります。
すると当面の間、人間らしい仕事として残っていきそうなのは、むしろYoutuberとかブロガーのように自分の主観的体験を表現することで他の人間の感性に訴えかける情動的な仕事です。
しかし今の段階でそうした人を養成するというのは方法論もありませんし、それで食っていける保障もない以上、あんまりすべての子供にオススメできる方法ではありません。
強いていうならば、広い視野と教養を持つことが、おそらくどんな場合でも子供の成長や将来像をもたせることが出来ます。親世代の成すべきことは、子供がいろいろな視野を持てるよう、様々な場所に連れて行ったり、様々なことを見せたりすることです。
その意味では食べ物と同じです。
子供の頃は誰でも「好き嫌いするな」と教わりますが、どうしたって好き嫌いは残ります。
嫌いだという食べ物を無理やり食べさせると子供はどんどんそれを嫌いになります。
そして「好き嫌い」があることが必ずしも悪いことばかりとも思えません。
それは生来の防衛的反応であり、ダイバシティを確保する上ではむしろ大事なことです。
博物館や美術館に連れて行ってあげて、いろいろなものを見せてあげる。その中で子供が興味を示すものにつきあってあげる。たぶんそんなことが、実際の教育には必要なことになっていくのではないかと思います。つまりより豊富な主観的体験を経験することで人間はより人間らしくなれます。
この「人間らしさ」という言葉は今後AIとの対比としてこれまでとは異なる意味を含むようになるでしょうし、「より人間らしい人間を育てるための教育」というものを急ピッチで考えていかなければなりません。
時代に適応するため、もっとも重要なのは教育システムです。
昭和52年にコンピュータ時代に対応するために数学のレベルを上げるため教育制度が改革されたそうですが、それは結果的に非人間的な詰め込み型教育を生み出しました。その結果落ちこぼれる子供がたくさん増えたため、それに対応するために生まれたのが平成3年のゆとり教育です。
そう考えると昭和52年の学習指導要領改革によって育った1976年(昭和51年)前後にうまれたいわゆるナナロク世代がITの世界で活躍しているのはむしろ必然的なことだといえます。そして今のナナロク世代の子供世代が、今の小中学生です。
AIが生活の隅々まで入り込んだ時代に適合するためには、どんな教育をするべきかということは今後も様々な場面で議論の俎上に上がっていくでしょう。
そのためには我々はできるだけ早く、AIの性質を知り、AIが決して従来の工学の枠には収まらない性質を持っているということと、AIの持つ奇妙な生物性を知る必要があります。
本書ももちろんですが、僕が思うに、まずはAIのことを知らないとその先の議論ができません。
AIに関連して建設的な議論をするためには今はどこまでわかっていて、どこからがわからないのか、でも、最終的にはどこまでできそうか、ということを最初に理解しておくことが重要です。
その意味でなにがわからないかが「よくわかる」というのが本書です。
よくわかる人工知能 最先端の人だけが知っているディープラーニングのひみつ
- 作者: 清水亮
- 出版社/メーカー: KADOKAWA / アスキー・メディアワークス
- 発売日: 2016/10/17
- メディア: Kindle版
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というわけで大盛況のうち終わったイベントですが、次回のイベントは11/1にジャーナリストの津田大介さんとゲームAI開発者で「絵でわかる人工知能」の作者、三宅陽一郎さんと三人で鼎談します。
「人工知能」は本当は何ができて、何ができないのか??今、知っておくべき人工知能の正しい知識?<申込受付中> | イベント | HIP
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絵でわかる人工知能 明日使いたくなるキーワード68 (サイエンス・アイ新書)
- 作者: 三宅陽一郎,森川幸人
- 出版社/メーカー: SBクリエイティブ
- 発売日: 2016/09/16
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今回の話とはまた違った切り口で、どんな話が飛び出すか
今から楽しみです。
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