ギャラクシーノート7の問題は単純な技術的問題ではない。それはサムスンのシステムに構造的欠陥があることを雄弁に物語る事件だ。サムスンはアップルよりも先に新製品を発売しようと焦り、製品の欠陥を自ら招いた。「急げ急げ」式のやり方でつまずいた格好だ。
事後の対応も不適切だった。最初の発火論争の際にちゃんと原因を究明していれば、容易に収拾できた。しかし、何かに追われていたのか焦って結論を下したため、災いを拡大させた。これも「適当で済ませる」文化が現在の危機を招いた。
「急げ急げ」と「適当」は世界の一流企業にはそぐわない。サムスンの特技は「ファストフォロワー(素早い追随者)」という戦略だ。先発者を模倣した後、圧倒的なスピードでライバルを制圧する。そんな成功方程式が限界に直面した。「適当に」追随し、「急いで」生産するサムスン式のシステムにほころびが生じたのが今回の危機だ。
サムスンの過去20年余りはシステムの欠陥を修正するプロセスの連続だった。1993年の「新経営」は三流システムの改造が目標だった。量を放棄し、質を重視しようと取り組んだ。携帯電話の焼却処分もためらわなかった。
そうした変化を企画、指揮したのが李健熙(イ・ゴンヒ)会長だった。李会長は三流意識に浸かった社員と全身で対決した。ときには怒り、ときには激しい感情をあらわにして、「妻子を除き、全て取り換えよう」と呼びかけた。トップダウン経営だからこそサムスンの変革は可能だった。
ところが「李健熙式革新」の効果は切れてしまったようだ。新たなシステムが必要となった。それを率いるのは当然李在鎔(イ・ジェヨン)副会長だ。彼が前面に出て、システム革新の陣頭指揮を執らなければならない。