ことの始まりは、おなじ研究室にその後輩が入ってきたことだった。
二人きりになると、その子は、いきなり重い身の上話を始めて、泣き出すことがよくあった。
聴いているだけで気が滅入るようなことばかり、語ってくる。
ただ、なんというか、逆恨みっぽい感じがして、
ただ、まあ、そういう人もいるよねと、深く考えなかった。
調べればすぐわかることを一々聞いてきたリ、
プライベートの連絡先を聞こうとしてきたり、
正直、気持ちわるかった。
いや、自意識過剰なのかもしれない。
そう思ってがまんした。
次の日、研究室に行くと、机の上にポストイットが貼られていた。
〈先輩、ありがとうございました〉
それだけのことだった。
でも、丸文字で書かれたそれを見た瞬間、鳥肌が背筋を駆けあがった。
見るだけで吐き気がするようになったのは。
ここ数か月、まともに口を利いていない。
気持ち悪くて近寄れないのだ。
だけどその理由は、だれも知らない。
後輩はきちんと気配りができる、「いい子」だ。
周りにはきっと、健気な後輩を理不尽な先輩が無視しているように映っているのだろう。
最近、まわりの態度がとげとげしい気がする。
今までの経緯をあらいざらいぶちまけて、楽になりたい。
なぜ後輩をさけているのかを。
そう思うたびに、後輩の泣き顔が脳裏をよぎる。
(自殺されるかもしれない)
言えるわけない。
わからない。
どうしよう、どうしたらいい。
あはは心の病気が伝染してますな お大事に
笑ってくれてありがとう。 すこし胸がすっとした。
優しすぎ