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ヒトラーの生家、取り壊しへ オーストリア政府、聖地化防止で

AFP=時事 10月18日(火)6時4分配信

【AFP=時事】オーストリア政府は17日、同国北西部ブラウナウ・アム・イン(Braunau am Inn)にあるナチス・ドイツ(Nazi)の指導者アドルフ・ヒトラー(Adolf Hitler)の生家について、ネオナチ(Neo-Nazi)の聖地になるのを阻止するため、取り壊す方針を明らかにした。

【写真4枚】ヒトラー生家の前にある石碑

 ウォルフガング・ソボトカ(Wolfgang Sobotka)内相は同国日刊紙プレッセ(Presse)に対し、「ヒトラーの家は取り壊される。基礎は残るかもしれないが、新しい建物が建設され、慈善団体か地元自治体によって使用される」と説明。

「いずれにせよ、今後アドルフ・ヒトラーとの関係はなくなる。そうでなければ、生家の神話が残ってしまうからだ」と述べた。

 政府には建物を取り壊すことで、ヒトラーの生家をめぐる苦悩の日々に幕を引きたいという願いがある。

 ヒトラーは1889年4月20日、ザルツブルガー・フォアシュタット(Salzburger Vorstadt)通り15番地の交差点の角に立つこの黄色い3階建ての住宅に生まれた。この家で過ごしたのは生後5週間だけだったが、世界中のナチス共感者が集まり建物の前でヒトラー式敬礼をする場となっている。

 オーストリア政府は1970年代に建物所有者と賃貸借契約を結び、この家を障害者支援施設に作り替えたが、5年前に所有者が改装工事の許可を拒否したことから、この契約は突如として終わりを迎えた。

 所有者はさらに、内務省による買収案も拒否。政府は今年7月、国による建物の強制収容を決めた。内務省によると、強制収容法案は今週中に議会での審議が始まり、年末までに施行される可能性がある。


■「ナチス聖地」の地位に地元も反感

 建物の前には、「平和と自由、民主主義のために。ファシズムを二度と繰り返してはならない。数百万人の死者が警告する」という言葉が刻まれた石碑が立っている。

 毎年ヒトラーの誕生日には建物周辺で反ファシストの抗議行動も展開されるが、地元住民はこのような形で注目されることに憤慨すると同時に、自分たちの町がゴシック様式の建築物や美しい川のある土地としてではなく、世界で最も忌み嫌われる政治家の一人が生まれた場所として有名になっていることに失望を隠せない。

 AFPが昨年取材した地元当局者は、「ここの人々はこのような汚名を着せられるに値しない。ブラウナウの唯一の罪は、ヒトラー誕生の場となったことだ」と話していた。【翻訳編集】 AFPBB News

最終更新:10月18日(火)6時40分

AFP=時事