長時間労働、常態化の疑い 社員の勤務記録を調査か
広告代理店最大手・電通の新入社員だった高橋まつりさん(当時24歳)の自殺が過労を原因とする労災と認定された問題で、東京労働局などは14日、東京都港区の電通本社に労働基準法に基づく抜き打ちの立ち入り調査「臨検」を実施した。また、同日までに、関西(大阪市)、京都(京都市)、中部(名古屋市)の3支社の調査も行った。全社的に長時間労働が横行している可能性があるとみて、社員の勤務記録や会社の対応策などを調べているとみられる。
電通では1991年にも入社2年目の男性社員(当時24歳)が自殺し、遺族が起こした裁判で最高裁が会社側の責任を認定した。労働局は過労自殺が繰り返された点を重視したとみられる。労基法上、労働基準監督官は臨検して企業側に帳簿の提出を求め、使用者を尋問できると規定するが、支社までを対象とするのは異例という。
高橋さんは昨年4月に入社し、本採用となった10月以降、業務が増加し、同12月25日に自殺した。三田労働基準監督署は今年9月、うつ病を発症する1カ月前の残業時間が月約105時間に達していたとして、労災認定した。今後、臨検によって、電通の労使協定が認めていない月70時間を超える時間外労働などの具体的な法令違反を確認した上で是正を勧告(行政指導)する方針。より悪質な違法行為が見つかった場合、書類を検察庁に送って刑事事件として立件することも検討する。
高橋さんの母幸美さん(53)は弁護士を通じて「国は大切な労働者のいのちを守るために、しっかりと電通を指導してもらいたい」とのコメントを出した。【早川健人】