布団に入ってうとうとしかけたところで、窓がカタカタ音をたてた。
おや、少し風が出てきたみたいだ。
木がざわざわと音をたてるのが聞こえるような…
目をつぶったまま、
朝方冷え込むだろうか、毛布だけで足りるだろうか…ぼんやりと考える。
眠りに落ちそうだけれど、頭のどこかが少しだけ起きている。
窓がカタカタいっている。
窓ガラスに雪の粒がぶつかる音がする。
さらさら、さらさら。
いや、雪はふってないだろ、風だ、風。
あの さらさら いう音は、冬の一番寒い時期の音だな。
そうだ、子供の頃、布団に入ると窓の外からよく聞こえていた。
ずいぶんとまた昔のことを思い出したもんだな…
奥羽の山々から吹き下ろす風がごうごうと音をたてる夜。
昼間降った柔らかい雪が狂ったように風に巻き上げられる。
風にのった雪は、もはや氷の粒だ。縦横無尽に吹きまわり、家々に吹き付ける。
目も開けられず息もできないような暴風。
防風林の木々は枝が折れそうなほどにしなり、風に耐えている。
ストーブのない寝室に入ると、空気は刺すように冷たい。
窓ガラスはすっかり凍みついて真っ白になり、人差し指で触るとそこだけじんわりと溶けて、指の跡が残る。
いそいで布団にもぐりこむと、じっと体が温まるのを待つ。
風の音がおそろしい。
明日の朝はひどい吹き溜まりができているだろう。
家全体が軋む。
ごうごう、空が唸っている。
さらさら、雪が打ちつける。
寝入りばな、ぼんやりと思い出した冬の風景。そのまま夢を見たような気もするが、どうだっただろう。
朝起きた後も あの音がなんとなく耳に残っていて、2〜3日の間、懐かしい思いをした。