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若者を過労自殺に追い込む「平成の悪しき産物」

深刻化する組織社会化過程の欠如

2016年10月18日(火)

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 今回は「過労死等」について書く。

 過労死等?
 そう、「等」だ。

「体が痛いです。体がつらいです。気持ちが沈みます。早く動けません。どうか助けて下さい。誰か助けて下さい」――。

 日記にこう綴ったひと月後の、2008年6月。大手飲食店勤務の26歳の女性社員は命を絶った。女性の残業は1カ月当たり100時間を超え、朝5時までの勤務が1週間続くなどしていた。

「昨日帰ってからなんか病んでもて仕事手につかんかった。家帰っても全力で仕事せないかんの辛い……でもそうせな終わらへんよな?」――。

 2011年6月。このメールを最後に、英会話学校講師の女性(22歳)は、自宅マンションから飛び降り自殺。女性は毎晩「持ち帰り残業」をし、睡眠時間は3時間の日々が続いていたと、金沢労働基準監督署は結論づけた。

「1日20時間とか会社にいるともはや何のために生きてるのか分からなくなって笑けてくるな」――。

 大手広告代理店に勤務していた24歳(当時)の女性(高橋まつりさん)が、昨年12月に投身自殺したのは、直前に残業時間が大幅に増えたのが原因だとして、労災認定されていたことが、先週、わかった。

 女性は東京大学卒業後の昨年4月入社。本採用となった10月以降、業務が増加し11月上旬にはうつ病を発症。発症前1カ月の残業時間は約105時間に達し、2カ月前の約40時間から倍増していた。

 肉体的にも精神的にも限界をとっくに超え、苦しくて苦しくて仕方がないのに、健気にがんばりつづけた末の結末が、こんな形になるだなんて。いったい、同様の悲劇が何度繰り返されれば、長時間労働はなくなるのか? 

 高橋まつりさんの母親の高橋幸美さんは記者会見で、
「労災認定されても娘は二度と戻ってこない。過労死等防止対策推進法が制定されたのに、過労死は起きた。命より大切な仕事はない」
と訴えていたけど、何度もこういった事件が大きく報道されているのに、未来ある20代の若者たちが自ら命を絶つという、いたましい事件が後を絶たない。

 奇しくもまつりさんの事件が報じられた10月7日は、「過労死白書」が、初めて公表された日だった。

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「若者を過労自殺に追い込む「平成の悪しき産物」」の著者

河合 薫

河合 薫(かわい・かおる)

健康社会学者(Ph.D.)

東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(Ph.D)。産業ストレスやポジティブ心理学など、健康生成論の視点から調査研究を進めている。働く人々のインタビューをフィールドワークとし、その数は600人に迫る。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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