【広島】25年ぶり日本シリーズじゃけぇ!田中、文句なしMVP
◆マツダ クライマックスシリーズ セ最終S第4戦 広島8―7DeNA(15日・マツダスタジアム)
セ・リーグのクライマックスシリーズ(CS)最終ステージ第4戦は、広島が3位から勝ち上がったDeNAを撃破。3勝1敗とし、リーグ優勝のアドバンテージ1勝を加え、25年ぶり7度目の日本シリーズ進出を決めた。1番打者の田中は、この試合のタイムリー2本を含めプレーオフ、CS新記録の9打席連続出塁。4戦計12打数10安打、打率8割3分3厘と“神すぎってる”働きで最優秀選手に輝いた。日本シリーズは22日にマツダで開幕。パのCS勝者と激突する。
赤く染まったマツダが揺れた。9回2死一塁、守護神・中崎が筒香を空振り三振に仕留め、1点差で逃げ切った。1975年に球団初のリーグ優勝を決めた日と同じ10月15日、25年ぶりの日本シリーズ出場を決めた。緒方監督はV決定直後のインタビューと同様に「ファンの皆様、CS突破、日本シリーズ出場、おめでとうございます!」と絶叫。待ちに待ったファンに吉報を届けると、地鳴りのような大歓声が沸き起こった。
流れを引き寄せ、そして決めたのは、またしても切り込み隊長の田中だった。初回、今永の直球にこれでもかと食らいつき、11球粘って四球で出塁。ここから一気に打線がつながった。新井の適時打で先制のホームを踏むと、リードを5点に広げた2死一、二塁、この回2度目の打席では右前へ適時打をはじき返し、6点目をたたき出した。
「自分でもビックリする数字。出来すぎ。1番打者の役割を果たそうとしただけです」。3回には四球を選び、5回2死二塁の第4打席では左前にタイムリー。13日の第2戦から続く連続打席出塁を、プレーオフ、CSの新記録となる「9」に伸ばした。4試合で計12打数10安打の打率8割3分3厘。5四球を選び、17打席で凡退は2度のみで、出塁率は8割8分2厘。文句なしのMVPだ。
指揮官が「このシリーズ、神ってたわ。過去にあんな選手、見たことない」と目を丸くして、鈴木に続き“神認定”すれば、石井打撃コーチも「ゾーンに入ってる。普通は何日も続かないよ」と舌を巻いた。田中自身も「すごいな…。一生に一度しかない」と笑った。
東海大相模高、東海大では巨人・菅野と7年間チームメート。エリート街道を歩んできたが、挫折もあった。菅野が参加した大学日本代表候補の合宿。金の卵たちが汗を流す傍らで、田中は東海大の一学生として、球拾いを務めていた。
カープ入団も運命のいたずらだ。JR東日本時代に迎えた13年ドラフト。広島は他球団が田中を上位指名すると想定していたが、2位までにその名がコールされることはなく、投手を指名予定だった3位を急きょ田中に切り替え、獲得した。そんな男が3年目の今季、フルイニング出場を果たし、ついに“神”となった。
22日からは、1984年以来、32年ぶりの日本一をかけた戦いに臨む。「想像すらできない。第三者というか、テレビで見ていた側。思いきってやりたい」と田中。歴史的、奇跡的な快進撃を続けた赤ヘル軍団が、さらに勢いを増して頂上決戦に挑む。(角野 敬介)
◆田中 広輔(たなか・こうすけ)
★生まれとサイズ 1989年7月3日、神奈川県生まれ。27歳。171センチ、81キロ。右投左打。既婚。年俸4100万円。
★球歴 東海大相模高、東海大、JR東日本を経て13年ドラフト3位で入団。
★背番号2 63番から今季は2番へ。高橋慶彦氏のような走攻守そろった選手になってほしいとの願いを込め、同氏が背負った2番を球団が提示した。
★野球一家 父・正行さんは東海大相模高時代、巨人・原前監督の2学年後輩で甲子園出場。弟の俊太さんは日立製作所で二塁手。7月の都市対抗では若獅子賞を獲得し、4年前の兄に続き兄弟で同賞を受賞。
★ど根性 14年8月8日の阪神戦(京セラD)でゴメスの打球を顔面に受けて負傷交代。上唇を6針縫う大けがだったが、2日後の同カードにスタメンで復帰。適時二塁打を放ち、連敗ストップに貢献した。