January 2006

January 24, 2006

be anxious for...(フィンフェイ)



ゆ び さ き に キ ス を 。








既視感がひどいのでどうにもきもちわるい。
白昼夢を見ている気分だと思ってフェイタンは口の中に残ったパンの味を水で飲み下した。気持ち悪い。
(とんだ朝食ね)
部屋の中が雑然と散らかっていてでもそんなにひどい割合ではない、あくまで雑と。そこでまたひどい既視感。夢の中かいつかの昔か、自分は雑然とした部屋を見回していた。水道水の入ったグラスを中途半端に持ち余しながら。



何かが欠けているような気がしてどうにも気持ち悪かったので、朝食のやり直しをしよう、と思う。
パンと水だけで一日が始まるとは思わない。(とんだ朝食ね)既視感が気持ち悪いなら塗り替えればいいのでは?
台所に立って玉子を炒る。スクランブルエッグ。ハムを焼く。コーヒーメーカーを洗ってドトールで買ってきた粉を入れてスイッチを入れる。きちんと作動する音。トーストが焼きあがる凛としてうつくしい音。マーマレードのジャム。マーガリンじゃなくバター。
冷蔵庫の隅でねむっていたレタスの透き通るみたいなみどりいろ。紫色のたまねぎの薄切りとピーマンのグリーン。(トマトはきらいだから買っていない。)
ドレッシングを作って全てを皿に盛ってちいさなテーブルに並べると、やっとまともに朝が来た気がした。
食べないときは一日だって食べないけれど、食べるときはたくさん食べる。
自分の悪い性格だ、とフィンクスは怒る。
暇だけれども、テレビはつけない。ラジオもロックも、クラシックも要らない。

静寂の欲求を満たす、朝だけでいい。




天気が悪かったので掃除をはじめる。
粘着シートがついているコロコロローラー(何てかわいらしい名前だろう)でベッドの下を探ってみたら一週間前に失くしたはずのメンソレータムのリップクリームと、それからゆびが見つかった。薬指だ。
(フランクリンはワタシの部屋に来るといつも酒を飲んでぐでんぐでんに寝るの、メイワクよ)
髪が落ちてきて気持ち悪かったので適当に結った。
窓の外がどうなっているかなんて知りたくはなかった。
たぶん、雪か雨か曇りか、そんなところだろう。遮光カーテンを閉めているとはいえ外はとても暗い、あまりにもくらい。

「こんな日は、拷問ね」

独り言を言うと言葉がすっと胃の中に落ちて、溶解して、自分の中に吸収されてゆくような気がした。
消化だ、天気がわるい日に思う。既視感はもう感じなかったので携帯電話を手にとる。薬指で呼び出すメモリー。呼び出し音。それから、




・:*:・・:*:・
こんな生活臭ただようフェイタンやだぁぁぁぁ
しかもフィンフェイじゃないなコレ。

xxx0802 at 17:19|PermalinkComments(0)TrackBack(0)フィンフェイ 

January 07, 2006

...blame him for his hair...(フィンフェイ)

明白だった。
どこまでも明白に、明確に、そしてさしたる理由もなく俺はよく切れる銀色の金属を探して上機嫌で街を彷徨っていた。
抱えているものといえば劣情だけで、そして俺は少し自分の想像に酔っていたのだった。
頭の中に無機質な音量で響き渡っているのはアシンメトリの警鐘だ。
それがどんな音で鳴るのか、どれほど美しく崇高で数奇にして獰猛なものなのか、俺はきっと奴に教えてやりたかったのだと思う。乾いた風が横切る。くすんだ日差しが行く道を示唆している。そうだ全ては明白だった。俺は少しわらってまた鈍色を探し始める。とびきり艶めいていてよく切れる奴がいい。そうでないとそぐわない。

ああ あのうつくしい、漆黒。


久しぶりに見かけたフェイタンがあまり変わっていないように見えたのは、冬特有の埃っぽい冷気の所為だと思っていた。

何しろフェイタンという男は春夏秋冬で言えば(それは酷く妄想染みた考え方なんだが)冬の雰囲気を体中から醸していたし、雪ではなく、曇った冬の日のくすんだ陽の下にいるフェイタンはぴったりとその風景に当て嵌まっていた。春も夏も秋も奴には似合わなかった。フェイタンは冬の晴天の中にいる時、群を抜いて完璧だった。完璧に合致していた。
要するに、しばらくぶりに見たフェイタンは微塵の差異もなくフェイタンそのものだったのだ。吐き気がするくらいに。

色褪せて朽ちかけた赤い欄干にもたれて目深にかけた前髪一筋で気配を消してる、(この俺と違い)きっちりと着たコートだかマントだかからの肌の露出は全くというくらいになく、それが却って劣情を呼び覚ますってことくらいなんで奴は気付かないのだろうか。
すました小奇麗な細面は前髪と、正午すぎの光の逆光の所為でよく見えなかったが、奴の表情なんてどうせ容易く想像がつく。
それに奴がフェイタンだということは、ちょっと離れていたくらいで忘れるわけもない、そのうざったらしい髪の御蔭で一発でわかった。手にとると大した抵抗もなく零れ落ちてゆく、仲間の内の誰それがいくら邪魔だと言っても切ろうとしないその理由 なんて知ったことではなかったが、俺はわりかしその髪が好きだった。
それは劣情であって愛情ではなかった。…まあどっちも似たようなもんか。

俺は飽きもせずにフェイタンを眺めていた、
その間にもフェイタンは、やっぱりぴんと背筋を張って座っている。…(寝てるんじゃないか?)

ところで、フェイタンの外見の中で一番気に入っているのは、何と言ってもあの長ったらしい髪だ。
奴の顔のつくりの端整さは内面の頑固さや生真面目さを象徴していたのであまり気に食わなかったし、時に女のようだと評されていたそのお奇麗で繊細な顔のパーツも実際美人の女と比べたら明らかに見劣りするに決まっている。
その程度の平均的な端麗さに比べて、あの髪はひどく美しかった。女と比べても遜色ない。
たとえば戦場で、凄惨で陰鬱で悲惨な俺たちのあの戦場に於いて、乾いてこびりついた血や人か獣か判別つかなくなった死体の山やあちらこちらに上がる火の手、その中でフェイタンが絶大な存在感を誇っていたのも高く結った髪によるところが大きい。
天人を斬ることに疲れてまわりをふと見渡した時、いつもまっさきに目につくのは奴だった。
冬の乾燥した風に髪が靡いていた。溶けるような夕陽をうけて橙色を反射していた。――或いは舞っていた。闇の中で艶めいていた。返り血を浴びて赤く染まっていた。
俺は戦場で、屯所で、ただの道端で奴の髪を見、奴を見ていた。いつも。

そして夢想した。黒い髪が畳の上に散らばるところと、左右対称に正しい直線を描いている長髪が不ぞろいにばらばらと落ちてゆくところを想像して、(淫乱じゃねえか、まるで)、、その光景は実に卑猥めいていると一人わらった。
それを実行に移したいという衝動は戦場でも屯所でもただの道端でも褪せるほどに繰り返されくり返されたが、しかし実行に移さなかった理由は何てことはない、戦場で奴の生存を確認するのにそれがなかったら不便だからだ。
しかし再会した今でもフェイタンはそのままで美しい髪を持っていてああ、そうだ今なら

頭ン中では既に具体的イメージが形になってる、甘美なるアシンメトリ、その音が響く。
相変わらず何を考えているのかてんで分からぬ生真面目な顔で橋げたに座り続けるフェイタンはやっぱり全く姿勢が変わっていなかった。

――明白だった。
どこまでも明白に、明確に、そしてさしたる理由もなく俺はよく切れる銀色の金属を探して上機嫌で江戸を彷徨っていた。
抱えているものといえば劣情だけで、そして俺は少し自分の想像に酔っていたのだった。
頭の中に無機質な音量で響き渡っているのはアシンメトリの警鐘だ。
それがどんな音で鳴るのか、どれほど美しく崇高で数奇にして獰猛なものなのか、俺はきっと奴に教えてやりたかったのだと思う。乾いた風が横切る。くすんだ日差しが行く道を示唆している。そうだ全ては明白だった。俺は少しわらってまた鈍色を探し始める。とびきり艶めいていてよく切れる奴がいい。そうでないとそぐわない。

祭の前の前祝、繰り返す甘美なるアシンメトリ、その音が響く。
俺は舌なめずりをしてチェシャ猫みたいに笑いながらその瞬間を待ち侘び――
(冬のにおいは好きな方だと俺は思って、思いながら)(掴んで引きずり倒してあの漆黒を、)



じ ゃ き ん






・:*:・(*・:*:・
たいそう久々の更新ですみませぬ。
フィンクスがいと変態くさくなった・・・!(笑)

xxx0802 at 22:29|PermalinkComments(0)TrackBack(0)フィンフェイ