「絶滅」ヨウスコウカワイルカの目撃情報、中国
ヨウスコウカワイルカ(揚子江河海豚、Lipotes vexillifer)は淡水に生息するイルカで、長江(揚子江)の固有種である。
ハクジラ亜目ヨウスコウカワイルカ科ヨウスコウカワイルカ属に分類され、本種のみでヨウスコウカワイルカ科ヨウスコウカワイルカ属を形成する。
淡水に生息するイルカは世界に4種が知られており、ヨウスコウカワイルカはその中の1種である。他の3種は、南米のアマゾン川およびラプラタ川に生息するアマゾンカワイルカとラプラタカワイルカ、インド亜大陸のガンジス川やインダス川に生息するインドカワイルカである。
中国に生息していたヨウスコウカワイルカ(Lipotes vexillifer)。2006年の調査で個体数の維持・回復能力を失った「機能的絶滅」を宣言されていた。
英紙「ガーディアン」と、中国政府出資のネットメディア「シックス・トーン」に掲載されたインタビューによれば、保護活動家のソン・チ氏は、このほど7日間にわたりヨウスコウカワイルカを捜索。10月4日にその姿を目撃したという。「長江からあんな風に跳び上がれる生物はヨウスコウカワイルカ以外にはいません。漁師も含め、目撃者全員が間違いないと感じました」と、ソン氏は語る。
まだ裏付けはないが、この目撃報告が本当なら、生物学者たちにとって衝撃となる。この白いイルカは小型で目がほとんど見えない。2000万年にわたって長江に生息し、「長江の女神」と呼ばれていたが、2000年代初めにほぼ姿を消した。2006年、研究者たちが6週間かけて調査したが1頭も確認できず、「機能的絶滅」が宣言された。
20世紀後半に激減「長江の女神」
ヨウスコウカワイルカの個体数が落ち込んだのは20世紀の末だ。1979~1981年には400頭前後だった個体数が、1990年代後半にはわずか13頭にまで激減した。
地元の漁業で、網に絡まるなどして意図せず捕獲されてしまうのが主な要因だが、ボートとの衝突、ダム建設、川沿いにある無数の化学工場からの汚染なども減少に拍車をかけた。
ヨウスコウカワイルカの確実な目撃例は2002年を最後に途絶えている。2007年にも目撃報告があり話題となったが、スナメリだったと後に判明した。絶滅が確実となった大型水生哺乳類のうち、ヨウスコウカワイルカは最も新しい例であり、1950年代に狩猟や魚の乱獲でカリブモンクアザラシが絶滅して以来のことだ。
ソン氏自身はヨウスコウカワイルカの専門家ではなく、目にしたのがヨウスコウカワイルカだと証明はできないと認めている。また、ソン氏らのグループは決定的な写真も撮影していない。ロンドン動物学会の保全生物学者サミュエル・ターベイ氏も、ガーディアン紙へのEメールで疑問を投げかけた。
「絶滅したとみなされている種が生きているかもしれないという思い切った主張には、揺るぎない証拠が必要です。ヨウスコウカワイルカが絶滅していないという強力な証拠があってほしいと私も心から願っていますが、今回の報告はそうではありません」とターベイ氏は記している。同氏は、ヨウスコウカワイルカの機能的絶滅が宣言された2006年の調査に参加していた。
ターベイ氏は続けて、むしろ長江に生息するスナメリに一般の関心が集まるべきだと指摘した。長江のスナメリは、中国国内で唯一生存が確認されている淡水のクジラ目なのだ。
国際自然保護連合(IUCN)が発表している、絶滅の恐れのある生物種のレッドリストによると、長江のスナメリは近絶滅種(critically endangered)に指定され、最新の個体数は500~1800頭という差し迫った状態だ。学術誌「バイオロジカル・コンサベーション」に今年掲載された研究結果は、迅速な対応を取らない限り、長江のスナメリは遅くとも2041年に絶滅する可能性があると警告している。
確実に絶滅する「ヨウスコウカワイルカ」
ヨウスコウカワイルカ(揚子江河海豚、Lipotes vexillifer)は淡水に生息するイルカで、長江(揚子江)の固有種である。ハクジラ亜目ヨウスコウカワイルカ科ヨウスコウカワイルカ属に分類され、本種のみでヨウスコウカワイルカ科ヨウスコウカワイルカ属を形成する。Baiji(白鱀)、Beiji、Pai-chi、Whitefin Dolphin(白ひれイルカ)、Whiteflag Dolphin(白旗イルカ)、Yangtze Dolphin、Yangtze River Dolphin などと呼ばれている。
淡水に生息するイルカは世界に4種が知られており、ヨウスコウカワイルカはその中の1種である。他の3種は、南米のアマゾン川およびラプラタ川に生息するアマゾンカワイルカとラプラタカワイルカ、インド亜大陸のガンジス川やインダス川に生息するインドカワイルカである。
紀元前3世紀ごろに書かれた中国の辞典である『爾雅』にヨウスコウカワイルカに関する記述があり、当時の生息数は約5,000頭と推定されている。中国の伝統的な物語において、ヨウスコウカワイルカは、愛していない男との結婚を拒否して家族に溺死させられた姫の生まれ変わりとして描かれている。また平和と繁栄の象徴と考えられ、「長江女神」、すなわち「長江の女神」の愛称でも呼ばれている。
ヨウスコウカワイルカの個体数は、中国の工業化、魚の乱獲、船舶による水上輸送、水力発電(ダム建設)などの影響により激減しており、三峡ダムの建設は、ヨウスコウカワイルカの生息環境に対し致命的な被害を与えている。本種を保護する努力は行われているが、2006年の大規模な調査でも生息の確認はできなかったため絶滅の可能性が指摘されている。
ヨウスコウカワイルカが絶滅した場合、1950年代のニホンアシカやカリブモンクアザラシの絶滅以来の水生哺乳類の絶滅とされ、クジラ類の中のよく研究されている種においては、人間が絶滅の直接要因となった初めての例となる。
再発見あったとしても、時間の問題か?
2006年12月13日、baiji.org Foundation により、ヨウスコウカワイルカはほぼ絶滅していると発表された。同年11月から12月にかけて、長江流域ののべ 3,500km に渡る大規模な調査が行なわれたが、ヨウスコウカワイルカは1頭も発見することができなかった。
人類が引き起こしたクジラ類の絶滅としては最初のものであり、15世紀以降の哺乳類における科全体の絶滅としては4例目で、大型脊椎動物の絶滅としてはここ50年間で唯一の事例であると考えられている。 2007年9月12日にはIUCNも絶滅した可能性があると発表した。
2007年8月19日、ヨウスコウカワイルカと思われる動物が撮影されたことにより、再調査が計画されている。しかし、種の維持には最低でも50頭程度が必要と言われており、ヨウスコウカワイルカが危機的状況にあることには変わりがない。
なお、2009年9月には東洞庭湖保護区で江豚(スナメリ)が約132頭確認されている。スナメリは主に海水域に生息するが、淡水である長江に生息する個体群も存在し、中国では江豚と呼ばれている。
1950年代の個体数はおよそ6,000頭だったと見られており、その後の50年間で急速に減少した。1970年代には数百頭減少しただけだったが、1980年代には400頭まで減少し、本格的な調査をした1997年には13頭にまで減少していた。生息している個体数を見積もることは容易ではないが、2006年11月から12月にかけて行われた大規模な調査では1頭も確認することができず、現時点での生息数はきわめて僅かであると考えられる。
クジラ類の中では最も絶滅の危機に瀕している種である。 もともと長江のみの固有種で個体数が少なかったヨウスコウカワイルカは、近年の中国の経済発展で長江沿岸が開発されるに伴い、急速に数を減らしていった。飼育がきわめて困難で、繁殖が難しいことも、保護において大きな足かせとなっていた(飼育成功例自体が極めて少なく飼育下の繁殖成功例に至っては皆無)。
国際自然保護連合 (IUCN) は、種への脅威として以下を述べている:大躍進政策時に行われた人間による狩猟、漁具への絡まり、違法な電気漁法の慣行、船舶への衝突、生息環境の消失および汚染。大躍進政策の期間には、「長江の女神」としての古くからの尊敬の念は排除され、肉や皮を目当てに狩猟が行われて急速に減少した。
参考 National Geographic news: 「絶滅」ヨウスコウカワイルカの目撃情報
dolphin イルカ 図鑑 マグ SUNCERA 12101 | |
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人と生きるカワイルカの生態に迫る (キヤノン財団ライブラリー) | |
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