サムスン電子の最新型スマートフォン「ギャラクシーノート7」の生産・販売打ち切りによる最大の損失は「サムスン」という一流ブランドの価値に傷が付いたことだ。生産中止に伴う数兆ウォン(数千億円)の損失と売り上げの低下はその次の問題だ。苦労して築き上げたサムスンの「一流ブランド」としてのイメージに傷が付くことは、サムスンはもちろん韓国経済にとっても痛い問題だ。米国のコンサルティング会社、インターブランドの先週の調査によると、サムスンのブランド価値は世界7位だった。6位のIBM、5位のトヨタ自動車を僅差で追うレベルまで躍進した。ギャラクシーSシリーズに代表されるように、サムスンだけが韓国の企業の中で唯一、高級かつ有名なブランドというイメージを持っているのだ。
サムスンがこのようなブランド価値を築き上げるまでには膨大な努力と投資が必要だった。1993年の「新経営」宣言以降、量ではなく質に注力してきた結果だ。「嫁と子ども以外は全て変えろ」と李健熙(イ・ゴンヒ)会長が社員にはっぱをかけたように、サムスンは低品質・安物というイメージから抜け出すために血のにじむような努力を重ねた。携帯電話の不良品15万台を焼却処分するという「携帯電話火刑式」まで敢行した。このように苦労して築き上げたブランドイメージと消費者の信頼が、ガラガラと崩れる危機に直面しているのだ。
サムスンは世界の一流の仲間入りを果たしたにもかかわらず、組織文化は依然として「上命下服(下が上の命令に従わなければならない)」のままだという指摘が多い。それが今回の事態の根底にあるというわけだ。サムスンは米国アップル社の最新スマホ「iPhone(アイフォーン)7」よりも先に新製品を発売するために、無理やりスケジュールを前倒しした結果、製品の欠陥という事態を招いた。最初に発火騒動が起きたときも、一刻も早く事態を収拾しようと焦り、十分な原因究明をしないまま「バッテリーの欠陥」という誤った結論を下してしまった。このようにグローバル文化とはかけ離れた官僚主義式の意思決定が、収拾できない事態を招いてしまったのだ。