【林家三平のドームすいません】鈴木選手、おつかれさまでした
鈴木尚広さんから、今季限りで現役を引退するあいさつを、LINEで頂きました。
「今はスッキリした気持ちです。こんなに長く巨人でプレーさせて頂き、とても幸せな野球人生でした」
絵文字もスタンプもない長文でした。全文を載せるわけにはいきませんが、誠実な人柄がにじみ出た文章でした。なにしろ20年間ですからね。生まれた子が成人する年数ですよ。その間、ずっと巨人でプロ野球生活を過ごしてきた。10日のDeNA戦でけん制死して引退を決断した―そういう方向性で語られるのは僕は好きでありません。心の葛藤を経て、もっと深いところで引退を決断したんだと思います。
最近は、独立リーグに行ってでも現役続行を模索する、とにかくやれるだけやってみるという人のほうが多いような気がします。それはそれでいいですが。鈴木さんのようにシーズンが終わって、突然、スパッとユニホームを脱ぐのもかっこいい引き際です。現役生活に固執するのではなく、自分の人生そのものに固執しているんでしょう。
落語家で例えれば、鈴木さんは二ツ目から真打に昇進したんだと思います。真打には、後輩を指導して、面倒を見ていくという役割も加わります。鈴木さんとの会話で心に残っているのは「(自分の技術を)人に教えることは簡単だけど、教えた通りにその人がやれるかどうかは分からないです」という言葉です。人を「育てる」ことの難しさを的確に示していると思います。コーチになった鈴木さんを見てみたいと思いました。
ドラマチックな走塁や盗塁はいっぱいあったけど、個人的に好きなシーンは、15年5月3日の阪神戦(東京D)。島本投手から打った6年ぶりのホームランです。ビックリしたような笑顔で生還したあのシーン。意外性があって好きでした。
真っ白なベースに向かって走り続けた20年間、おつかれさまでした。これから走っていく「第2の人生」というベースは、どんな色に染まるのか、楽しみです。
三平・Gを語る