62年前の映像を甦らせた （前）　「七人の侍」4Kレストアは、ひたむきな映画愛の"賜"だった

　現在「午前十時の映画祭」で公開中の「七人の侍」が大人気だ。東京・新宿のTOHOシネマズ新宿では、8日からの3連休のチケットが予約完売し、公開直後の10月8日〜9日で4,212人を動員したそうだ。

　もちろんそれだけの名作であることは間違いないが、加えて今回はきわめてていねいにレストアされた4K上映ということも人気の要因だろう。StereoSound ONLINEでも事前に開催された試写会にお邪魔し、堀切日出晴さんによる熱烈なインプレッションを紹介している。

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　そしてこの記事でも予告していた通り、「七人の侍」の4Kレストアを手がけた東京現像所を堀切さんが訪問、現場の皆さんに詳しい修復の内容をうかがった。（月刊HiVi編集部・泉）

堀切　今日はよろしくお願いいたします。こちらにお邪魔するのは2014年末の「ゴジラ」の4Kレストアのインタビュー以来ですが、今回の「七人の侍」はそれにも増して、素晴らしい仕上がりでした。

淸水　ありがとうございます。先日の試写会の記事も、とても嬉しく拝見しました。今日はなんでもお答えできるようスタッフを揃えましたので、どんどん質問してください。

　まずメンバーを紹介しますと、私、淸水が全体のマネージャーを担当しており、小森がコーディネーターです。それからフィルムインスペクション（フィルム検査）が出利葉（いでりは）、スキャニングが三木、レストアが加藤、グレーディングは馬淵、音声レストアを石井が担当しました。

堀切　ちょうど7名の皆さんがキーとなる工程を担当されたわけですね。まさに「七人の侍」だ。

淸水　そうなんですよ、おわかりいただけましたか（笑）。

堀切　清水さん、狙っていましたね（笑）。

　それはさておき、以前の「ゴジラ」第一作のデジタルリマスター作業以降、東京現像所さんで手がけたという4K作品を多く見かけるようになりました。

淸水　ありがとうございます。弊社はもともと現像所で、アナログ・デジタル両方の機能を集約している点をコンテンツホルダーさんにもご理解いただいています。それもあってデジタルリマスターのお仕事も増えてきました。

　最近では「キングコング対ゴジラ」「生きる」「浮雲」といった作品の4Kスキャン・4Kレストアも手がけております。またフィルム製作アニメのレストアも増えてきています。

堀切　「七人の侍」のレストアは、午前十時の映画祭事務局からの依頼だったんですか？

淸水　そうです。以前から手掛けたい作品ではあったのですが、今回やっと4Kでのリマスター作業が実現しました。

堀切　午前十時の映画祭で「生きる」の4K上映も拝見しましたが、映像とサウンドの存在感に圧倒されました。「七人の侍」もそうですが、修復精度の高さに驚きました。

　まず今回の「七人の侍」ですが、フィルムは何を使ったんでしょうか？

淸水　「七人の侍」については、オリジナルネガが行方不明だったので、まずそれを探すところから始めました。あちこちの倉庫にも出かけて探したんですが、残念ながら見つけることがでませんでした。そこで、現存するフィルムの中から一番画質のいい物を選ぼうということになりました。

小森　去年の5月末のことです。フィルムについてはとにかく全部出してくださいとお願いして、出利葉の所に届けてもらいました。

出利葉　「七人の侍」のオリジナルネガは、可燃性のナイトレートフィルムであった可能性が高く、残念ながら今回は見つけることが出来ませんでした。そこで残された素材のなかで、どれがよりオリジナルネガに近いかを探っていくために、現存する素材をすべて出してもらったんです。

　マスターポジ、デュープネガ、短縮版のマスターポジとデュープネガ、VTR用ポジで、合計170缶くらいありました。音ネガも3種類あったので、それを入れると200缶ほどになります。

堀切　170缶！ 最初に届いたときは驚いたでしょう。

出利葉　唖然としました（笑）。それプラス、上映用プリントも5本お借りしていたんです。

堀切　上映用プリントも使ったんですか？

淸水　いえ、これは別の目的です。というのも、フィルムの中でどれがオリジナルに近いかということについて、「ゴジラ」の時にひじょうに悩みました。

堀切　確かに、そうおっしゃっていました。

淸水　普通はオリジナルネガからマスターポジを作って、そこからデュープネガという流れになるんですが、「ゴジラ」のマスターポジはデュープネガから作られていたので、デュープネガの方が原版に近かったんです。

　そういった事もありましたので、プリントを取り寄せて、そのプリントがいつ作られた物かがわかれば、逆にどの素材から作られたのかという年代も分かるだろうと考えました。