野生のゴリラについて話す京都大の山極学長=2016年10月15日、宮川佐知子撮影
アフリカの自然や文化をテーマにした講演会が15日、京都大学(京都市左京区)で開かれた。日本学術会議近畿地区会議が主催し一般市民ら約100人が集まった。ゴリラ研究で知られる京都大の山極寿一学長らがアフリカでのフィールド調査で多くのことが分かったとしてアフリカの多様性と素晴らしさ、研究の奥深さなどの魅力を語った。
山極学長は、雄が胸をたたく「ドラミング」という動作の観察などを通じて、かつて暴力的と思われてきた野生のゴリラが雄同士の争いを避け、平和な生活を送っていることがアフリカでの現地研究で分かったと紹介。勝ち負けを明確にして秩序を保つニホンザルの社会との違いを指摘した。
山極学長は、一方、人間の社会では言語の発達や、食料生産が始まって以降の定住生活によって「境界」が現れ、他の霊長類には見られない共同体への強い帰属心などを発達させ集団間の暴力を激化させてきたと分析。最近はインターネットの普及で人間を取り巻く環境はまたもや変わりつつある、として「今までにないアイデンティティー(帰属意識)を作り出す必要がある」と指摘した。
大阪市立大学大学院理学研究科の幸田正典教授は、タンザニアの西にあるタンガニーカ湖での現地研究を紹介。独自に進化してきた魚類を研究した結果、一般的に魚は脳が小さく認知能力が低いといわれるのに、同湖で見つけた「プルチャー」という種が、顔付近の模様で仲間を認識していることを発見。「アフリカの魚は動物の社会、知性の進化の理解についてヒントをくれる」と話した。
【宮川佐知子】