こんにちは、NAEです。
スマホ、便利ですよね。
パソコンと遜色のない機能や性能、タッチスクリーンによる直感的な操作など、ガラケー時代にはなかった全く新しい体験をもたらしてくれています。
もうひとつ、スマホにしかないもの。それがセンサーです。GPSやジャイロセンサーを使うことで、スマホの位置や角度、加速度などを計測できます。
そんなスマホのセンサーを使ったおもしろい研究論文を見つけたので、ご紹介するとともにその可能性を考えてみたいと思います。
あ、論文と言ってもテーマ自体はなじみ深いものなので、ぜひ最後までおつきあいくださいませ。
今回はそんなお話。
センサーデータを解析、深層学習で所持位置を検知する
その論文がこちら。採録されているのは情報処理学会論文誌という、国内では名のしれた査読つき論文誌です。
研究の内容を引用します。
本研究では,スマートフォン標準搭載のセンサを複合的に用いてDNN(Deep Neural Network)で学習させることで,スマートフォンが利用者の身体上のどの位置に所持されているのかを推定するシステムを開発する.
スマホが利用者の身体のどの場所にあるのか?ということなのですが・・・
具体的に何ができるのか
具体的には、歩いている時にどこにスマホを持っているかを検知するそうです。
利用者がスマートフォン所持中に最もとりやすい動きである歩行を対象に,ズボン前ポケット,ズボン後ポケット,胸ポケット,内ポケット,ジャケットポケット,鞄,手という所持位置7種類の推定を行う.
たしかに、スマホを持っているときは
- 手に持っている
- ポケットに入れている
- カバンに入れている
がほとんどのように思います。人によっては首から下げるかもしれませんが、レアケースでしょう。
その結果、8割を超える精度で持ち運び方を検知できたとのこと。
被験者16人に対して実験を行い,Leave-one-subject-out Cross-Validation(LOSO-CV)で推定精度を評価した結果,81.7%の精度で所持位置7種類を推定し,胸ポケットと内ポケットを区別しない6種類の推定では86.7%の推定精度を達成した.
また,センサを複合的に用いることで推定精度が向上するという点や,加速度センサの値の扱い方によって推定精度が向上することを明らかにした.
スマホがどう扱われているか、結構な精度で検知できるんですね
何がどう変わりえるのか
さて、この技術によってスマホまわりで何が起こるのか、論文著者は
スマートフォンの所持位置が推定できることで,ポケットの中での誤動作防止や,位置に応じた通知方法の自動変更など,様々なコンシューマサポートが実現できる.
としています。
たしかに
- ポケット内で勝手にカメラが起動していて電池が食われていた
- 電話に出たら「ザッザッ」という音しかせず、後でメールしてみたらカバンの中で勝手にかけていた
なんてことはぼくにも経験があります。
また、ぼくの知人には
- ズボンのポケットだとバイブ通知に気づかないから胸ポケットに入れている
- バイブだと気づかないからいつでも着信音が出るよう設定している
という人も。
もしポケットの中やカバンの中など、スマホ自身が今どこにいるか(どう持ち運ばれているか)を検知できれば、こういった不便は解消できるように思います。
この技術を使ってできるかもしれない新たなサービス
さて、今ある不便を解消するのみでなく、この技術でなにか付加価値のつけられるサービスができないか、考えてみましょう。
この技術がもたらす価値をシンプルに捉えると
今どう持ち運ばれているかを検知できる
その情報をハードウェアやアプリやブラウザは利用できる
ということになりますね。性質からしてミドルウェア情報を提供するライブラリですので、この技術は単体で何かをするものではありません。
たとえばハードウェアと組み合わせたら。
- カバンの中でのみ通信をオフにすることで、電池の持ちをよくする
- カバンの中でのみ着信音を最大にすることで、気付きやすくする
- ポケットの中のみ着信バイブを最強にすることで、気付きやすくする
なんだか地味ですね。
たとえばアプリと組み合わるなら、歩きスマホ防止アプリとかできるかもしれませんね。
歩いている時間に占めるポケット/カバンの中の割合で点数を競うなど、ゲームに仕立ててみるとおもしろいかもしれません。
もしかしたら、統計情報を取れたらおもしろいかもしれないですね。ポケット派とカバン派の割合(男女と相関ありそう)ですとか。
そういった統計データをスマホメーカーやスマホケースメーカーに外販するというビジネスも成り立つかもしれません。スマホがどう持ち運ばれてるかは、彼らにとってはとても有用な情報だと思うので。
まとめ:スマホもIoTの一端を担う
以上、スマホの持ち運び方を検知する技術のご紹介でした。
IoT(Internet Of Things)とう言葉が登場して久しいですが、センサーを搭載しているスマホも立派なIoTデバイスの仲間。ユーザに近いぶん、ユーザの挙動を把握しやすいのもスマホの特徴です。
これまではユーザのスマホ操作のみが解析対象になってきたような気がしていますが、スマホ操作以外の部分でどのようにスマホを使っているのか、というレベルのデータが取れるのはおもしろい取り組みだと感じています。
情報処理学会員でない場合、論文の中身を見るにはお金がかかるのですが、もし具体的な手法に興味がある方は論文を購入してみてはいかがでしょうか。
今回は以上です。