4月の熊本地震で、短文投稿サイト「ツイッター」を使った熊本市の大西一史市長の情報発信が注目されている。市民に被災現場の情報を送るよう積極的に求め、その後の市の対応に役立てた。首長による災害時のツイッター活用について、大西氏は「速達性や拡散性があり、意義は大きい」と話す。地震発生から半年になるのに合わせて毎日新聞がインタビューした。
大西氏は熊本県議時代の2009年にツイッターを始めたが、その「発信力」に気付いたのは昨年8月の花火大会。雨で開催の可否を知りたい市民らによるアクセスが市のホームページに殺到し、サーバーがダウンしてしまった。そこで自らのツイッターで延期を告知したところ、爆発的にリツイート(拡散)された。
熊本地震が発生すると、大西氏は積極的にツイッターを活用した。水道の漏水について現場写真や住所の提供を求めたところ、多くの情報が寄せられ、漏水箇所の早急な特定につなげた。災害ごみ収集についてもこのやり方で、作業が遅れている地域を把握して対応していった。
デマ情報の打ち消しにも利用。地震発生後に「(熊本の)動物園からライオンが放たれた」とデマが流された際は、動物園の管理者として「市が発信する情報は市のホームページ以外にはない」とツイートした。
ツイッターを使った情報発信について、大西氏は「地震発生直後は、スマートフォンを握りしめながら災害指揮をしていた。市の広報課は役所としての手続きなどで時間がかかる。急ぐ場合は私の責任でつぶやける」と有効性を強調する。長野県佐久市の柳田清二市長も14年2月、雪害で除雪が必要な場所の情報提供をツイッターを使って市民に求めた。
全国の首長に対し、大西氏はふだんからの情報発信を勧める。「災害直後に突然、ツイッターをやろうと思っても難しい。使い方に慣れた職員と一緒に始めることも一つの手だと思う」と語る。
大西氏のつぶやきを継続的によむフォロワーは若者を中心に約8万人。この数の多さが発信力の強さにつながる。ふだんは政治や行政などの堅い話題でなく、朝に目覚めて最初に聴いた音楽の話など身の回りのことをつぶやく。この「ゆるさ」が人気を呼んでいる。大西氏は「何気ない日常を伝え続けることで、いろんな人とのつながりができるようになる」とアドバイスする。【吉川雄策】