【ブリュッセル=森本学】欧州連合(EU)は17日、ルクセンブルクで外相理事会を開き、シリアのアサド政権と、その後ろ盾となっているロシアに対し、北部アレッポでの爆撃を早急に停止するよう求める声明をまとめた。病院や民間人への無差別な空爆や化学兵器の使用などは「戦争犯罪」にあたる可能性があるとの認識も強調。爆撃が続くようならば、アサド政権への追加制裁を検討する姿勢も明記した。
シリア情勢を巡っては、米ロ主導の停戦の枠組みが崩壊。15日に米ロなどが停戦の回復を協議したが、具体的な成果を示せなかった。その直後の開催となったEU外相理事会でもシリア情勢が主要課題になった。
シリア情勢の協議後、EUのモゲリーニ外交・安全保障上級代表は記者団に「最優先課題はアレッポを救うことだ」と強調。アレッポ爆撃を早急に停止し、市内に残された民間人への人道支援を急がなければ人道的な惨劇につながりかねないとの懸念を訴えた。
声明では理事会で事態が改善しない場合にアサド政権を支持する個人や企業への制裁を強化する姿勢も明記した。
EUはアサド政権の関係者ら200人超が欧州域内に持つ資産の凍結や渡航禁止などの個人制裁を導入し原油の禁輸、シリア中央銀行のEU域内の資産凍結なども実行中。こうした措置の拡大が検討課題となりそうだ。
一方、ロシアへの追加制裁を巡ってはEU内でも温度差が強く、声明でも言及はなかった。強硬姿勢をみせる英仏などはロシアにも制裁拡大を検討すべきだと主張。一方、ギリシャやハンガリーなどは来年1月末に期限を迎えるロシアへの本格的な経済制裁の延長にも消極的で、シリア情勢を巡る追加制裁に反対する公算が大きい。
EU内ではシリア停戦崩壊のロシアの責任を問う声が広がる一方で、シリア内戦の解決や、過激派組織「イスラム国」(IS)と戦ううえでロシアの協力が重要との見方も根強い。モゲリーニ外交・安全保障上級代表も17日、シリア情勢を巡るロシアへの追加制裁の拡大は「いかなる加盟国からも提案されていない」と語るにとどめた。