東京五輪のボート・カヌー会場の開催場所に関連して、宮城県の村井知事と東京都の小池知事が、こぞって口にした言葉、「できない理由よりもやれる方法を考えるべき」。
それぞれの考え方や行動の仕方をポジティブに示すとともに、会場変更に後ろ向きな大会組織委員会を遠まわしに批判していました。
言葉自体はいたって正論
この言葉、いたって正論です。
「どうすれば、できるのか」を考えることが大切なのは、言うまでもありません。
これをやらないことには、何事も前に進みませんから。
一方、一度「やる」と決めたことなのに、後になって「できない理由」探しだけをやるのはNGです。これは「やりたくない」から「潰し」にかかっているわけですから。
できない理由は後ろ向き?
ところで、「できない理由」を上げることは、後ろ向きなのか?と問われると、必ずしもそうではないと思うのです。
特に、大枠での意思決定をする際、何が問題で、どんなリスクがあるかを洗い出す必要があります。
そして、それを解決するには、どんな方法があるかを考えることは大切です。
これらが分からないまま事を始めると、様々な問題が多発して、現場がシッチャカメッチャカになるわけです。
予期できる事態を予期せぬまま突っ走った結果と言えるでしょう。
こういった現場の混乱は、「考える人」と「実行する人」が別のときに、頻繁に起きることなんですが・・・。
高圧的な上司の思いつき
かなり前の話になりますが、世の中の常識といったものが、なかなか通じない上司の下で仕事をしたことがあります。
この上司は、常日頃から、突拍子もないことを思いついては、「今、やれ!」「すぐ、やれ!」と言いだす人でした。
とても高圧的で、自分の言に対して有無を言わさせないタイプです。
その思いつきは、本当にやるべき価値があるものもあれば、全く意味がないこともあって、部下は毎日、振り回されていました。
そして、中には非常識な命令もあったのです。
できない理由よりもやれる方法を考えろ
この上司から2回、「できない理由は聞きたくない。やれる方法を考えろ」と言われたことがあります。
1つ目は、会社のルール違反を指示されたとき。
そして、もう1つは、法律違反を指示されたとき。
多少のワガママであれば、「面倒くさいなぁ」と思いつつも、言われたことを実現するようにしていましたが、さすがにルール違反・法律違反は、「承知しました」とは言えません。
「法律はこうで・・・」、「会社の規則がこうで・・・」と説明するのですが、聞く耳持たず。その際に「できない理由は聞きたくない。やれる方法を考えろ」と言われたのですね。
これに対してどうしたかと言うと・・・。
言った本人も、半ば意地になっているわけですから、そのまま話を続けたところで、何の進展もありません。
それどころか、高圧的に「俺の言うことが聞けんのか!」と怒鳴られるのがオチ。
ですから、「分かりました。検討します」と一旦、その場から引き上げるのです。
そして、後日、上司の機嫌の良いときに、
「あれから色々と検討し、社内のしかるべき部署にも相談したのですが、どうしても難しいとの結論となりました。ただ、代替案として○○というのがありまして、これなら出来ます」
と持っていくのです。
すると、「おぅ、それで行こう」となるのです。
時間差攻撃とメンツを潰さない程度の代替案の提示は、わがままな上司対応の王道です(笑)。
結果的には、「どうすればやれるのか」を考えたことになりますが・・・、ホント、疲れましたね。
おわりに
「できない理由よりもやれる方法を考えるべき」は正論です。
でも、できない理由が明らかでないと、できることとできないことの区別がつきませんし、何をどうすべきか考えるきっかけを失うことにもなりかねません。
そして、この正論を言われた方は、まさに面と向かって批判されるわけですから、精神衛生上、よろしくないのです。
ということで、自分自身やチームのメンバーを鼓舞するときは使っても良いですが、個人に対して直接発するのは控えたほうが良い言葉だと言えるでしょう。
では、また。
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