酒泉衛星発射センター=益満雄一郎
2016年10月17日12時35分
【酒泉衛星発射センター=益満雄一郎】 中国の有人宇宙船が17日朝、中国としては最も長い1カ月余りの宇宙飛行をめざして飛び立った。中国が急ピッチで宇宙開発を進めた結果、宇宙の「2強」である米ロの背中が見えるまでになった。宇宙開発に力を入れるのは、単独で宇宙ステーションを運用できる高度な技術力を身につければ、安全保障面でも優位に立てるとの戦略がある。
中国は1990年代から宇宙開発を本格化。2003年に初の有人宇宙飛行に成功した。それから13年で、1カ月余り飛行士が宇宙に滞在できるレベルの実力をつけたことになる。
宇宙ステーションの建設・運用には、宇宙船同士のドッキングなどの高度な技術が欠かせない。今回、有人宇宙船「神舟11号」とドッキングする実験室「天宮2号」は地上から400キロ弱の軌道にあるが、この高さは宇宙ステーションの想定高度と同じだ。今回の打ち上げは、宇宙ステーションの建設に向けた「予行演習」といえる。
米ロ日が参加する国際宇宙ステーション(ISS)は2024年までの運用継続が決まっているが、それ以降は未定。中国の宇宙ステーションが22年に予定どおり完成すれば、24年以降は中国が世界で唯一、宇宙ステーションを展開する国となる可能性もある。
一方、中国の宇宙開発には、軍事転用されると不安視する見方も根強い。ロケットや宇宙船の誘導技術は弾道ミサイルなどの開発にも生かせる。中国には、こうした先端技術を自国の安全保障面でも利用しようとの狙いもあるとみられる。いま世界の軍事・経済活動は、GPS(全地球測位システム)など宇宙空間を利用した技術が欠かせなくなっており、ますます依存度が高まっている。習近平(シーチンピン)国家主席が「宇宙強国」を目指すよう指示を出したのはこうした背景がある。
中国は宇宙開発だけでなく、北極や南極、深海、サイバー空間の研究開発にも力を注いでいる。「グローバルコモンズ(国際公共財)」と呼ばれる領域だが、こうした分野で実力を蓄えることは、将来の軍事、経済面で優位に立つためにも欠かせないとの戦略的意味があるとみられる。(酒泉衛星発射センター=益満雄一郎)
◇
■中国の宇宙開発の主な動き
【2003年】
飛行士が宇宙船「神舟5号」で中国初の宇宙飛行に成功
【12年】
「神舟9号」が軌道上の宇宙実験室「天宮1号」と有人ドッキング、3人が10日間滞在
【13年】
無人月探査機「嫦娥(じょうが)3号」が月面に着陸
【16年】
「天宮2号」と「神舟11号」を打ち上げ。30日間の実験予定
【17年】
無人補給船「天舟1号」を打ち上げ、天宮2号に燃料供給
【18年ごろ】
宇宙ステーションの本格的な建設開始
【22年】
宇宙ステーションが完成
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