鎌倉投信セミプロ向けセミナーレポート (速報版)「運用会社としての鎌倉投信」 ― 2012年09月16日
セミプロ向けセミナーを開催する理由
一般の方向けに専門用語を使って説明しても理解してもらえない。
自分たちの商品性をいかにわかりやすく説明するか?という事に注力してきた。
2年半やってきて専門用語を使っても理解してもらえる人がいるのではないか?という感覚になり、テストケースとしての開催となる。
これから、トライ&エラーを繰り返しながら初心者以外でもっと詳細に知りたい人を対象とした情報開示について検討していきたい。
鎌倉投信の社屋はなぜ古民家か?
日本の社会問題を解決する会社に投資するという哲学をうたう以上、自らも当事者になる必要があると考えた。その回答がこの古民家。
古民家再生からスタートして、裏山の間伐などの管理のほか、畑をやったり規模は小さいが自分たちも当事者としてやることが大切。
東日本大震災の時、皆さん心配して電話をいただいたが社員ではなく古民家は大丈夫ですか?という声だった(笑)古民家は免震構造になっていて土台の上に乗っかっているだけ。ひどい揺れの時は土台から落ちるだけですむ。倒壊するということはない。
また、万が一の場合でもバックアップサイトを横浜に用意している。(こちらはちゃんとしたビル。古民家ではありません。)
日本株に対する仮説
『社会的問題を解決しない限り、日本株の長期的な上昇はない』
問いかけ:日本株にベータは存在するのか?
1989年から長く株価は停滞しておりモダンポートフォリオ理論で日本市場は説明できないというのが学者の意見。
(余談)
新井さんは病気で前職を辞めた際、日本株におけるモダンポートフォリオ理論で説明できないことに対する自分なりの解を証明付ける研究をしようとしたそうです。しかし、自分は運用者であり当事者であるという事に気づき、運用者として現場に復帰することになりました。
日本株はリスクの割にリターンが期待できない低成長市場ではないのか?
日本の製造業の特徴として時価総額の大きな会社群は世界シェアが少なく、時価総額の小さな企業群に世界シェアが高い企業が存在する。グローバルニッチなマーケットにおいてトップシェアをとる小さな会社が多い。
ここに日本株が長期的に上昇できず割安に放置されている原因があるのではないか?
低成長市場(国)への投資手法
□ ニッチなイノベーション
□ 物・サービス飽和時代のビジネス→共感型ビジネス
□ 社会的問題解決型ビジネス
□ 集中投資
市場に対する仮設
『市場は基本的に効率的である。ただし、例外的に小さなアノマリーは存在する。しかし、アノマリーも安定的ではない。』
アノマリーは常に存在するが、常に変化している。企業が時代の流れについていけないと衰退していくのと同様に投資手法についても時代に合わせて変化させる必要がある。
市場のアノマリー例
・前日の海外市場と同じ動きをする
・市場は情報に過剰反応する
・主な市場参加者は市場ごとに異なる(東証一部:機関投資家 新興市場:個人投資家)
インデックス・アクティブ運用について
『対インデックスでアクティブマネージャーの負ける可能性は高い』
(が、ゼロではない)
鎌倉投信ではインデックスについていかない方法論を考えた。
・TOPIX以外に投資する
・タイミングを分散する
・キャッシュを一つの資産として保有する
個人投資家の特徴と鎌倉投信のアプローチ
□ 過去の失敗体験に引きずられる → 低いボラティリティ
□ 下方リスクへの低い許容度 → 安定的なリターン
□ 知識レベルに大きなばらつき → シンプルな商品(ロングオンリー)
□ 市場が下がった時に売却する習性 → 投資先を応援する仕組みづくり
補足)
市場が下がった時に売却する習性に対する対策としていい会社の社長の話などを紹介することで、株価が下がった時でもいい会社だから持ち続けて応援しよう、もしくは今こそ応援しようというモチベーションにしてしまおうという仕組みがユニークだと思いました。
甘い(きれいな)言葉とも一部で言われる言葉で話しているのは投資初心者にもわかりやすい言葉で説明しようとした結果であり、その裏にはしっかりとした哲学が隠されていました。
エモーショナルな説明とも言われますが、これはアップルが新製品発表でスペックを自慢げに発表するのではなく、これを買うとライフスタイルがこんな風に変わるんだ!という形でプレゼンしていたアプローチに近いのかなと自分は感じています。
アート :企業調査、情報開示
サイエンス:投資(組入)判断、運用
意識的にこのようにしているように見えます。
運用者の特性
・ファンドマネージャーのサラリーマン化
→ インデックスの呪縛からの解放、新規上場銘柄や直近業績の悪い銘柄をあえて保有
・ファンドマネージャーとアロケーションマネージャーの分断
→ キャッシュマネージ
・ファンドマネージャーとポートフォリオマネージャーの統合
→ 銘柄選択(FM)とリスク管理(PM)のバランス
・第三者機関への依存(BARRA、SRI)
→ FMが直接訪問することによる主体的な調査体制
補足)
銘柄選択をするファンドマネージャーは常に買いたい株があり、アロケーションマネージャーはリスクを抑えるために向いている方向が違う。最近ではファンドマネージャーがリスク管理をするポートフォリオマネージャーを兼任にする傾向があるが、そうするとリスク管理が疎かになる。
さわかみ投信がアセットアロケーションをしっかりやるといいながらもなかなかうまくいかないのはこのあたりに問題があるのではないか?と自分は感じました。
鎌倉投信の目指す運用
『企業業績に長期的に追随したパフォーマンスを残す』
どうしたらよいか?
・インデックスの説明力を下げる(投資先市場、業績、本社所在地などの分散)
・リスクを抑える努力をし続ける
補足)
ウォーレン・バフェットはバークシャー・ハザウェイの価値を投資先企業の純資産価値で表現していますが、鎌倉投信の場合も投資先企業の純資産に自己資本比率をかけたものに配当再投資分を調整したもので企業業績の指数を独自算出しています。
そちらは設定来でほぼ右肩上がりに+12%程度の成長をしており、長期的には株価が企業価値に収斂していくという仮説にたつと、結い2101の基準価額もそちらに近づくと考えられます。
インデックスを横目に見ながら運用するのではなく、本当の意味でのベンチマークは投資先企業の企業価値を指数化したものという事がわかりました。新井さんもそこと比較して基準価額が低いのは自分の運用の至らなさのせいで申し訳ないが、できるだけ近づけるように努力していると話していました。
キャッシュについて
キャッシュは一資産として扱うもの
どのように比率を決めるか?
→取っている流動性リスクへの対応(解約対応など)
→リスクを上限(10%)以下に抑える
→ショートフォールリスクへの対応
キャッシュ40%だと株が30%下がった場合に感応度が50%程度
結い2101の運用について
・投資先の企業を等配分で保有
・等配分からはみ出た分を機械的に売買ではなく、売却時に利益が出るような価格で購入するような
モデルがある。クオンツ運用。(このモデルが肝)
・運用モデルは新井さん以外でもメンテナンスができるようにしている。
・300億円までは現在のモデルで対応可能
・取るリスクと取らないリスクをはっきりさせること
取るリスク 株式の本源的価値、投資先の企業規模の小ささ、流動性
取らないリスク 市場予測、株価予測、銘柄や業種ウェイト、投資タイミング、積極的TAA
直販のメリットを生かす
・入出金を把握できるため、それを前提にリバランスできる
・流動性リスクを取る
運用と経営
『運用と経営は分離すべき』
自身も役員ではあるが、経営にはあまり関与しない。
経営を意識してしまうと運用が曲がってしまうことがある。
そういう意味で運用者として鎌田社長からは独立している意識を持っている。
運用会社は上場しない方がいい。
補足)
経営と運用が独立しているというのは大事だと思います。経営サイドはこういった金融ベンチャーで大変だと思いますが、あくまでも運用サイドは自らの投資哲学を愚直に続けるのが仕事です。こういった言葉をはっきり聞けたのは良かったです。鎌田さんは大変だと思いますが・・・。
コメント
_ fukuri ― 2012年09月16日 14:51
_ タカちゃん ― 2012年09月16日 19:00
出たかったなぁ・・・
_ サトリエ ― 2012年09月16日 23:07
専門用語はまったくわかりませんでしたが^^;
それでも、しっかりとまとめてくださったおかげで話の流れを追うことができました。
詳細も楽しみにしています!
_ ちんあお ― 2012年09月17日 05:35
セミナーになかなか参加できない身としてはこういった記事は本当にありがたい!
詳細版も期待しています!!
_ m@ ― 2012年09月17日 11:13
藤野さんが鎌倉投信を銀河鉄道999(外はクラシック、中はハイテク)と表現してましたが、まさにそのとおりだと思います。面白いですよね。
>タカちゃん さん
タカちゃんさんが好きそうな話がいっぱいありました。
次回は参加されるときっと満足されると思います。
>サトリエ さん
ありがとうございます。
先ほどテレビで酒蔵の話を見ていたのですが、蔵元と杜氏さんの関係が鎌田さんと新井さんの関係なのかな〜と思いました。
>ちんあお さん
セミナーに参加できなかった方にも伝わるようにするのがブロガーの役目だと思っているので頑張りますw
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これでコストが1%程度というのは安いと考えてもいいのかもしれませんね。
詳細の記事を楽しみにしています。