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 ▽23日・宇治の2合唱団 海外の紛争に思いはせ

 君死にたまふことなかれ――。戦争をテーマにした合唱団の演奏会が23日に宇治市で開かれる。〈いつまでたっても戦うことが好きやなあ。人間っておろかやなあ〉。指揮者の女性の、やりきれない思いが込められている。

 平均年齢が70代後半という宇治シルバー合唱団「炎」と、女声コーラス「しあわせ」の合同演奏会。「君死にたまふことなかれ」は、与謝野晶子の詩に、作曲家の石若雅弥さんが曲をつけたものだ。

 このテーマは、両合唱団を指揮する下城衣子さん(67)=宇治市=が思い立った。2年ほど前、テレビのドキュメント番組で、イスラム過激派ボコ・ハラムがナイジェリアの女子学生200人以上を誘拐したことや、過激派組織「イスラム国」(IS)の現状などを相次いで見たのがきっかけだった。

 日本は平和でも、まだまだ世界には戦争がある。そんな思いでいた時に、石若さんの「君死にたまふことなかれ」の曲を知った。「今度の演奏会はこれや」と思った。偶然、石若さんに初めて会う機会があり、協力をお願いした。

 「炎」の男性メンバーの中で最年長の小林博さん(85)=同=に、戦争体験を書いてもらうように頼んだ。太平洋戦争中から長野市で暮らしていた小林さんは、1945年8月13日、47人が犠牲になった長野空襲に遭遇した。

 空襲体験から始まり、日本国憲法制定への動き、進駐軍が開いた「フォークダンスの夕べ」……。演奏会では、小林さんの語りに、「りんごの唄」や「おおスザンナ」「長崎の鐘」といった曲をまじえる。「下城さんの選んだ曲につながるよう、物語を一生懸命に考えました」と小林さん。

 ほかに、谷川俊太郎作詞、武満徹作曲の「死んだ男の残したものは」や、「幼い日の友に」「365日の紙飛行機」などが披露される。下城さんの依頼を快諾した石若さんが練習の指導を引き受け、演奏会当日も客演指揮を務める。

 下城さんは「平和な日本からは見えない場所で、戦いがあり、罪のない人の命が失われていく。そのことに思いをはせてもらえたら」と話す。

 合同演奏会は23日午後1時半、宇治市折居台1丁目の市文化センター大ホール。入場無料。