サムスン電子がスマートフォン「ギャラクシーノート7」の発火原因をバッテリー不良と結論付けたのは9月2日のことだった。サムスンの発表を見た専門家は「違うんじゃないか」と思ったという。電子部品研究院次世代電池研究センター長などを務めたパク・チョルワン博士だ。パク博士は「他の複合的原因がある」と主張したほぼ唯一の専門家だった。結局パク博士が正しく、サムスンが誤っていた。
―なぜバッテリーの問題ではないと思ったのか。
「技術的見地からの結論だった。サムスンはバッテリーの分離膜の欠陥で陰極と陽極が触れたためと発表した。しかし、その程度の欠陥ならばバッテリー工場で把握できる。後工程でのチェックで出荷されなかったはずだ」
―サムスンはなぜ失敗を犯したのか。
「問題を軽視し過ぎたようだ。発火問題は困難な事件だ。バッテリーが燃えてしまえば証拠も残っておらず、原因究明は容易ではない。それでもサムスンはわずか9日で原因が判明したと説明した。なぜそんなに焦るのか分からなかった」
サムスンにはパク博士と比べてもそうそうたる一流の専門家が数多くいる。多くの技術者がなぜミスを犯したのか。外部のパク博士でさせ疑問視したのに、サムスンはなぜ見抜けなかったのか。
原因は2つのうちの1つだろう。まず、サムスンの専門家の実力が劣っていた可能性だ。まさかサムスンが全世界から集めた最高級の人材にそんなはずがあろうか。
そして、内部に異なる意見があったが黙殺された可能性だ。あるいは組織の雰囲気が影響し、技術者が少数意見を出すことをためらったのかもしれない。それが事実ならばさらに事態は深刻だ。サムスンの軍隊式文化は何も変わっていないということではないか。